第2話「イラっ」「ムカっ」を簡単になくすための「ココロ・カラダ・キズナ」の健幸
第一話では「母であり妻であり、会社の役職者として自分だけが頑張っている美咲」のタスクが山済みで、「ココロ・カラダ・キズナ」を壊し始めてた美咲。
しかし、美咲のような状況は家事・育児・仕事に忙しいワーママであればだれにでも起こりえることです。
「健幸」からどんどん遠ざかっている実情に「気付けた」美咲。
「ココロ・カラダ・キズナ」が健やかで幸せである「ウェルビーイング」を目指す第一歩は、今ある問題点に「気付く」ことでした。
美咲は、自分の「ココロ・カラダ・キズナ」の問題に気が付き「どうにかしなければ…」と模索し始めます。ウェルビーイングに至るための「準備」の段階について解説します。
内部リンク:第1話:「育児・仕事・家庭」山積みタスク問題解決への第一歩「気付き」とは?
※ウェルビーイングとは
近年WHOでも提唱されてた「ウェルビーイング(Well-being)」という状態は、社会的にも注目されている「人として全てが満たされた状態」としています。
(参照:世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)|公益社団法人日本WHO協会)
このストーリーでは「肉体的・精神的・社会的に満たされている状態=ウェルビーイング」が継続的に続いていくことを「健幸」としています。
①「ウェルビーイング=健幸=ココロ・カラダ・キズナが健やかでバランスがとれている状態」だと知る
大学時代の友人、亜希子とランチをすることになった美咲。
カフェの落ち着いた雰囲気の中、二人は久しぶりの再会を楽しんでいました。
「美咲、最近どう?」亜希子が微笑みながら尋ねました。
「正直、忙しくて疲れちゃってるの。仕事も家庭もなんだかうまくいってない感じで…」と美咲はため息をつきました。
「そうなんだ…私も以前は同じような感じだったけど、『ウェルビーイング』について学んでから少しずつ変わってきたの。知ってる?」
「ウェルビーイング?」と美咲は首をかしげます。
「そう、ココロの健康、カラダの健康、そして社会的なキズナの形成を大切にする考え方よ。自分の幸せと他者の幸せを切り離さないで考えることが重要なの」と亜希子は説明しました。
「それ、興味あるかも…。どういうこと?もう少し詳しく教えてくれない?」
亜希子は頷いて、ウェルビーイングの三つの柱について詳しく説明してくれたのです。
「まず、ココロの健康。これはストレス管理やメンタルケアのことね。毎日の生活の中で心の安定を保つことが大切で、瞑想やリラクゼーション、趣味を楽しむみたいに自分の体調に合わせたリフレッシュなんかが効果的なの。」
美咲は頷きながら聞いています。
「次に、カラダの健康。これは運動や食生活のバランスを取って健康でいることを指しているわ。定期的な運動、例えばウォーキングやヨガ、栄養バランスの取れた食事なんかで「毎日の生活のなかで手軽にできる」ことが重要なの。」
「最後に、社会的なキズナの形成。これは家族や友人、職場の仲間との良好な関係を築くことね。お互いに支え合うことで社会的なつながりが強まって、安心感や幸福感が増すの。」
【ココロとカラダ、キズナはつながっている】
「キズナの健康を維持するのが、私が実践した中では一番難しいわね。」
「ココロとカラダは自分の努力や意識で何とかなるけれども…キズナの形成には必ず他者のココロが伴ってくるから…相手の考えや立場を無視してキズナの形成はありえない。だからこそ相手との歩み寄りや相互理解が大切なのよ…」
美咲はその説明に感銘を受けました。
「なるほど、それって本当に大切なことだね。シンプルなんだけど…言われればよくわかるのだけれども…今の私にはどれも欠けている気がする…」
「そう。他の人が「なぜそのような行動をしたのか」「なぜそのように考えるのか」相手の立場や視点、視座…。色々な背景を想像して「相手の立場になって物事をみてみることができれば、かなり色々なことに気がつくのよ。でも、ほとんどの人がそれをしていない…。だから人との衝突やブレ・ズレが起きてしまうのよね…。」
亜希子は笑顔で美咲にウェルビーイングに関する本を貸してくれた。家に帰った美咲は、さっそくその本を読み始めました。ウェルビーイングとは全人的な幸せのこと。
ココロとカラダはもちろん、社会的な絆の形成が良好であるからこそ、全人的な幸せ「健幸」であるとされていることがわかりました。
「私、確かにいつも「自分だけが大変」「周りは何もわかってくれない…。」って思っていたな…。でも「自分だけが我慢してればとりあえず周りはよしとも思っていた…。」
亜希子が言うとおり、ココロとカラダは自分でなんとかなっても、周囲の人たちとの人間関係は良好なキズナを形成しないと幸せにつながらないことに気づいたのです。
