濃厚なのに後味すっきりな「栗しぼり」ブリュレされた香ばしさが珍しいけど見事にマッチした老舗の秋菓子
日本人というものは実に繊細かつ豊かな感性を備えているなぁとつくづく思うのです。その理由はいくつかあるのですが、ひとつに「十三夜」があります。
先月迎えた十五夜は中国の中秋節をもとに伝来した風習ですが、十三夜は日本独自のもの。しかも、十五夜は満月なのに対して十三夜は満月ではないのです。それでも古の人々は、十五夜に引けを取らない程美しいと愛で、お月見を楽しんでいたのです。
もうひとつ。十五夜はこれから迎える豊穣の秋を願い、その時に収穫が始まる里芋などをお供えする「芋名月」と呼ばれますが、十三夜は収穫された秋の恵みに感謝をしつつ、旬の味覚である栗や小豆などをお供えするため「栗名月」や「豆名月」とも呼ばれます。
そのため、あちこちの和菓子屋さんでは栗の和菓子が勢揃い!その中でもちょっと珍しい栗のお菓子「栗しぼり」を、豊洲市場にお店を構える老舗「茂助だんご」さんにて発見致しましたのでご紹介。
ツン、と上向きの端正な形の栗ですね。もちろんその姿形も大変魅力的だと思ったのですが、どこか焼き栗を彷彿とさせるようでもある大胆な焦がし具合にも着目。
国産栗のみで作られた栗のペーストに白玉粉を合わせた生地を栗の形に整え、バーナーでブリュレ(炙ること)しているとのこと。確かに栗の和菓子に焼き目をつけることで香ばしさや温もりを表現することもありますが、ここまでしっかりと炙った栗のお菓子にはなかなかお目にかかれません。
しかも、これがまた焦げ臭いというわけではなく、より一層深みのある華やかな香ばしさを演出しているのも驚き。自然な色味を残したままの栗の芳香とねっとりと、そして舌先をぎゅうっと引き締めるほどの濃密さを備えた口溶け。そこに焼き色が仄かなアクセントとなり、より一層鼻から抜ける風味に奥行を加えています。
また、真挽粉(蒸かした糯米を乾燥させてから粉砕して煎ったもの)のぷちっとした食感とそっと添えられた黄色い楓のような葉がより一層深まる秋を食感と色彩豊かに表現していますね。
栗のお菓子というとお薄やモンブランのような洋菓子は珈琲をあわせたくなりますが、こちらは焙煎した玄米茶やほうじ茶などがよく合いそう。上品すぎずほっこりとした栗のお菓子はおやつにも大歓迎ですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<茂助だんご>
公式サイト(外部リンク)
東京都江東区豊洲6-6-1管理施設棟 3階
03-6633-08736時~15時(喫茶 6時~ラストオーダー 14時30分)
定休日 水曜・日曜・祝日(変動あり)