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「大掃除後の止まらない咳」に注意を 原因は?

倉原優呼吸器内科医
イラストACより使用

年末になり、大掃除ではりきっているご家庭も多いかと思います。ほこりやカビ取り剤を吸い込んでしまい、ゴホゴホと咳が出た後から、次第に調子が悪くなって受診される方がしばしばいます。

ほこりを吸い込んだらどうなるか?

ほこりを吸い込むと、ほとんどが上気道に捕捉されます。上気道というのは、口あるいは鼻から喉(のど)までの間です。

もし声門を越えて、下気道というところまでほこりを吸い込んでしまった場合、強い咳が出ます。この咳反射によって、ほこりの大半が排出されます。それでも気道に残ってしまった場合、痰(たん)になって出てきます。

気道には線毛という「毛」が無数にあり、これによってほこりを上に向かってかき出してくれます(図1)。これが、痰になるわけです。

図1. ほこりが下気道から排出されるメカニズム(筆者作成、イラストはイラストACより使用)
図1. ほこりが下気道から排出されるメカニズム(筆者作成、イラストはイラストACより使用)

さらに肺の奥へほこりが入ってしまったとしても、肺にはマクロファージなどの兵隊が存在するため、一時的なほこりの吸入が原因になって肺が壊れてしまうことはありません。

しかし、咳が止まらない場合は注意が必要です。

ほこりにはアレルゲンが含まれる

掃除後に咳が長引く場合、「喘息(ぜんそく)の悪化」を考える必要があります。ほこりの中には、積年のハウスダスト・ダニ・真菌(カビ)などが存在します。これらに対してアレルギーがある場合、掃除がきっかけで喘息が悪化します。

喘息の咳は、重い発作の場合、ぜえぜえ、ヒューヒューという音を伴います。また、他の咳と違って喘息は1回あたりの咳の持続時間が少し長くなることが多いです。「コホッ!コホッ!」ではなく、「コッフ!コッフ!」という感じです。この場合、聴診器を当てれば一発で診断できます。

とはいえ、聴診器では診断できない、喘息とは似て非なる咳喘息という病気もあります。これも、アレルゲンに曝露された後に咳が起こりやすいとされています。

その他、真菌(カビ)を吸い込むことで、過敏性肺炎やアレルギー性気管支肺真菌症という病気を起こすこともあります。

咳のおさまりが悪い場合は「喘息っぽい」と自己判断せず、病院を受診するようにしてください。

大掃除のときに一気にアレルゲンに曝露されるよりは、普段からこまめに掃除しておくほうがよいです。寝室は可能な限り毎日掃除することをおすすめします。

洗剤・消毒剤から発生するガスによる咳に注意

東京消防庁からも注意喚起されていますが(1)、種類の違う洗剤・消毒剤を一緒に使用しないようにしてください。特に、塩素系のものと酸性のものを一緒に使用すると有毒なガスが発生し、喘息のような咳が長引くことがあります(2)。

たとえばトイレ掃除の際、カビ取り剤とトイレ用洗剤が併用されてしまうケースがあります。前者が塩素系洗剤(例:次亜塩素酸ナトリウム[NaClO])、後者が酸性(例:塩酸[HCl])の場合、これらが混ざると塩素ガスが発生してしまいます(図2)。

図2. 「混ぜるな危険」の化学式(筆者作成、イラストはいらすとや、イラストACより使用)
図2. 「混ぜるな危険」の化学式(筆者作成、イラストはいらすとや、イラストACより使用)

また、排水口やシンクの掃除に排水口クリーナーとクエン酸を両方使うと、これも塩素ガスの発生源となります。

種類の異なる洗剤が混ざらないよう、前に使用した洗剤をしっかりと洗い流すことが重要です。洗剤の容器に書かれている注意事項は必ず確認しておきましょう。

そして、気密性の高いトイレやお風呂の掃除をする場合は、必ず換気するよう心がけましょう。

まとめ

吸入したほこりや洗剤・消毒剤などによって、咳が長引くことがあります。この多くは喘息や咳喘息などの気道過敏によるものですが、咳が長引く場合は病院を受診するようお願いします。

(参考)

(1) 東京消防庁. 掃除中の事故に注意!(URL:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/nichijou/cleaning.html

(2) Lemiere C, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022; 10(11): 2799-2806.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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