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急激な円高でiPhoneは安くなるか

山口健太ITジャーナリスト
現行モデルの「iPhone 15」(アップルのプレスリリースより)

7月から8月にかけて、為替相場では1ドル=160円を超える円安から一時140円に迫る水準まで動いた急激な円高が話題になっています。

これまでの円安を象徴する事例として、日本ではiPhoneの値上げが注目されてきました。それでは、今回の円高によって安くなる可能性はあるのでしょうか。

新型iPhoneの価格はどうなる

為替の変動に対してアップルはさまざまな対策をしているとみられますが、これまで続いてきたような一方的なドル高・円安には限界があります。

たとえば10万円のiPhoneを販売した場合、1ドル=100円なら1000ドルの収入になるのに対し、1ドル=160円では625ドルにしかならないため、日本での価格を値上げせざるを得なくなります。

現行モデルのiPhone 15世代はどうなっているのでしょうか。日米の価格を「税抜」で比べてみると、為替レートは単純計算で1ドル=142円強となります。

(厳密にはiPhone 15とiPhone 15 Plusのアンロック版は30ドル高く設定されていますが、ここでは考慮していません)

iPhone 15が発表された2023年9月13日以前に為替レートがこの水準だったのは8月8日ごろです。他の製品と同様に、アップルは発表の数週間前に日本での価格を決定していると思われます。

このことから、「iPhone 16」とみられる新型iPhoneについても、8月前半の為替レートを基準に日本での価格が決定される可能性があります。

ここ最近、為替レートは乱高下することが多く、予想は難しいのですが、原稿執筆時点での1ドル=147円を基準にすると、米国で799ドル(税抜)の製品は日本で11万7453円(税抜)、税込なら12万9198円になります。

価格の下4桁は4800または9800に丸められることから、日本でのiPhone 16の価格は12万9800円となり、iPhone 15の12万4800円から5000円の値上げと予想できます。

円高になったのにまた値上げか、と思ってしまうところですが、もし1ドル=160円のままだったとしたら価格は13万9800円となり、1万5000円の値上げになるところでした。

そういう意味では、為替レートが2023年夏に近い水準まで戻ってきたことにより、iPhoneの大幅な値上げは回避できる、というのが現実的に期待できるラインといえそうです。

ただし、この予想には「米国におけるiPhoneの価格が据え置きだった場合」という前提が含まれています。

米国では大統領選の争点になるほど物価上昇が続いているにもかかわらず、iPhoneの主力モデルの価格は2020年の799ドルから変わっていません。インフレを考慮すると、相対的には毎年「安く」なっている計算になります。

もしアップルが米国での値上げに踏み切り、iPhoneの主力モデルが899ドルになったと仮定すると、日本での価格は14万4800円となり、2万円程度の値上げを覚悟したほうがよさそうです。

追記:
9月9日(米国時間)に発表されたiPhone 16の価格は、日米ともに据え置きとなりました。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f21e6a91bf34aa1b131b6b90e0d01ac27bdabf3f

旧モデルや関連製品の価格にも注目

現在の為替レートは2023年夏と大きく変わらない水準とはいえ、旧モデルや関連製品の価格については期待できる面もあります。

たとえば第10世代iPadの場合、2024年5月には米国で100ドル値下げされたのに対し、日本では1万円の値下げにとどまりました。米国での値下げの一部を円安が相殺してしまった形です。

しかし為替レートが戻ってきたことで、新製品の発表時に旧モデルが米国で値下げされる場合、日本での価格によりストレートに反映されることが期待できるというわけです。

2024年に登場した製品にも注目です。5月に発表されたM2搭載iPad Airの価格は1ドル=151円、M4搭載iPad Proは1ドル=155円程度で設定されているとみられ、いまとなっては数パーセントほど割高に感じます。

同様に、6月発売のVision Proの場合は1ドル=156円程度とみられ、日本での価格が税込59万9800円と上振れしたことが話題になりました。現在のレートで換算すると、5万円ほど安くなってもいいのに、と思うところです。

アップルは発表イベントのタイミングで関連製品の価格を改定することがあります。新型iPhoneの登場にあわせて値下げされる製品があるかどうかも注目ポイントになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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