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その解説力と采配。安永聡太郎のサッカーに注目すべき理由

杉山茂樹スポーツライター

サッカー解説者と監督は、人材の供給源が元サッカー選手という点で一致する。例外はないわけではないがごく僅か。サッカー解説者は、これから監督を目指すその予備軍的な人材、あるいは現在は休養中ながら、密かに監督復帰を目指している人によって、ほぼ占められている。

テレビ解説を含めた評論業、すなわち、サッカーの語り部を、専業にしている人の数は少なそうだ。一時的ではなく、長く続けるその道のプロになって欲しいとは視聴者の思い。しかし、この人に監督をやらせてみたら面白いと思わせる人材を、一方で求めている。その評論を通して、知らず知らずのうちに監督としての力量を探っている。

JクラブのGMが、どのような基準で監督選びをしているのか定かではないが、僕ならその評論性を、真っ先に評価の基準に据えるだろう。日本代表の監督探しにも、その考えは十分適用できる。テレビ解説者は代表監督候補でもあるのだ。飛躍のチャンスだと見ているが、実際に、それを踏み台にした人は多くいない。探す側に見る目がないのか。候補者が少ないのか。

監督が明晰な頭脳が求められている職業だとすれば、喋りも知的なムードを感じさせる必要がある。言い換えれば、“らしい口調”の解説者は、それだけでポイントが高くなる。問われているのは中身のはずだが、優劣の基準は、ともすると雰囲気になりがちだ。

安永聡太郎はそうした意味で、少し損をしていた。言葉に力はあるが、ソフトで滑らかな語り口ではない。知的で、らしい口調かと言われればノー。スペインリーグの解説者になりたての頃、将来の監督像をイメージしにくい存在だった。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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