『ぎぼむすFINAL』シリーズ4作目で味が薄くなるなか、つらぬいたブルース
連続ドラマとスペシャルドラマ2作を経て、シリーズ4作目にして最終話となった『義母と娘のブルース』FINAL。連ドラのラストは、義母と娘それぞれの10年間の葛藤と悲哀のブルースが大きな愛に包み込まれ、MISIAが歌う「アイノカタチ」に号泣させられた。
それから5年。思春期を過ぎて大人になった娘と義母の物語は4作目になり、やはり味が薄くなっていた。しかし、移り変わる人生のステージごとに抱く2人の思いをひとつのブルースとして響かせた。
ゴリゴリのブルースだった連続ドラマ
振り返ると、連ドラはゴリゴリのブルースだった。物心つかない幼い頃に母を亡くしたみゆき(上白石萌歌)は、小学校低学年時に父・良一(竹野内豊)が再婚。義母・亜希子(綾瀬はるか)との3人の生活がスタートしてすぐに病で父を亡くし、義母と2人の生活がはじまる。
キャリアウーマンだった亜希子が血のつながらない小学生の娘の母親になろうと奮闘するなか、つらい境遇を乗り越えて大人になっていく思春期の娘とぶつかりあう。それぞれが抱える悲しみと葛藤、切なる思いがそれぞれのブルースになり、大きな愛に包まれながら成長していくみゆきの姿が視聴者の心に刺さった。
しかし、子どもの成長とともに親子の関係は変化する。年齢を重ねて、思春期を過ぎたみゆきは、亜希子の無償の愛に包まれて育ったことを心と身体で受け止め、20数年という人生のなかで培った、小さくも温かい自らの愛を亜希子に向ける。ときに反発もありながら、自身の成長とともにその愛は大きくなり、形を変えていく。そこにはかつてのような2人の衝突はない。
人生のステージごとの葛藤を取り込んだブルース
そんな成熟した母娘の関係性には、以前のようなブルースは響かないだろうと思われたが、みゆきの次なる人生の転機となる就職、結婚のタイミングが思いもかけないタイミングで訪れ、同時に誰もが避けられない人生最大の試練が亜希子に襲いかかる。
コメディタッチの演出が多くなった3作目のテイストから、亜希子の試練はミスリードだろうと思いつつ、苦難を乗り越えて心穏やかに過ごすみゆきに待ち構える、これまで以上に大きく過酷な試練が最後のブルースなのかとも考えさせられた。
結果は、お正月ドラマらしいハッピーエンドだったが、大人になった娘と義母の関係性にも人生のステージごとに変化はあり、それぞれが抱える思いの底には愛があるからこそ、そこには葛藤が生じ、いくつになっても本気でぶつかりあう様が映し出された。
本作の結婚式のシーンでは、2人がそれまでに歩んできた人生が映し出されるが、そこにはドラマタイトル通りのブルースがある。4作目となった本作を、みゆきの思春期をはさんだ10年の人間ドラマと比べると、味は薄くなっている。
しかし、エンディング前にみゆきが自らの人生を「ブルース」と繰り返し唱えていたように、連ドラ第1話から本作までを通してひとつの曲として聴けば、曲の途中に転調が入る、味わい深い名曲と捉える人も多いだろう。
シリーズを通してすばらしい名作となった。エンドロールで2050年の様子が映し出されたが、その過程の2人の生き様も見たいと思わされる。
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