いま接種されている新型コロナワクチンは、冬に流行する変異ウイルスに効くのか?
5類感染症に移行してからというもの、新型コロナは私たちの周りに存在するありふれた呼吸器感染症の1つと認識されています。現在、高齢者を中心に接種されている新型コロナワクチンは、現在の変異ウイルスや冬に流行する変異ウイルスに対しても有効なのでしょうか?
冬の流行の主役はXEC株か
現在の新型コロナは、基本的に夏に1回・冬に1回の流行がみられており(図1)、今冬もインフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されます。
現在はKP.3という系統の新型コロナウイルスが主体ですが(2)、冬はおそらく、XECという変異ウイルスが主体になると予想されています(3)。いずれも、オミクロン株の末裔(まつえい)みたいなものです。
変異ウイルスにワクチンは効果があるのか?
変異を繰り返すとワクチンの有効性が低下する「免疫逃避能」が懸念されています。そのため、ワクチンに含まれる株は、流行株に合わせてその都度改変しています。
現在定期接種に用いられているのは、JN.1という変異ウイルスに対応しているワクチンです。
「JN.1から変異がすすんだら効果がなくなるのでは」と不安に思われるかもしれません。確かにJN.1そのものに対する効果よりやや劣る可能性がありますが、流行している変異ウイルスと接種ワクチンは、懸念するほどかけ離れているわけではありません。
主流であるKP.3や今後流行すると予想されるXECについても、現在接種されているJN.1対応ワクチンで中和抗体価は十分達成されることが報告されています(図2)。
各学会は推奨の立場
現在、65歳以上の高齢者などに新型コロナワクチンの定期接種がおこなわれています。
2024年10月に、日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会の3学会から合同で、「2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」が発出され(5)、そこでは「高齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であり、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨」と記載されています。
基礎疾患のある人は、基本的に1年に1回程度接種が推奨されるというのは、インフルエンザワクチンと同様の考え方です。
さらに、日本小児科学会から「2024/25シーズンの小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」も発出されました(6)。ここでは「生後6か月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)が望ましい。特に、重症化リスクが高い基礎疾患のある児への接種を推奨」と記載されています。
高齢者に対しては、インフルエンザよりもインパクトが大きいことから、普段からインフルエンザワクチンを接種している方は、新型コロナワクチンが推奨されるという理解でよいでしょう。
ただし、子どもや多くの大人に対しては、接種自己負担額が約1万5,000円というハードルがあります。定期接種対象者である高齢者以外にも助成を出している自治体もありますが、4人家族で約6万円になるなら、広く接種を呼びかけるにしては高額すぎるかもしれません。われわれ医療従事者に関しても、基本的には同様の自己負担が発生しています。
(参考)
(1) 2024年11月1日新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001323615.pdf)
(2) 東京都新型コロナウイルス感染症情報(新型コロナ情報第30号2024年(令和6年)11月1日発行)(URL:https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/info/monitoring.files/2024No31.pdf)
(3) Kaku Y, et al. bioRxiv doi:10.1101/2024.10.16.618773
(4) Arora P, et al. bioRxiv doi:10.1101/2024.10.04.616448
(5) 日本感染症学会, 日本呼吸器学会, 日本ワクチン学会. 2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解(URL:https://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=672)
(6) 日本小児科学会. 2024/25シーズンの小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方 (URL:https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=621)