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フルトンの復帰がようやく正式発表。ネリと好勝負を演じたカストロとラスベガスで対戦

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
スティーブン・フルトン(写真:松尾/アフロスポーツ)

井上尚弥戦から1年2ヵ月

 元WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者スティーブン・フルトン(米)の復帰戦が正式に決まった。昨年7月、現スーパーバンタム級4団体統一チャンピオン井上尚弥(大橋)にベルトを明け渡したフルトンは9月14日ラスベガスのT-モバイルアリーナでカルロス・カストロ(米)とフェザー級10回戦を行う。当日のメインイベントはスーパーミドル級3団体統一王者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)がエドガー・ベルランガ(プエルトリコ)と防衛戦に臨む。主催の米国大手プロモーションPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)が15日プレスリリースした。

 井上戦から1年と2ヵ月。フルトンのカムバックは二転三転した。スーパーバンタム級では減量が苦しくフェザー級転向を決意したフルトン(21勝8KO1敗=30歳)は当初、6月15日ラスベガスでルイス・レイナルド・ヌニェス(ドミニカ共和国)と対戦すると伝えられた。しかしPBCが思惑通りに世界タイトルマッチを組めなかったなどの理由によりヌニェス戦はキャンセル。新たに今週土曜日17日(日本時間18日)米フロリダ州オーランドでフェザー級ランカー、ロニー・リオス(米)と対戦する展開になった。

 その状況は上記の記事で触れたが、訂正しなければならなくなった。オーランドのイベントのメインで挙行される予定だった元IBF世界スーパーミドル級王者カレブ・プラント(米)とトレバー・マカンビー(米)の一戦がカネロvs.ベルランガの前座カードへシフト。フルトンと対戦予定だったリオスも方向転換。WBA世界フェザー級王者ニック・ボール(英)に挑戦することになった。ボールvs.リオスは10月5日、ボールの地元リバプールでゴングが鳴る。

ネリに2-1判定負け

 一人取り残されるかたちとなったフルトンだが、捨てる神あれば拾う神あり。プラント同様、カネロ戦のカードに起用される運びとなった。フェザー級初陣となるフルトンだが、すでにWBA2位、WBO8位にランキングされている。

 「長い時間がかかったけど、リングに戻れるのがうれしい。ジムでトレーニングを欠かさなかったし、ボジー・エニスから新しいテクニックを学習している。それを世界のファンに披露するのが待ちきれない。しかも素晴らしいイベントに立てる。2階級制覇に向けて実力を磨いている」

 軽量級を代表するテクニシャン、フルトンは復帰する心境をこう語っている。ボジー・エニスとはIBF世界ウェルター級王者ジャロン・エニス(米)の父。トレーナーとして再出発するフルトンを指導している。フィラデルフィアを代表する2人のボクサーの前途はボジー氏の両肩にかかっているといえる。

 対戦相手のカストロ(30勝14KO2敗)はフルトンと同い年の30歳。幼い頃にメキシコから家族と米国アリゾナ州フェニックスに移住して育った。2敗はルイス・ネリに2-1判定負け(2022年2月)、フルトンとスーパーバンタム級2団体統一戦で激戦を繰り広げた現WBCフェザー級暫定王者ブランドン・フィゲロア(米)に6回TKO負け(22年7月)したもの。ネリ戦は初回にダウンを奪われたが、その後スコアカードを拮抗させてフルラウンド戦った。今年4月の最新戦まで3連勝している。

ルイス・ネリvs.カルロス・カストロ(写真:Ryan Hafey)
ルイス・ネリvs.カルロス・カストロ(写真:Ryan Hafey)

 「フルトンとの試合は私のベストなものを引き出してくれるだろう。私は約束できる。こんなチャンスはめったに訪れるものではない。ボクシング人生をかけて戦う」

 フェザー級でWBC5位を筆頭にWBA7位、WBO13位を占めるカストロは強敵を前に意気込みを明かす。身長170センチ、リーチ178センチはフルトンの169センチ、179センチとほぼ同格だ。

 サバイバルするのはフルトンか、それともカストロか?“クールボーイ・ステフ”(フルトンのニックネーム)は井上戦でズタズタにされたプライドの回復に努める。カストロがイージーな相手でないことがスリル感を増幅させる。他方で、この試合を飾ればフルトンには意外に早くフェザー級王座挑戦のチャンスが巡ってくるだろう。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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