書く前に知っておきたい。遺言書を書いてもムダになるかもしれない3つのパターン
遺言書とは、自分の財産をどのように分けるか、祭祀はどうするか、などを決める最後の自分の意思表示です。
遺言書を書いておけば一安心と思っている方は多いかもしれません。しかし必ずしも遺言書に書いた通りになるとは限りません。
今回は遺言書通りにならない3つのパターンをまとめました。
財産を譲りたい相手が先に亡くなってしまう
生前、遺言書にこのように書いていたとします。
『全財産を長男Aに相続させる』
しかし残念なことに自分より長男Aが先に亡くなってしまいました。しかし、遺言書を書き直すのを忘れていました。
この場合、遺言書は無効となってしまいます。
長男Aに子供がいても、子供達が遺言書に書いてある財産を相続することはできないのです。
このようなことにならないためには、第2順位の相続人を決めておく必要があります。
『全財産を長男Aに相続させる。長男Aが先に亡くなった場合は長男の子Bに相続させる』
このように、予備的に自分の財産を相続させる人を追加して決めておくことで、遺言書が無効になるリスクを軽減できます。
他の相続人から遺留分を請求されてしまう
たとえ、遺言書の内容が有効だとしても、その内容が、他の相続人の遺留分を侵害している場合には、他の相続人から遺留分を請求される可能性があります。
例えば先ほどの『全財産を長男Aに相続させる』という遺言を例にみてみましょう。
AにはCという弟がいたとします。弟Cは被相続人の二男にあたるため遺留分が発生します。
もし、弟Cがこの遺言書に納得せず遺留分を請求した場合には、長男Aは遺留分に該当する金銭を支払わなければならなくなります。
遺言書を書く場合、遺留分が請求される可能性があることを承知して『全財産を長男Aに相続させる』と書くことは可能です。
兄弟間の争いを避けたいとお考えなら、Cの遺留分を考慮した遺言書の内容に変更してもよいでしょう。
相続人全員で遺産分割をしてしまう
実は、遺言書があっても相続人全員の同意があれば遺産分割協議をしても良いというルールがあります。
そのため、遺言書の内容と全く違う遺産分割がされてしまう可能性があります。
また、自宅に遺言書を保管してあったにも関わらず、誰もその存在に気付かないまま遺産分割協議をしてしまうことがあります。
遺言書を書いても発見されなかったら無意味です。このような事態を避けるため、誰かに伝えておくか、公正証書遺言にするか、法務局の遺言書保管制度を利用しましょう。
それでも遺言書は残しておくべき
せっかく遺言書を書いても、ああなったどうしよう、こうなったらどうしよう、と心配は絶えないかもしれません。
しかしそれでも相続人としては亡くなった方がどんな気持ちでその遺言書を書いたのか、その思いを感じることができます。
だから遺言書が無駄になるということはありません。
自分の相続財産はこのようにわけてほしい、特定の相手に遺贈したい、そのようなお気持ちがある場合は、遺言書にその内容を残しましょう。