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PayPayで他社クレカ 手数料がかかっても使いたい?

山口健太ITジャーナリスト
今後も他社クレカの利用が可能に(PayPayのWebサイトより、筆者撮影)

「2025年1月まで」と期限が決まっていたPayPayにおける他社クレジットカードの利用について、新たな発表があり、話題になっています。

2025年以降の他社クレジットカードの利用について- PayPayからのお知らせ

PayPayからの発表。2025年夏以降に新たな利用方式を検討しており、それまでは現在の利用方式で使えるという

この発表によれば、2025年夏以降は「手数料」が利用者負担になる可能性があるといいます。手数料がかかったとしても他社クレカを使いたい場合はあるのでしょうか。

他社クレカ手数料 利用者負担になる可能性も

PayPayの支払い時には、多くの人が「PayPay残高」や「クレジット」(PayPayカード)を利用していると思われますが、他社のクレジットカードを紐付けることもできます。

実質的にはそのクレジットカードで支払うのと同じことではあるものの、PayPayにしか対応していないお店や、クレジットカードを持っていない場合でも、PayPayを通してクレカ払いができる便利な仕組みといえます。

事の発端は2023年5月の発表です。他社クレカを利用不可にすると発表したことで反対の声が相次ぎ、これを重くみたPayPayは当初の予定を撤回し、見直しを発表するに至りました。

【更新】クレジットカードの新規登録および利用の停止について - PayPayからのお知らせ

事の発端となったPayPayによる2023年5月の発表。当初は2023年8月に利用不可となる予定だった

今回の発表により、2025年夏以降の「新たな利用方式」の提供開始までは現状維持となるものの、問題はその後でしょう。

PayPayの利用者がPayPayで支払うと、PayPayの運営会社には加盟店から「決済システム利用料」が入ってきます。ただ、そこで他社クレカが使われた場合、その手数料はPayPayが負担することになります。

この手数料について、PayPayは「2018年10月のサービス開始以来、他社クレジットカードによる決済サービスにおいて、各国際ブランド等が定めている手数料が、決済システム利用料を上回っている状態が継続」しているとしています。

要するに「他社クレカを使われると赤字になる」という主張になりますが、PayPayにそこを強調されても、素直に受け取れない部分はあります。

というのも、PayPayを始めとするキャッシュレス決済を導入する側である加盟店は、他の部分でのコストダウンや、商品価格への上乗せなどの経営努力によって、手数料負担をカバーしているからです。

またPayPayは、他社クレカを利用不可とする理由付けとして、他社クレカを利用する人がほとんどいない(1%未満との報道もある)点を挙げてきました。利用者がほとんどいないのならば、「赤字」といっても大した額ではないと考えられます。

それはさておき、他社クレジットカードを利用した場合に発生する決済手数料を「利用者負担」とする仕組みは、実現可能なのでしょうか。

一般に、国内のクレジットカードにおける加盟店向けの規約ではこうした手数料の上乗せ(サーチャージ)は認められておらず、現金など他の支払い手段と同じ価格で提供することが求められているようです。

一方、電子マネーのチャージなどで、手数料を上乗せするサービスは存在します。たとえばJAL Payでは、JALカードなどを除くVisaブランドのクレジットカードからチャージする場合、2.75%の手数料がかかります。

JAL PayではJALカードなどを除くVisaブランドのクレジットカードからのチャージに2.75%の手数料がかかる(JAL PayのWebサイトより)
JAL PayではJALカードなどを除くVisaブランドのクレジットカードからのチャージに2.75%の手数料がかかる(JAL PayのWebサイトより)

こうした手数料の上乗せができるかどうかは、契約内容によると考えられます。PayPayが「国際ブランド(Visa・Mastercard)との協議次第で」と説明しているのは、そうした背景がありそうです。

手数料がかかっても他社クレカを使いたい?

実際にPayPayで他社クレカを紐付けて使うには、いくつかハードルがあります。

まず、ポイントなどの特典は対象外となります。東京都による最大10%還元のようなキャンペーンでは、PayPay残高やクレジットがポイント還元の対象となり、他社クレカの利用は対象外です。

実際に他社クレカで支払おうとすると、ポイントが付与されないことを示すメッセージが表示されます。

PayPayの支払いに他社クレカを利用しようとすると、「引き止め」のメッセージが表示される(筆者撮影)
PayPayの支払いに他社クレカを利用しようとすると、「引き止め」のメッセージが表示される(筆者撮影)

また、他社クレカをデフォルト設定にする機能がなく、支払いのたびに他社クレカを選択する必要があるのも地味に不便な点です。

こうした困難を乗り越えてでも他社クレカを使いたい理由としては、ポイ活においてPayPayから直接もらえるポイントよりも、他のサービスから間接的にもらえるポイントのほうが大きい場合があります。

また、家計簿アプリとの連携や会社の経費精算など、特定のクレカで支払うことで大きく手間を省けることがあります。そこにポイントを上回るメリットを感じる人もいるでしょう。

なるべくなら、手数料が利用者負担とならないような方式を期待したいところですが、仮に利用者負担となった場合は、他社クレカを利用するメリットと手数料のコストを天秤にかけて検討することになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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