VISAにもiDにもなる?独自進化を遂げたLINEPayをPayPayに吸収させるのはもったいない?
Yahoo!とLINEの経営統合はPayPayとLINE Payの統合になるのか
今月に入って大きな話題となったニュースのひとつにYahoo!とLINEの経営統合(3月1日)というものがありました。
国内最大のポータルサイトであるYahoo!、国内最大のSNSサービスであるLINEの経営統合ですからニュースになるのも当然です。
そしてそれぞれが、WEBサイトやSNSにとどまらず、複数のサービスを提供しているのも皆さんご承知のことでしょう。特に金融系サービスについては双方提供するサービスが重複しています。クレジットカード、証券会社、保険、FX、そして電子マネーです。
当日、ニュースの話題となったのは、QRコード決済としてYahoo!側が提供するPayPayと、LINE側が提供するLINEPayのこれからです。
経営統合を紹介した当日のニュースでは、PayPayとLINEPayが統合される、というニュースが見られました
3/1 日テレニュース24 LINEPayをPayPayに統合へ
3/1 ITメディアビジネス LINE PayがPayPayに統合 2022年めど
利用金額のシェアが高いのはPayPayとされており、PayPayにLINEPayが完全吸収されるという印象のニュースがいくつか見受けられました。
しかし、翌日以降は、これを補足するようなニュースがIT系メディアから出始めました。
3/2 engadget LINE Payは存続、『PayPayに吸収される』は誤り──ヤフーとLINE統合で今わかっていること
3/2 ImpuressWatch PayPay・LINE Pay統合は「国内コード決済」のみ。LINE Payはなくならない
などです。
これらによれば
- 店舗にPayPayのQRコードが掲示されている加盟店(ユーザースキャン方式)については、LINEPayアプリでも読み取れるようにする
- 友人間の送金や請求書払いなど、LINEウォレットの機能は存続される
- LINEPayブランドが吸収されると言い切るのは正確ではない
というあたりがポイントのようです。
国民のほとんどがアカウントを持っているLINEの強みを背景に、ユーザー数ではLINEPayがPayPayを上回るという記事もあり、統合といってもなかなか簡単な話ではないようです。
キャッシュレス決済好きFPとして(そして両方のQRコード決済を愛用している)、私の考えはというと「半分賛成、半分反対」の気分です。その理由とは……。
この1年、いろんな動きを見せていたLINEPay
LINEPayは「LINEPay」であり「iD」でもあり「Visa」でもある、というと「?」と思われるかもしれません。実は、この1年、LINEPayはいろんなアプローチを展開してきました。
まず、Visa(三井住友のクレジットカードとして発行)のブランドでクレジットカードを発表しました。Visa LINE Payクレジットカードがそれです。
2021年4月30日までLINEポイントを3%還元、チャージ不要でLINEPayが利用できる(直接カードに請求が行き後日支払い)というのが特徴です。3%は驚きの高還元率です。
LINE Pay非対応店舗では、そのクレカを提示すればVISAカードとして使えます。もちろんポイント還元も受けられます。
ところが、このクレカを作成してLINEPayに連携した「チャージ&ペイ」でないと、LINEPayのポイントが基本的には貯まらない仕組みにしました(2020年5月より)。
言い換えれば、クレカの利用ポイントがLINEPayのポイントとして付与されるイメージですが、今まで、現金チャージや他社クレカからLINEPayへチャージしていた人にはポイントが貯まらなくなっています。これは一部の人にとっては改悪です。
LINEPay LINEポイントクラブ
一方で、クレジットカードの実態があることを活かし、おサイフケータイの機能であるiDにも踏み込んできました。VISA LINE PayクレカをiPhone(Apple Pay)に登録すると、おサイフケータイのひとつであるiDとして決済が可能になります。
同様にAndroid(Google Pay)に登録するとこれまたおサイフケータイのiDになります。iDで支払えてもLINEPay未対応のお店では、iDで決済する選択肢もあるわけです。
iPhoneの登録 https://linepay.line.me/apple-pay/
Androidスマホの登録 https://pay-blog.line.me/archives/25780628.html
これによりLINEPayは
- VISAのクレジットカードである(カードを発行した場合)
