北九州の老舗が東京へ! 渋谷で25年愛され続ける豚骨ラーメン 【ラーメン評論家の覆面ラーメン批評1】
ラーメンブームによって変わったこと
今から四半世紀ほど前の90年代終わりから2000年代の初頭、世の中は空前のラーメンブームだった。連日のようにテレビではラーメンの特番が組まれ、ありとあらゆる雑誌はラーメン特集を組んだ。このラーメンブームがあったからこそ、ラーメンが国民食となり世界にも広がったと言っても過言ではないだろう。
このラーメンブームによる革新的な変化としては、ラーメン店がスタイリッシュで綺麗になったことが挙げられる。看板や丼、ユニフォームなどにオリジナルのデザインが施され、内装や外装はコンセプトに基づく雰囲気に統一された。そこには飲食店のデザインやコンセプト作りに特化したプロデュース会社の存在も大きかった。
そんなラーメンブームの真っ只中、1999年に渋谷でオープンした『唐そば』(東京都渋谷区渋谷2-22-6)も、プロデュース会社の手によってデザインされた一軒。1959年に福岡北九州八幡で創業した老舗だが、東京への移転を機に当時流行していたスタイリッシュな店舗として新装オープン。当時のラーメンファンたちはこぞってこの店へ足を運んだものだ。
ラーメンブームの最中に生まれた『唐そば』
首都高速渋谷線と青山通りが重なり合う、渋谷の雑然とした街並みの中にある店舗。再開発によって周りの風景は日に日に変わっている中で、当時と変わらぬ店の佇まいにまず驚いた。四半世紀も前のデザインであるにも関わらず、全く古臭さを感じさせないのだ。元々レトロな雰囲気にデザインされていたのもあるだろうが、看板や暖簾、そして丼に至るまで統一されたデザインがずっと守られているのは実に素晴らしい。
仕事柄店の立ち上げやコンセプト作りを手伝うことも多いのだが、オープン当初のコンセプトやデザインは年月が経つにつれておざなりになり、かつてのデザインの残骸がところどころに残ってごちゃごちゃになってしまいがち。しかしこちらの店は掃除も行き届いていて清潔感があり、あらゆる部分で当時のデザインをしっかりと守っているため、昭和レトロな店のコンセプトが全く崩れていないのだ。
古さを全く感じさせない『唐そば』の「ラーメン」
『唐そば』の「ラーメン」は北九州で生まれた豚骨ラーメンである。創業者が作り上げた味のコンセプトは「臭くなく」「あっさりしていて」「旨みがたっぷり」とのこと。豚骨だけではなく地鶏の鶏ガラをベースに使い、香味野菜や和出汁も加えることで、豚骨100%のスープとは異なる重層的な旨味を持ったスープになっている。熱々過ぎないスープの温度もまた良い。
麺は2日間かけて熟成させた自家製麺で、一般的にイメージされる九州の豚骨ラーメンの麺とは異なる。低加水でありながらもしっかりと茹できることで、もっちりとした食感になり茹で伸びもしにくくなっている。粘度が比較的ライトなスープをガッチリと受け止めて持ち上げ、食感や喉越しも良いので啜っていて楽しい麺だ。
四隅に「唐」の文字がデザインされたオリジナルの丼に、茶褐色の豚骨スープとチャーシュー、キクラゲ、モヤシ、万能ネギ。綺麗に盛り付けられたラーメンの姿からも、仕事の丁寧さが伝わってくる。65年前に北九州で生まれ、25年前に渋谷で人気を博したスタイリッシュな豚骨ラーメンは、今もその輝きが色褪せることなく多くの人に愛されている。
※写真は筆者の撮影によるものです。
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