「元祖日田焼きそば」が衝撃の進化! 創業67年老舗の新作とは?【ラーメン評論家の覆面ラーメン批評4】
1957年創業「元祖日田焼きそば」の老舗
「日田焼きそば」とは大分県日田市で生まれたご当地焼きそば。一般的な焼きそばは炒めるものが多いが、日田焼きそばはしっかりと焦げ目がつくくらいに鉄板で「焼く」ことが特徴。麺のパリパリとした食感と香ばしいソースが食欲を誘う、オリジナリティのある焼きそばは、日田市内の焼きそば専門店やラーメン店などで提供されている。
その「日田焼きそば」を生み出した元祖が、1957(昭和32)年創業の『想夫恋』(総本店:大分県日田市若宮町416-1)。世の中に麺を焼いた料理がない、ということに着目した創業者が考案した「焼きそば」は一躍人気を博し、今では大分をはじめ福岡、佐賀、熊本などの九州や、関東、近畿地方にも店舗を展開している。
基本的にはどの店でもメニューは同じだが、『想夫恋 渡辺通店』(福岡県福岡市中央区渡辺通5-1-22)で、渡辺通店限定メニューとして10月から販売されているのがなんと「二郎系焼きそば」。ガッツリラーメンの人気店『ラーメン二郎』インスパイアという、老舗焼きそば店とは思えない攻めたメニューになっている。果たしてそのクオリティはどうなのか、ラーメン評論家目線で実食してみた。
背脂とニンニクがガッツリ入る焼きそば
通常『想夫恋』の焼きそばは鉄板もしくは平皿で提供されるのだが、今回の「二郎系焼きそば」はラーメン丼で提供される。このビジュアルの違いだけで、これまでの焼きそばとは違う存在であることが明確になっている。さらに麺を覆うように大きなチャーシューやうずらの卵、そして背脂とニンニクが乗っているので、焼きそばというよりもラーメンやまぜそばに見える。
背脂とニンニクの量は想像以上で、かなり振り切って攻めた印象を受ける。丼の底からしっかりと良く混ぜて食べると、いつもの『想夫恋』の焼きそばがジャンクな味わいに変化する。ニンニクと背脂が入るだけで、ここまでイメージが変わるのは驚き。チャーシューはまぜそばであるならば細かく刻んであるべきだろうが、バラロールチャーシューの見た目や存在感から考えて、この形で乗せたのだろう。
肝心の焼きそばはいつもの『想夫恋』のソース味。「二郎系」に寄せるのであればこの味付けには色々可能性があったと思うが、この商品はあくまでも焼きそばなのだから、やはりベースはソース味であるべきなのだろう。その味を変える存在が背脂とニンニクで、一見かなり多い量に見えるが焼きそばのソース味が強いので、味のバランスを考えると丁度良い量になっていると思う。
茹でたモヤシやキャベツが入っても良かった
一般的なまぜそばと決定的に違うのが麺の食感。『想夫恋』最大の特徴が焦げ目がつくまでしっかりと鉄板で焼いた麺。ベースとなる焼きそばの良さはそのままに、まぜそばスタイルにしたことで、新たな焼きそばの可能性を示した。カリッとした部分とモチっとした部分が共存する麺の食感は、ラーメン店のまぜそばでは表現出来ない部分だろう。
逆に惜しいなと感じたのは具材。いわゆる「二郎系」「ガッツリ系」と呼ばれるラーメンはモヤシやキャベツなどの野菜が守られるのが特徴。おそらく焼きそば自体にモヤシも入っているので、モヤシは不要となったのだろうが、茹でたモヤシやキャベツが乗せられていたら、見た目のボリュームや食感のコントラストもさらに生まれて、より「二郎系」感は増したと思う。
今回のメニューは渡辺通店のオリジナルではあるが、創業67年を数える『想夫恋』の屋号を背負っているとなれば、なかなか新しいことにはチャレンジ出来ないもの。そんな中でまぜそばや焼きそばの新しいスタイルに挑んだことに拍手を送りたい。そして今後もアッと驚くようなメニューで私たちを楽しませて欲しいと思う。
※写真は筆者の撮影によるものです。
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