- QRコード決済である(LINEPayとして利用した場合)
- おサイフケータイのひとつiDである(カードを発行し、登録した場合)
という3つの顔を持つことになりました。これはなかなかユニークな取り組みでした。
PayPayとどう一体化していくのか
一方、PayPayもYahoo!カードとの連携、Yahoo!ショッピングとの連携強化、SoftBankユーザーとの連携強化などを深めました。特にTポイントへの付与からPayPayへ舵を切っていることが印象的です。
しかし、両社を比較すれば、この1年はLINEPayの動きが大胆であったといえます。
PayPayといえば「20%還元」の強烈なイメージがありましたが、最近では店舗限定、期間限定で還元率をアップするアプローチとなっています。
今月はYahoo!とLINEの経営統合記念と銘打って、「超PayPay祭り」を開催していますが、20%還元されるお店を限定しているほか、上限は1000円と規模は小さめです(つまり5000円利用すれば上限に達してしまう!)。
PayPay 超PayPay祭り
また、SoftBankの格安プランLINEMOの事前登録者へのボーナスはPayPayで付与するとしています。LINEの通信が無料というのが売りですがLINEPayのポイント付与ではないわけです。
その点で今後気になるのは、LINEPay側の還元率設定やクーポン設定などの動向でしょう。現在のクレカ3.0%還元は4月末で終了するため、2年目以降の還元率発表がどうなるか注目されています。
また、最大で月10枚のクーポンを付与するポイントクラブなどの取り扱いも気になります。クーポンひとつあたり100円割引となれば、毎月1000円割引となり、ポイント還元以上に魅力がある仕組みです。VISA LINE Payクレカを所有しLINEPayのヘビーユーザーであることの大きなメリットですが、今後縮小しないか心配です。
ライバル他社のQRコード決済がどう動くかもにらみつつ、決済方法の統合の先で、ポイント等の統合も検討されていくことになるでしょう。
追伸 本記事公開直前に、LINEPay側の追加情報が公開されました。
- LINEPayポイントをPayPayボーナスへ交換可能
- VISA LINE Payクレカの還元率を5月より2.0%に改定
- LINEPay側のクーポン発行枚数ルールを改定 など
このあとすぐ、解説記事をアップします。
→3/16 17:30 こちらにまとめました LINEPayとLINEクレカ、5月からの還元ルールが公表、PayPay統合の流れ、高還元率は縮小へ
QRコード決済は正直、多すぎる ひとつでも整理されることはユーザーのメリットだが
最初に「半分賛成、半分反対」としましたが、反対なのは、ここまでの1年取り組んできた、LINEPayの独自の取り組みが失われてしまうのはもったいないと感じるからです。
一方で、賛成なのは「なんとかPayが多すぎる問題」を解消するきっかけになると思うことです。
キャッシュレス決済活用術、のようなセミナー講師をすることがありますが、20個以上ある電子マネーをひとつひとつ説明することがありますが、高齢の受講者はみな混乱します。「よく分からないですよね? 悩んだらSuicaでいいです(JR東日本圏内なら)」と言ってしまうほどです。
自由競争のできる国であるとはいえ、ICカード(スマホではおサイフケータイ機能(FeliCa))の電子マネーと、QRコード決済のロゴを並べたら20個以上あるのは過当競争です。ユーザーにとってもアルバイトの店員にとっても混乱と負担の元となっています。
本来であれば、「QRコードでお願いします」といえば端末が自動認識するような取り組みのほうを進展させて欲しいところですが、まだ時間がかかりそうです(JPQRというQRコード決済統一の取り組みがありますが、全国の端末が切り替わらない限り「この店では統一だがこの店は統一でない」ということになるのが心配)。
ユーザー目線でいえば、おサイフケータイについては「交通系カードの大統一」、QRコード決済については「決済端末側の大統一(何を提示しても自動で読み取る)」が必要だと思います。
PayPayとLINE Payの統合は、過当競争となっている決済方法の乱立・混乱を解消する呼び水になってほしいものです。
そして、できれば、LINEPayが取り組んできた「クレカにもなれば、おサイフケータイにもなる」という面白さは残されるといいなと思います。
追伸 LINEPay、LINEクレカ側の5月以降の還元ルールが公表されました。詳しくは下記をご覧ください。
Yahoo!ニュース LINEPayとLINEクレカ、5月からの還元ルールが公表、PayPay統合の流れ、高還元率は縮小へ