自分自身の幸せと他者の幸せを切り離さないで考えることの重要性に気づき、少しずつ心が軽くなるのを感じました。
「子どもたちや家族の幸せを考えていたけれども…、私も幸せじゃないと意味がないのね…まず私が幸せにならなきゃ…。」
【相手の視座に立って物事を見てみる(想像してみる)】
人には必ず行動・言動につながる動機がある。「どうしてこんなふうに考えるの?」と、相手の立場になって物事を見てみよう。
①初めの一歩はわかりやすい「カラダの健康」を目指す
ウェルビーイングについてもっと知りたいと感じた美咲は、インターネットなどを活用してさらに自分でも調べました。
ココロの健康、カラダの健康、社会的なキズナの形成について学ぶうちに、美咲は自分に欠けていたものが見えてきたのです。
「まずは、わかりやすいカラダの健康を追求することから始めよう…」
美咲はオンラインヨガクラスに参加することにしたのです。
家にいる時間は、ほとんど家族のために使っていましたが、初めて自分の時間を取り自分のカラダをケアすることに挑戦したのです。
いつもより少しだけ早く起きて、オンラインヨガレッスンに参加しました。
「今日はこれでよし、次もがんばってみよう」と美咲はクラスの後、穏やかな気持ちで自分に言い聞かせました。
いつもより早起きをして、カラダを動かしたからか、会社に行く足取りも軽く爽快感もあります。なんだか気持ちもすっきりとしていつもより穏やかに過ごせている自分に気がつきました。
「自分のための時間…。自分が楽しむことってとっても大切なのね…。」
いつもはなかなか寝付けなかった美咲ですが、この日は適度な疲労感もありスッと入眠することができたのです。
【ココロとカラダ、キズナは根底でつながっている
カラダがリフレッシュするとココロも爽快に!心のゆとりができれば他者との関係性も以外にスムーズに行ったりするものです。
③家族との対話
夜、美咲は子どもが寝た後に夫である健一と、日常生活のあり方について話を切り出した。
「ちょっと話したいことがあるんだけど…」と美咲が言うと、健一が彼女を見つめた。
「最近、ウェルビーイングについて勉強してるんだ。そこで私は、まず家族の幸せ「健幸」について考えてみたくて…いろいろと自分の感情を整理したりしていたのだけれども…一緒にココロとカラダを大切にする生活を始めてみない?」と提案した。
夫の健一は最初、乗り気ではなさそうだった。「それって、具体的にどうするんだ?」と怪訝そうに尋ねる。
「ウェルビーイングって言ってね、簡単にいうとココロとカラダとキズナが健やかで幸せな状態なんだけれども、そのためには自分で何とかできるココロとカラダの問題解消のほかに、他人とのキズナ形成が重要なんだけれども…」
「キズナの形成には3つの要素があって、その最も根底となる1次のキズナが近親者である家族なの」
「ずっと思っていたことがあって…。今、私は家庭内での役割負担がすごく多くて…かなりストレスを感じているの。そのせいかうまく寝付けなくて睡眠不足気味で…余計にいらいらしちゃって、この前部下に八つ当たりみたいに叱責しちゃって…」
「おまけに健康診断で引っかかってしまって…。カラダにもガタが出始めていて、ココロの余裕もなくなってきて、社会生活もうまくいかなくなったらって思うと何とかしなきゃなって…」
「そうだったのか…。うん」健一は美咲の話を聞きながら静かにうなづきました。
「前から気になっていたことがあるの。毎日の家事・育児の負担が大きすぎるなって…。本音を言うとあなたにも家事や育児をやって欲しいの。」美咲は真剣な面持ちで健一に話しかけます。
「うん。ママ、大変そうだなとは思っていた…。思っていたんだけれど…」ばつが悪そうに健一は顔をしかめました。
「やっぱり難しい?家事・育児に参加するの…。」
健一は答えます。
「いや、違うんだ…。だけど俺がうまくできるかなって思ってしまって…」
「でも私も限界なのよ。何とかならない?」美咲は食い下がりました。
「やること事態はいいんだよ。だけど美咲、覚えてる?彩花が赤ちゃんだったころ…」
「えっ?何かあったっけ?」美咲は考えますが何も思い当たりません。
「彩花が赤ちゃんだったころ、健太の夜泣きも相まってすごく大変だった時期があったよね?その時に、俺なりに手伝おうとしたんだけれど…美咲にすごく怒られたんだよ…」
「うそ、そんなことあった??」
「あった。茶碗洗いとか洗濯とか、できることをしてたつもりだったんだけど。たたみ方が違うとか、洗い物置き場のおき方が違うとか…、ちゃんとできないならやらないで!!って言われて…それから俺、よけいな事をしない方がいいのかなって…」
