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いまだ結核の2割以上が「診断遅れ」 #専門家のまとめ

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

9月24日から30日は「結核・呼吸器感染症予防週間」です。結核は過去に「亡国病」とも恐れられた感染症ですが、3年連続で低まん延国を達成しています。しかし、今後増加に転じる懸念が生じています。

ココがポイント

東京都では(中略)今年は、9月中旬時点で、去年1年間の感染者数を上回っています。
出典:日テレNEWS NNN 2024/9/24(火)

年間約1万人が結核を発病しており、約1,600人が亡くなっています。これは、決して軽視できない数字です。
出典:Yahoo!ニュース エキスパート 倉原優 2024/8/29(木)

結核の症状(長引く咳、たん、微熱、体のだるさなど)には特徴的なものがなく、初期には目立たないことが多い
出典:厚生労働省

エキスパートの補足・見解

昭和20年代まで、結核は日本人の死亡原因の第1位でした。特に戦時中・戦後は十分な医療が提供できずに、多くの人が亡くなりました。その後結核は減少し続け、人々の記憶から薄れていきました。そして日本は、2021年に初めて結核の「低まん延国」の仲間入りを果たしました。

気になるのは、東京都の新規結核患者数が今年9月時点で、昨年1年間の総数を超えているという点です。このままだと、強烈なリバウンドになる懸念があります。

コロナ禍に結核が減少した理由は、軽症で受診する人が減ったことによる「過少診断」が一因かもしれません。実際に最新のデータでは、診断が遅れた(受診から結核診断までの期間が1か月以上)人の割合は、22.5%と高い数値です。

また、外国出生者の結核は無視できません。外国出生者の割合は、20~29歳で84.8%と大部分を占めています。現在、入国前結核スクリーニングの制度の準備がすすめられています。

現在、9月24日から30日までを「結核・呼吸器感染症予防週間」と定め、感染予防の啓発普及をおこなっています。結核に限ったことではありませんが、2週間以上呼吸器症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。

「結核・呼吸器感染症予防週間」令和6年度啓発ポスター(厚生労働省)
「結核・呼吸器感染症予防週間」令和6年度啓発ポスター(厚生労働省)

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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