絶対に食べておかねばならない 東京の背脂ラーメン「基本」3軒
脂を食べる「背徳感」がある背脂ラーメン
東京は日本はもちろん世界で最も最先端のラーメンが集まる街だ。戦前から愛される老舗のラーメンから、全国各地のご当地ラーメン、さらには最先端のラーメンまで、あらゆるラーメンが揃っている街「東京」。数多くのラーメンが集まる場所であるがゆえに、東京のご当地ラーメンと言われると答えに窮する人も少なくないだろう。
すっきりとした昔ながらの「醤油ラーメン」や、日本蕎麦のように食べる「つけ麺」など、東京のラーメンを語る上で欠かせないラーメンはいくつもあるが、忘れてはいけないラーメンがある。それは「背脂ラーメン」だ。背脂ラーメンは夜中に無性に食べたくなるラーメンの筆頭だが、それには理由がある。
ラーメンにおける油の使い方としては、基本的には「液体」である。しかしながら背脂ラーメンの場合、浮いている油は「固体」だ。麺やスープとともに固体としての脂を食べているという背徳感。そして客の好みに応じてあっさりからこってりまで、脂の量を増減出来る柔軟性。これほどまでに魅力的なラーメンが他にあるだろうか。
東京には数多くの背脂ラーメン店があるが、その中でも東京の背脂ラーメンを語る上で、食べておくべき基本の3軒をご紹介しよう。同じ背脂ラーメンでも3軒3様。個性豊かな東京背脂ラーメンの世界へようこそ。
東京背脂ラーメンの嚆矢『ホープ軒』(1960年創業)
千駄ヶ谷、国立競技場の目の前で朝から深夜まで24時間休むことなく賑わいをみせる店。それが『ホープ軒』(東京都渋谷区千駄ケ谷2-33-9)だ。屋台での創業は1960(昭和35)年のこと。その後、1975(昭和50)年に店舗を構えた。当初はカウンター立ち食い席の1階のみだったが、今は1階は昔ながらの立ち食い、2階と3階はテーブル席になっている。
深みのある豚骨醤油スープの表面には、大粒の背脂がビッシリと浮く。見た目よりも口当たりはあっさりとして食べやすいのが特徴だ。自家製の太麺は4階は製麺室で作られる自家製麺。液体ではなく固形の背脂を浮かべたのはこの店が最初と言われている。そしてこの店から巣立った背脂ラーメンの名店も数多い。まさに東京背脂ラーメン基本中の基本とも呼べる一軒だ。
ギタギタ背脂発祥の店『らーめん弁慶』(1973年創業)
背脂ラーメンの脂をたっぷり振りかけることを「ギタギタ」というが、それはこの『らーめん弁慶』(本店:東京都台東区花川戸2-17-9)から始まった。屋台時代の『ホープ軒』で修業を積んだ店主。屋台での創業は1973(昭和48)年のこと。屋台時代の常連客が「脂をギタギタにしてくれ」と言ったことが始まりだ。1985(昭和60)年に堀切に店舗を構えて現在は3店舗。現在の浅草本店は2013年から営業している。
『弁慶』のラーメンの特徴はやはりその背脂。きめは細かながらも豪快に振りかける背脂はまさにギタギタ。厳選した良質な背脂を丁寧に炊くことで、クセのないまろやかな甘みだけを残した背脂になる。豚骨や鶏ガラベースのスープと合わせる麺は、地元の老舗製麺所『浅草開化楼』に特注した縮れ麺。麺と背脂がしっかりと絡み合い、ラーメンに一体感を生み出している。
繊細な背脂ラーメンの嫡流『らーめん丸富』(1986年創業)
恵比寿駅と広尾駅のちょうど中間あたり、明治通り沿いで長年愛されているのが『らーめん丸富』(東京都渋谷区広尾5-22-1)だ。創業は1986(昭和61)年で、かつて繊細な背脂ラーメンで恵比寿を席巻した『らーめん香月』の流れを汲んでおり、懐かしき東京背脂ラーメンの味とスタイルを今も守っている。
背脂ラーメンの中でもあっさりとして繊細な味わいが特徴。きめ細かな背脂の円やかな甘みも手伝って、鶏ガラや豚骨などスープ本来の旨味が優しく口の中に広がる。真っ直ぐな細麺は柔めの茹で加減でしなやかな食感。背脂ラーメンはこってりでガッツリといったイメージとは真逆の、毎日でも食べられる優しい味わいだ。
今回ご紹介した3軒は、いずれも長年にわたり愛され続けている、東京の背脂ラーメンを語る上で欠かせない名店ばかり。流行のラーメンを追いかけるだけではなく、ぜひ長年愛されている古き良きラーメンも食べてみて欲しい。きっとラーメンの食べ歩きがさらに楽しくなることだろう。
※写真は筆者によるものです。
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