「そういえば、そうだったかも…。」思い返すとそんなようなことがあった気もする美咲。
この話し合いによって健一は「やらなかった」のではなく「やれなかった」のがわかりました。
「ごめんなさい。あなたの事情にも私は目を向けられなかったのね。今度はきちんと話し合いながら一緒に頑張ってくれると嬉しい。「手伝う」のではなく、あなたにも主体的に参加してほしいの」
美咲の真剣さを見て、健一も「わかったよ、美咲。協力するよ。だけど、あまり上手ではないからお手柔らかにお願いしたい」と健一は言ったのでした。
「そうね。私も完璧主義になり過ぎていたのかも。健一のやり方に文句を言わないで妥協も大事だって思うことにするわ。」美咲は自分自身の至らなかったところを振り返りました。
「いつもありがとう。美咲。もっとお互いに感謝の気持ちを伝え合ったりすればよかったな…刺激しないことが良いことだと思っていた」健一ももっとできることもあったなと反省しました。
【キズナの形成には3つの種類がある
キズナには3つの種類があります。その根底となる「家族、近親者」のキズナが確かなものとなってこそのウェルビーイングのはじまり。
④部下への謝罪
次の日、美咲はオフィスで部下たちとも向き合おうと決めていました。
亜希子からのアドバイスを思い出しながら、昨日の健一との話し合いでも自信が付き「相手の考えをきちんと知りたい」と思うようになったのです。
「みんな、ちょっと時間をもらっていいですか?」と美咲は部下たちに話しかけた。部下たちは何が起こるのかと緊張した様子で集まりました。
「最近、私の態度が厳しすぎたことを反省しています。本当にごめんなさい」と美咲は深々と頭を下げたのです。
「これからは、もっと皆さんとのコミュニケーションを大切にして、良いチームを作っていきたいと思います。どうか協力してくれませんか?」
部下たちは驚きつつも、美咲の真摯な謝罪に心を動かされた。
「もちろんです、課長」と中村が代表して答えた。
「みんなありがとう。できれば少しずつ時間を取りながら面談をしたいと思うのだけれど、いいかしら?」と美咲が言います。
「じゃあ、早速だけれど佐藤さん。少しだけ時間を頂戴ね」
美咲は先日遅刻をしたことで叱責してしまった部下を呼び出した。
「佐藤さん、この間は理由も聞かずにしかってしまってごめんなさいね。よく考えたらあなたは訳もなく遅刻をするような人じゃないわよね。何かあったのでしょう?」
美咲がそう聞くと、佐藤はぽそぽそと話し始めました。
「実はあの日は、通勤中にキャリーカーが壊れてしまったおばあさんに遭遇しまして…一緒に荷物を運んでいるうちに遅刻してしまったんです。とはいえ、僕も悪かったなって…。どこかでおばあさんに時間をもらって電話1本入れたらよかったと反省していました。」
「そうだったの…理由も聞かずに悪かったわね…」
美咲は佐藤から事情を聴いてみて「やはり背景があったか…」と納得しました。
(そういえば、佐藤さんはいろいろな仕事を同時進行でこなすのは苦手だけど…、一つの仕事をとても丁寧にやり切るのよね。そうだった、そういう人じゃない…)
美咲は、連絡ができなかった佐藤の背景と個性にも目を向けて、その時の事情を汲み取りました。
(人には得手・不得手がある。そうよね。そう考えると…、今佐藤さんに任せている仕事は適任ではないかもしれないわ…。というか、チーム全体のバランスを見直す必要があるのかも…)
佐藤のことをきっかけに、キズナの形成を試みるとともにチームとしてのバランスや能力をうまく発揮する適材適所があることに気が付いた美咲。
その後、美咲は具体的なアクションプランを立て、部下たちとの関係を改善するための取り組みとして面談を始めました。
また、できるだけ部下たちの個性を捉えて「より能力を発揮しやすい」ような環境づくりも目指したのです。
小さな変化から、大きな成果が生まれることを信じて…。
(まとめ)
美咲は、ウェルビーイングをめざして、「ココロ・カラダ・キズナ」のバランスを整えることから始めました。
ココロとカラダは自分の意志でどうにかなっても、「キズナ」だけは必ず他者との介入が必要です。
まずは簡単なようで難しい「相手の視座に立って物事を見てみる」と相手が何を思ってどう考え、行動に移したかがわかります。
人間関係のすれ違いは、基本的に「相手の考えがわからないのに自分の考えや思いばかりを優先している」ことで起こります。
「私はこうなのに」「わかってくれない!」という不満からキズナの陰りが生じます。まずは「お互いを知る」ことが、キズナの「健幸」には重要なのです。
「次回はいよいよキズナ形成のために、美咲が「人と自分の違い」を知るための武器を手に入れます。
情報を上手に活用して、2次・3次のキズナまでがっちり修復する姿をお楽しみに!」
第3話に続く