不知火海に面した集落を見下ろす駅 肥薩おれんじ鉄道 海浦駅(熊本県葦北郡芦北町)
熊本県葦北郡芦北町にある海浦(うみのうら)駅は、その名にたがわず海の見える駅だ。
高台にあるホームからは集落越しに不知火海(八代海)を望むことができる。海の向こうに見える陸地は天草諸島の島々だ。熊本県・鹿児島県の県境区間を走る肥薩おれんじ鉄道には海のの近くを走る区間が多く、その車窓は美しい。
海浦駅があるのは集落を見下ろす山の手の高台だ。斜面はみかん畑になっている。すぐ後ろにまで山が迫っており、この角度から見ると、「海が見える駅」というイメージからは程遠い。切り取る構図一つでこんなにギャップの大きい駅もなかなかないのではなかろうか。
ホーム上には簡素な待合所があるだけで、駅舎は無い。昔の写真だと待合所の横壁はないので、後から追加されたのだろう。
待合所にはベンチが8人分並んでいる。一応屋根はあるものの、激しい雨が降れば隙間からの雨で濡れてしまいそうだ。
駅に通じる道は狭く、車は駅前の踏切までしか入ってこれない。踏切からホームまでは砂利道が続いている。
駅の山側は線路よりも少し低くなっており、大正時代に線路を通す際に土手が築かれたのだと推測できる。駅が開業したのは線路が通ってから30年以上も後のことで、昭和34(1959)年6月1日。当時は普通列車でも大半が通過していた。これはおそらくホームの長さによるものであろう。当時の列車はその多くが、編成の長い客車列車で、海浦駅のホームの長さだとはみ出してしまったものと思われる。停車する列車はもっぱら編成の短いディーゼルカーに限られていたそうだ。すべての列車が止まるようになったのは昭和53(1978)年10月2日からだ。
海浦駅は長らく鹿児島本線の駅だったが、平成16(2004)年3月13日に九州新幹線が新八代~鹿児島中央間で開業すると、肥薩おれんじ鉄道に移管された。この際、列車は全てディーゼルカーになったが、普通列車の本数は増えて上下とも一時間に一本くらいが停車するようになっている。