急増中のマイコプラズマ 「感染したら何日間休む?」
国内では現在、過去最多水準でマイコプラズマ肺炎の患者数が報告されています。もしもマイコプラズマに感染した場合、どのくらい学校や仕事を休むことになるのでしょうか?
歴史的流行
ピーク時の新型コロナほど混乱はありませんが、外来で「マイコプラズマが陽性です」と伝えることが増えました。
現在、マイコプラズマ肺炎の患者さんが増えています(図1)。もともと、4年に1回の流行があり「オリンピック肺炎」とも呼ばれていましたが、近年はその傾向がなくなっていました。奇しくも今年は、パリオリンピックの年に流行することとなりました。2016年以降の歴史的な流行となっています。
定点医療機関あたりの「肺炎」の数が報告されていますが、実は水面下には何倍もの非肺炎の軽症例が存在します。
マイコプラズマの症状
マイコプラズマは、上気道炎や気管支炎などの軽症にとどまることも多いです(図2)。発熱、のどの痛み、強めの咳などが出現します。痰の少ない乾いた咳になることが多いです。
肺炎を起こすと、咳が重症化・長期化し、全快までに長期間を要することがあります(図3)。
問題になっている「耐性マイコプラズマ」
肺炎を発症すると、重症化するリスクがあるため、抗菌薬の投与が必要になります。
マイコプラズマは、マクロライドという抗菌薬が治療によく用いられます。しかし最近、マクロライドが効きにくい「耐性マイコプラズマ」が増えています(2)。地域によって差はあるものの、半数くらいが耐性となっています。
そのため、医療機関でマイコプラズマと診断されてマクロライドを処方されているのに軽快しない場合、再受診がのぞましいでしょう。別系統の抗菌薬を使用する必要があります。
どのくらいの期間休めばよい?
マイコプラズマ肺炎の感染症法上の分類は、インフルエンザや新型コロナと同じ5類感染症です。学校保健安全法においては、新型コロナとインフルエンザは第2種学校伝染病、マイコプラズマ肺炎は第3種学校伝染病に指定されています。
学校保健安全法では、インフルエンザは「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日が経過するまで」、新型コロナは「発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで」という出席停止期間がもうけられていますが、マイコプラズマ肺炎は「感染のおそれがないと認めるまで」とされており、少しふわっとしています。
こども家庭庁では「発熱や激しい咳が治まっていること」(3)、日本小児科学会では「発熱や激しい咳が治まり全身状態がよいこと」(4)が登校の目安とされています。
働いている大人の場合、学校保健安全法は適用されませんので、常識的な判断で出勤することになります。
マイコプラズマの感染予防策
家族内で風邪がうつっていくことはよく経験されますが、マイコプラズマも同様のメカニズムで感染します。インフルエンザや新型コロナほど感染性が高いわけではありませんが、潜伏期間が長いため、感染経路が特定しにくいです。
家族などに感染者がいる場合、図4のような感染予防策をご検討ください。
(参考)
(1) 感染症発生動向調査週報.2024年第40週(第40号)(URL:https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/idwr/IDWR2024/idwr2024-40.pdf)
(2) 特効薬が効かない「耐性マイコプラズマ」が増えているって本当? 感染予防策は(URL:ttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9024c84478cb83e8e2b138a91cad44437c72e593)
(3) こども家庭庁.保育所における感染症対策ガイドライン (URL:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf)
(4) 日本小児科学会.学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(URL:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240513_yobo_kansensho.pdf)