Yahoo!ニュース

競馬はスポーツ業界最強のビジネスモデル

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

コロナ禍による緊急事態宣言が発令される中、JRA(日本中央競馬会)が無観客試合での競技の継続を決断したようです。以下、時事通信からの転載。

武豊「引き締まる」=競馬、無観客開催の継続で―新型コロナ

https://article.auone.jp/detail/1/6/12/4_12_r_20200408_1586349022362430

8日にJRAは、政府が発出した緊急事態宣言や、対象区域内外の都道府県知事の要請の趣旨を理解したうえで、更に人と人との接触や移動を抑えるために、人馬の移動の抑制、競馬場における関係者の衛生環境の更なる整備を徹底するとともに、業務の効率化に向けて必要な見直しを行い、引き続き当面の間、無観客での競馬を行っていくと発表した。

競馬界の第一人者である武豊騎手は8日、大井競馬場で交流重賞に騎乗後、このJRAの発表を受けてコメント。「競馬の力を見せていかなければならない」と力強く語った。

オープンエアな競技場で無観客で行われる競馬に、現在コロナ対策として求められる「3密」要素などはないわけで、世に巣食う「不謹慎」批判を撥ね退けて、よくぞ決断してくれたというのが本音です。競馬界のスーパーヒーローである、武豊騎手が「競馬の力を見せていかなければならない」とのコメントをよせていますが、今回のコロナ禍では「競馬の力」を本当に見せつけられました、特にその他のスポーツ業界関係者に対して。

皆さんもご承知の通り、今回のコロナ禍の発生においてプロ野球、Jリーグなどメジャースポーツは元より、あらゆるスポーツ種が競技の中止・延期を強いられているのが実態。逆にK-1の様に開催を強行すれば、あっという間に世間から叩かれ火だるまになるのが現状です。勿論、多くのスポーツ種において今回競馬が選択したような「無観客試合」での開催というのは選択肢としてはあるのですが、一方で競技場のゲート収入(要は入場料)を放棄して開催しても興行そのものが大赤字にしかならないわけで、結局、現実的には無観客試合の開催は難しいわけです。

その点、競馬に関しては馬券売上、要はギャンブル収益が競技を財政的に裏支えしているわけで、これが武豊騎手の言うところの「競馬の力」の根幹であることは間違いありません。現在、競馬は競技場及び場外馬券場は共に営業自粛を行っていますが、投票券のインターネット販売が好調で中央競馬は通常の80~85%程度の売上を維持、地方競馬に至っては通常とほぼ同レベルの売上を維持し続けています。

ちなみに競馬とは少し仕組みが違うのですが、私が個人的に経営に参画しているチアード社では、景品表示法の「懸賞」の枠内で合法的に疑似スポーツベットを提供しながら、同時にeスポーツの興行をYouTube上で無観客配信するというイベントを3月28日に実施致しました。以下、配信動画のアーカイブ。

本イベントは、元々観客を入れて配信するイベントとして企画されていたもので、今回、コロナ禍が発生したことで急遽無観客&配信にイベントの形式を切り替えたものであります。当日、会場スポンサーとしてご支援いただく予定であった株式会社Sekappy様に急遽、オンライン配信でのスポンサーシップに切り替えのお願いをし、同時にオンライン物販でタイアップ商品を事前販売するという企画の構成に変更。観客の皆様は、事前購買して頂いた商品の総価額に応じて試合の予想に賭けられるチップを獲得し、試合終了後に最も多くのチップを保有する上位3名の方に豪華賞品が提供されるゲームの仕様としました。

その結果、事前販売でタイアップ商品(単価1000円)が160セット売れ、当日4,250名のユニーク視聴者のアクセスを頂けた、と。未だβ版にある弊社サービスの機能的な限界&今回、急ごしらえで無観客試合企画に変更したことで、タイアップ商品はあくまで「事前販売のみ」とせざるを得なかった点が残念ではありましたが、数字としては弊社が当初予算として期待していたものを十分達成できた、と社内評価しております。

ということで、完全に手前味噌なお話ではあるのですが、競馬と類似したビジネスモデルで無観客試合でのスポーツ興行を何とか成り立たせる手法も一部では模索されており、現在、上記の仕組みをリアルスポーツ側に採用できないかということで競技団体とも既に検討が始まっていますよ、というお話。もちろん、本来は競馬と同様に「賭け」が合法的に実施できるのが最良であり、スポーツ業界の収益源の多様化の為にも、今後は我が国におけるスポーツベットの合法化に関しても論議を深めて行きたいなあと考えているところであります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事