禁止薬物トラブル続報。JRA所属馬156頭が今週のレースに出走できず。今後に与える影響は?
禁止薬物が検出された飼料サプリは、かねてから利用されていたものだった
15日午前、JRAは15日および16日の中央競馬に出走を予定している馬のうち、対象の飼料サプリメントを摂取した可能性が否定できない156頭を対象に競走除外および出走取消の措置をとった。
これは日本中央競馬会競馬施行規定第105条第1項第4号の適用によるものとしている。
※JRAによる午前6時半時点の発表と独自の取材をまとめた記事はこちら
今回、問題となっている禁止薬物は「テオブロミン」。この成分はカカオエキスの主成分であり、チョコレートやココアに含まれている。薬理作用としては、興奮作用、気管支拡張、強心作用、利尿作用などがあげられる。
そして、禁止薬物テオブロミンが含まれる可能性を指摘されたのは「グリーンカル」という飼料サプリメント。この製品はカルシウムを補うための飼料サプリメントでかねてから利用されている。
販売する日本農産工業株式会社のリリースによれば、6月15日の時点で製品に原材料としては使用していないテオブロミンが混入した原因は特定されていない。
本来は、発売前に検査機関である公益財団法人競走馬理化学研究所においてロット単位で禁止薬物が含まれていないかがチェックされ、その検査に合格したもののみが流通する。しかし、今回は発売後に禁止薬物が検出されたロットが存在すると判明したため、摂取の可能性が否定できない馬たちがある馬が措置の対象となった。
GIや競走馬の生き残りにも影響、今後の影響は甚大
今回のトラブルは、少なからず馬の一生に影響を与えている。
予定していたレースに出走できないことで、まず体調管理に影響を与える。目標レースに向けてのローテーションも改めて組み直しとなる。さらに当該馬は出走できないがレースは通常通り行われるため、賞金加算のチャンスが減ったのは痛手だ。
3歳未勝利馬に至っては、大袈裟ではなくその馬の一生に大きな影響を与える。JRAは今年からこれまで"スーパー未勝利"の愛称で行われていた秋季競馬の3歳未勝利競走を廃止した。これにより、ただでさえ勝ち上がっていない馬たちが中央所属の競走馬で居続けるチャンスは減っている。未勝利馬にとって夏の未勝利戦はまさに生き残りを賭けての戦いであり、1回の出走機会も無駄にできないのだ。
それゆえ、このようなトラブルで大事な出走機会を逸した馬主や厩舎関係者の失意は計り知れない。
また、この時期はただでさえ馬の入れ替えが頻繁に行われるため、JRAの施設へ競走馬を入厩させる際に行われる「検疫検査」の予約がただでさえ取りにくい。そこへ来て、この騒動に巻き込まれて出走プランの変更を余技なくされた馬が入れ替えを希望すれば、さらに検疫は混みあっていくことが予想される。
ごくごく当たり前に競馬開催が行われることを切に願う
なお、来週以降に出走する馬についてJRAは「摂取の可能性が否定できない馬については、近日中に検査を行う」としている。来週行われる宝塚記念(GI)などにおいては、少なくとも今回のように直前に多くの馬たちが競走除外となる可能性は極めて低い。
また、該当ロットのグリーンカルはすでに回収済みで、今後誤ってJRAの競走馬に与えられる可能性はまずないと見込まれる。
しかしながら、トラブルに巻き込まれて出走機会を失った馬たちの関係者を思うと痛ましいばかりである。そして、多くの競馬ファンに対して混乱を招いた。今後はこのような事態が起きず、ごくごく当たり前に競馬開催が行われることを切に願うばかりである。