第七世代のテレビ出演は本当に減ったのか?〜出演者の世代交代を進めるべき理由〜
第七世代はTV出演ランキングでは影が薄い?
筆者はこのところ、テレビ出演者の世代が気になっている。若い出演者を中心にしていかないと、若い視聴者が今以上にテレビから離れる懸念があるからだ。
去年は、テレビ局の指標が変わったことで「第七世代」と呼ばれる若手芸人たちがもてはやされた。若い世代の視聴率を取ろうと各局が考えてのことだろう。
だが今年の夏頃から、第七世代についてネガティブな記事を見るようになった。逆にその上の第六世代とも呼ぶべき芸人たちがもてはやされ始めたようだ。第七世代の出演が激減したとの記事も目にした。
かまいたちなど、40歳前後の芸人たちがむしろ急に出演を増やしているのは事実だろう。だが第七世代の出演は本当に減ったのだろうか。
テレビ放送の内容をテキスト化するエム・データ社が、12月9日に「2021年テレビ出演ランキング」を発表した。1月1日から11月30日に、東京地区地上波キー局で放送されたTV番組に出演した人物を対象にランキングしたもので、毎年発表している。芸人だけでなく、総合的なランキングだ。
男女別の10位までのランキングが冒頭の画像だ。フワちゃんが女性のトップに輝いている。彼女を「第七世代芸人」に入れているメディアもあるので、その躍進の証とも言える。(WEBザテレビジョンによる第七世代芸人リストにはフワちゃんも入っている)また5位に福田麻貴(3時のヒロイン)がランクインしており、女性では第七世代の面目躍如といったところだ。
ところが男性では第七世代は10位までに一人もいない。チョコレートプラネットの二人は第七世代の芸人たちと番組をやっていることも多いが年齢で言うと40歳前後で該当しない事になる。
サンドウィッチマンやバナナマン、川島明(麒麟)、博多大吉(博多華丸・大吉)に小峠英二(バイきんぐ)など、ベテランの出演が多いのが男性芸人では明らかだ。言われた通り、第七世代は評価を落とし、出演数も激減してしまったのだろうか。
50位までの出演数ランキングで確認
そこで、エム・データ社に依頼し、2019年から2021年までの男女別出演数ランキングを50位まで用意してもらった。そこからは少し違う状況が見える。
まず2019年のランキングを確認すると、第七世代で男女別50位に入っているのは霜降り明星の二人だけだ。粗品が40位、せいやが50位。彼ら以外にランク入りした第七世代は一人もいなかった。
2020年になると、急に第七世代がランクインしてくる。
女性ではフワちゃん(8位)と、3時のヒロインが福田麻紀(14位)、ゆめっち(18位)、かなで(20位)と3人とも上位に入った。
男性では霜降り明星が粗品(14位)、せいや(16位)と2人ともランクアップ。そしてEXITが兼近(28位)、りんたろー。(33位)、ぺこぱが松陰寺(43位)、シュウペイ(46位)に入っている。
女性4名、男性6名が50位以内にランクインしたというわけだ。
これが今年、2021年にどうなったか。ランキング表をそのまま50位まで見てもらおう。第七世代の芸人には黄色く色付けしている。
女性ではフワちゃんがトップを飾り、3時のヒロインの3人もそれぞれランクアップ。さらに、ぽる塾の3人とラランドのサーヤも入った。
男性では霜降り明星の二人は順位は下がったが健闘、ぺこぱは二人とも順位を上げた。さらにミキ、EXIT、マヂカルラブリー、ニューヨークら若手芸人たちがひしめき合っている。
一部で言われたほど第七世代は後退していないどころか、若手芸人の出演数は増えていた。(マヂカルラブリーとニューヨークを第七世代に入れるかどうかは微妙かもしれないが)
第六世代(?)が重宝されるのはコアを40代が左右するから
第七世代に対してネガティブに言われがちなのは、第六世代とも言われる40代芸人が重宝されるようになったからではないかと思う。おそらくだが、最近定着した「コア視聴率(局によるが多くは14-49歳)」の数字が比較的取りやすいからだろう。
だがここにはテレビ局が今後ハマりかねない落とし穴があると筆者は見ている。2020年の人口ピラミッド(出典:国立社会保障・人口問題研究所:人口ピラミッド画像)から見えてくるものがある。
テレビ世代とネット世代の区分けは筆者が非常に大雑把に書き加えたもの。そこにさらにコア視聴率の対象年齢を重ねている。
コア視聴率の上の層は団塊ジュニア世代で大きな塊だ。ここからは筆者の推論だが、団塊ジュニアはこれまでの「テレビでお笑いを見る文化」の最後の世代で、特にダウンタウンの影響を強く受けて育った。人数も格段に多いのでコア視聴率を大きく左右する。彼らが同世代の芸人を好むので、第七世代より一回り上の世代が今重宝されているのではないか。今年急激に高齢タレントの「卒業」が起きたのも、コア視聴率を左右する40代の志向に合わせたからで、その代わりに40代の芸人が浮上したと推測している。
だが団塊ジュニアはすでに40代後半で、これから毎年大きな塊がどんどんコアを離れる。彼らが好む芸人ばかり出演させていると、数年後にネット世代がコアの大半になり、視聴率の獲得が非常に難しくなりそうだ。
それでもテレビ局がお笑いというコンテンツの命脈を今後も保っていきたいのなら、第七世代を育てていくべきではないだろうか。目の前のコア視聴率獲得で頭がいっぱいになっているうちに、そもそも「テレビでお笑いを見る文化」がどんどん薄くなってしまい、過去の遺物になってしまわないか。
今Netflixで配信している「浅草キッド」はストリップ劇場でのコントにこだわる芸人・深見千三郎に対し、弟子のビートたけしがテレビで人気を博していく、時代の移り変わりを情緒的に描いた素晴らしい作品だ。それと同じことが今後、テレビとネットの移り変わりで起こるのかもしれない。深見は劇場でのお笑いを守りきれなかったが、テレビでのお笑い文化を守れるかは、第七世代の起用にかかっているのではないだろうか。