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盛岡~新青森間が320km/hに 東北新幹線の速度を上げなければならない理由とは?

小林拓矢フリーライター
320km/hで走行可能なE5系(写真:haru_sz/アフロイメージマート)

 現在、東北新幹線では大宮~宇都宮間の最高速度は275km/h、宇都宮~盛岡間の最高速度は320km/hとなっている。一方で、盛岡~新青森間は260km/hである。

 新しく開業したこの区間の最高速度が遅いということは、多くの人が気になるところだろう。東北新幹線に乗って北に向かうとき、盛岡を出るとなぜか遅くなるということを感じたことのある人は多いはずだ。

 この区間を高速化する計画が、いま進められている。

整備新幹線は設備の規格が低水準だった

 盛岡から北は、整備新幹線という枠組みの中で作られた。盛岡~八戸間が2002年に、八戸~新青森間は2010年に営業を開始した。新規開業にあたって新車が投入されるも、最高速度を出すのは決まって盛岡以南だった。

 背景には、整備新幹線の規格の問題がある。整備新幹線は、経費の節減などのため最高速度が260km/hとして設計された。このことが、新幹線の速達性の妨げともなっているという問題が発生した。

 整備新幹線は鉄道会社だけが費用を負担したのではなく、国や地方も大きな額を負担し、それゆえ建設費を抑制しなくてはならないという事情があった。しかも整備新幹線の計画が進み始めたのは、JRになってからのことだった。

 それゆえに計画を早期に進めるためには、国が定めた規格を受け入れるしかなかった。また、需要が少ない区間ゆえ、それほどの速達性も必要ではないという考えがあった。

 しかし新幹線ができると、多くの人がそれに乗って移動するようになる。もっと速く、という考えも、必然的に生まれてくる。

東北新幹線を速達化しなくてはならない理由とは?

 では、東北新幹線の速達化のためになにが必要なのか?

 新幹線がより高速で走ると、騒音が発生する。とくに市街地の場合はそうだ。その場合、吸音板を設置したり、防音壁をかさ上げしたりしなくてはならない。場合によっては、別に基礎工事をした上で、防音壁を作る。吸音板の設置が1.3kmで、防音壁のかさ上げなどが3.6kmだから、これらは人が住んでいる地域に対する措置だろう。

 しかし新幹線は、トンネルを掘り、橋梁をかけてよりまっすぐな線路にしようとする。トンネルの入り口には、発生音を抑制するためのアーチ状の構造物(トンネル緩衝工)を設置する。これを24箇所で延伸することにより、より速度を出しやすくすることができる。

 なぜ東北新幹線はより高速にならなければならないのか。

 この工事により、最大5分程度の所要時間を短縮できるという。東北新幹線は北海道新幹線に直通し、新函館北斗までの到達時間を短くし、飛行機との競争力を高めようとしている。今後は、札幌への直通も予定されており、その前に高速化と大幅な時間短縮が必要になることはすでにわかっている。

 工事は2020年10月からおおむね7年程度かけて行われる。

 もちろん、北海道新幹線の高速化に向けての取り組みも行われている。北海道新幹線は、2020年の12月31日から21年の1月4日にかけて、青函トンネル区間内での最高速度を160km/hから210km/hにする。将来は260km/hでの運転をめざしている。

 青函トンネル区間は、新幹線と在来線の共用区間であり、それゆえに新幹線の速度を遅くするしかない。しかし、それにより所要時間がのびる。年末年始は貨物列車の運行が少なく、始発から午後の時間帯にかけて速度を上昇させるとのことだ。

 これも、札幌開業時の高速化のために必要なこととなっている。

 いずれ北海道新幹線は、新函館北斗から札幌までの間が開業する。その前に、東北新幹線も含め速達性を高め多くの人に利用してもらえるようにするということが求められている。

他区間でも速達化

 東北新幹線では、ほかにも速達化が行われようとしている区間がある。上野~大宮間である。この区間は都市近郊の住宅地を走っており、騒音対策のために110km/hに制限されている。対策工事などが進められ、2021年春のダイヤ改正で130km/hに最高速度が引き上げられる。これにより所要時間が1分短縮できる。

 東京~大宮間は、ある種のボトルネック的な区間として存在している。東北方面や上越方面、北陸方面に向かう全列車が走行し、本数も多い。建設時の地元との協定や、環境への影響も考慮しなくてはならず、速度を出すことができない。

 地域住民に影響のない範囲で、この区間の最高速度を少しでも上げることは必要とされていた。それにより到達時間を短くするということが可能になった。

 上越新幹線では、現在最高速度240km/hのところ、275km/hに対応するように工事が行われている。1990年から1999年まで、上毛高原~浦佐間で一部の下り列車のみ275km/hでの運行が行われていたものの、専用の車両が必要なことや、区間内ノンストップであることなど制約も大きかった。上越新幹線は最高速度240km/hのE4系(オール2階建て車両)が運行の中心になったこともあり、速達性は衰えていた。今後はE7系を増やすことにより、高速化を進める。なお、E4系の引退は2019年の台風19号による長野新幹線車両センター浸水による北陸新幹線車両不足の影響により遅れることになる。

 東北新幹線は、速度を向上させることで、飛行機に対する優位性をより強め、北海道新幹線全線開通の日に備える。ほかの新幹線も、車両性能向上に合わせ高速化する。速達化は、高速鉄道には必然的に求められるものである。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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