【膣と直腸が貫通!直腸膣瘻闘病記⑨】意識のある中で行われる閉鎖術。安堵と不安の狭間で...
私は長男を出産したときに直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう:rectovaginal fistula)という、出産にともなう後遺症を患いました。
現代では、母子共に安全に生まれてくるのが当たり前になりつつあります。
しかし、実際には命の生まれ出る瞬間に必ずしも五体満足で経過するわけではありません。
また、子どもが無事でも、母体がダメージを受けてしまうこともあるでしょう。
私もその一人。出産直後にはなんともなくても、出産して数日たった後に「直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう:rectovaginal fistula)」が発覚しました。
今回は第9話。
前回は、ストーマを拒否をして選択した成功率の低い「瘻孔閉鎖術」を急遽行うための緊急手術に挑む覚悟をもちました。
そんな中でも、麻酔をしたことで久しぶりに痛みから解放され、つかの間の休息を得られたのです。
今回は、手術室が抑えられなかったので意識のある状態で緊急手術が始まります。
麻酔の効果と安堵
麻酔が効いたことで、久しぶりに痛みから解放され、心の底から安堵を感じました。手術を待っている間、外来のベッドではあったのですが、思わずついうとうとと眠ってしまいました。
久しぶりにダメージを受けている右側を下にしても、全く痛くない時間が訪れ、数十分ではありましたが、ぐっすりと眠れました。
もともと右側を下にして寝ていた私にとってこのひとときが、どれほど貴重だったかを実感しました。
緊急手術の準備、高まる緊張
「繁さん、もうすぐ手術を始めますね...。準備を始めてもいいですか?」
看護師に声をかけられ、はっと起きました。
「大丈夫ですか?眠られていましたよね?」
「すみません、久しぶりに痛みがなくなったので...思わず肩の力が抜けてしまったようです...」
「それは良かったです。麻酔がよく効いているようですね。」
「はい、大丈夫そうです。」
「それでは、手術の準備を始めてもいいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
そういって看護師は体をジャックナイフのポジションを取り、手術の準備を始めました。
そのあと、手術用の布を体と下半身にかけます。
体には血圧計と心電図モニターを装着し、酸素濃度を測るクリップを装着しました。
開いた瘻孔の閉鎖、緊急手術の開始
準備ができた段階で、看護師が主治医と総院長を呼びました。
「しげさん、それでは手術を始めますね。」
「みなさん。よろしくお願いします」
「お願いします」
周りにいる看護師と、思わず私も相槌を打ちました。
手術中の緊張感と祈り
手術が始まりました。まずは、開いてしまった瘻孔を閉じる手術が行われます。しかし、完全には閉じず、万が一膿が出てくる場合に備えて、膿の出口は開けておくという判断が下されました。
医療の現実を目の当たりにしながら、どれほどの痛みが伴うのか心配でいっぱいでした。
さらに手術用の器械がガチャガチャと音を立てるたびに、恐怖心が増していきます。
医師を信じるしかない状況ではありましたが、周囲の音が、私の心にさらなる緊張をもたらしました。
「何が起こっているのか、無事に終わるのか」と考えると、ますます不安が募りました。
心臓の鼓動が早まり、今までの出来事が頭の中を駆け巡ります。「これで少しでも状況が良くなりますように」と願いを込めて手術中の時間を過ごしました。
やがて、洗浄される液体の冷たさが伝わり、緊急手術が終わったことを実感しました。この瞬間、手術が無事に進んでいることを実感しましたが、同時に後の治療に対する不安もまだまだあったのです。
医師からの絶対安静の指示と絶食の日々が始まる
手術後、医師から「直腸部分にかかる内圧を避けるために、絶食&床上安静」の指示が出ました。ベッドより起き上がるのもNGとのこと。
腹圧すらも今の私の瘻孔にはダメージになりうるとの、医師の見解でした。
この指示がいつまで続くのかわからないという不安がありましたが、「ストマにならずに治るなら…。」と、私は覚悟を決めました。
これからの治療は、私にとっての新たな試練の幕開けであり、心の中の不安は続いていました。
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