世界的な名店の秋メニュー 実力派シェフによる“他では食べられない料理”とは?
食欲の秋
おいしい食材がたくさん登場する季節といえば秋。美食の代表であるフランス料理でも様々な食材が用いられ、非常に充実します。
秋の食材をふんだんに用いたフレンチを体験できるのが、ANAインターコンチネンタルホテル東京「ピエール・ガニェール」です。
世界的にレストランを展開するフランス料理界の巨匠、ピエール・ガニェール氏がプロデュースするモダンフレンチで、2010年に開業して以来、ミシュランガイドで二つ星を獲得し続けています。エグゼクティブシェフを務めるのが、オープン時から腕をふるう赤坂洋介氏。ガニェール氏からの信頼も非常に厚く、2011年にエグゼクティブシェフに就任しました。
この赤坂氏による秋ならではの味覚を堪能できるのが、ディナーコースの「Pierre Gagnaire Tokyo」(37,290円)。秋メニューは、ディナーは2022年9月14日から、ランチは9月16日から始まり、12月中旬まで提供されます。
赤坂氏による「Pierre Gagnaire Tokyo」を詳しく紹介していきましょう。
ウェルカムフード
木製プレートで提供される最初のウェルカムフードは5品。和の要素が存分に感じられ、食味も食感も、プレゼンテーションも全く異なります。
ピザ生地でつくられたスティックは梅干し風味で酸味が心地よいです。和牛のリエットのタルトレットにはトマトと黒オリーブを合わせて、上に紅芯大根のディスクをかぶせました。熱々の魚のムースのクロケットには、サフランを少し加えたグレビッシュソースが載せられています。ブリ・ド・モー、いぶりがっこ、海苔をシソで包んだ一品は独創的で新感覚。レンゲ型のスプーンの上にはサーモン、ミョウガを包み込んだローズマリーのジュレ、ディルの葉。ミョウガの鮮烈な香りが印象的です。
クロケットを最初に食べ、あとは好みで食べるとよいでしょう。
岩手産泳ぐホタテ貝
泳ぐホタテ貝のラメル生姜風味 蕪のジュレ バナナと酸味を効かせたラディシュ
牡蛎のアイスクリームを添えて
海藻の香る泳ぐホタテ貝のベニエ
岩手県のブランド帆立貝「泳ぐホタテ貝」を用いた2皿。1皿目はホタテの薄切りに生姜の香りをつけて。カブのジュレ、フローズンバナナ、ラディッシュのマリネ、レモンキャヴィアを合わせ、仕上げにカキのアイスクリームが載せられます。ホタテの滋味が引き立つような、様々な風味。2皿目はアオサノリを加えたホタテのベニエ。さっくりとした衣とホタテのやわらかさがよいコントラストです。フレッシュなホタテを食べてから、ホタテのベニエを食べるとよいでしょう。
カツオ / トム ド サヴォア / ウズラ卵のポーチドエッグ 緑オリーブのコンディモン
炙ったカツオにアボカド、チーズを合わせて、茹でたウズラの卵をトッピング。卵を崩し、卵黄を和えてから食べると、濃厚になってよりおいしくなります。周りにはオリーブのペースト。
京都産七谷鶏の燻製とムース 雲丹のクリーム スペッツリ
京都府の地鶏である七谷地鶏を用いた温前菜。燻製のムースの上にはスモークした鶏肉、さらにはフレッシュなウニ、シブレットをあしらいました。周りには濃厚なウニのクリームとカリカリにポワレしたショートパスタのスペッツリ。ウニの濃厚さが七谷地鶏の佳味とよいコントラストです。
ラングスティーヌ
ラングスティーヌのポワレ テール ド シエンヌ 天然キノコのフリカッセ 砂肝とハツを添えて
ラングスティーヌのグリエ / ナス / ゲヴェルツトラミネールの香るサバイヨン
ラングスティーヌの2品を提供。1品目はラングスティーヌのポワレ。オリジナルのミックススパイスでスパイシーな香りに。砂肝のコンフィ、ハツ(心臓)と面白い取り合わせです。その下にはたっぷりのキノコがあり、フランスからはハナビラ茸、ジロール茸、長野県からはホウキ茸、アナ茸。2品目はラングスティーヌのグラタンです。ナスとトマトを加え、ゲヴェルツトラミネールの華やかな香りがするサバイヨンソースをかけてこんがりと焼き上げました。
※キノコの種類は入荷状況によって変わる
鱗焼きにした甘鯛 アンディーブのサラダ 烏賊と生ハム ほうれん草の香るアンチョビのヴルーテ
カリカリっと鱗焼きにしたアマダイの下には、サクサクとした瑞々しいアンディーブ。ソテーしたイカと群馬県の生ハム、アンチョビとホウレンソウのヴルーテを合わせました。
カンポットペッパーの香るエゾ鹿のロースト 根セロリのピューレと根野菜 エスカルゴバターの香る真タコ
エゾシカのロース肉をマリネしてからじっくりと丁寧にローストしました。ポルト酒と赤ワインのソースが鹿肉に寄り添います。最高級と称されるカンボジア産ペッパーを用いて、心地よい刺激に。付け合わせは、根セロリのピューレ、白ニンジン、トピナンブール(キクイモ)、芽キャベツ。タコのエスカルゴバターのニンニク風味が食欲をそそります。
ピエール・ガニェールひらめきのデザート
全部で5品あり、最高の状態を味わってもらうため、最初に3品、次に2品が運ばれて来ます。
最初の3品はこちら。イチジクのローストに、タイムとレモンのピール、ハイビスカスのジュレ、メープルシロップのアイスクリームにフィユタージュ、カラメリゼしたピーカンナッツ。様々な味わいがあり、甘味と酸味のバランスが出色です。カクテルグラスに入っているのはライムのジュレにナシ、シャインマスカット、アロエ、黒タピオカ、ブドウのグラニテ。最後にシャンパーニュをかけて、よりフレッシュに。ニンジンとオレンジのデザートは、優しい甘味が印象的。ニンジンのフラン、ニンジンとオレンジのクリーム、グラチネしたフレッシュなオレンジ、ニンジンのチップとニンジンのベビーリーフを添えるなど、ニンジンとオレンジのポテンシャルが存分に引き出されています。
さらに続く2品は次の通りです。栗とマッシュルームのデザートは、里の滋味を生かした一品です。生クリーム、ビスキュイ、キノコのデュクセル、ラム酒風味の栗のムース。上にはマンゴーとキノコのメレンゲに、キノコのパウダーを合わせました。チョコレートと洋梨のデザートは相性抜群の構成です。洋梨のパルフェグラッセの下には洋梨のポワレとキャラメルサレがあり、リオレとチョコレートのソースが特徴的です。上には洋梨を象ったチュイール。リムに添えられているのはライスのスフレとカカオパウダーです。
小菓子
最後のミニャルディーズは3品。
カボチャのムースには、ココナッツロング、カラメリゼしたパンプキンシードを載せて。ミルクチョコレートにはリンゴ、カキ、ザクロのジュレ、テュミット胡椒を組み合わせ、レモンバームをトッピングしました。タルトレットはダコワーズ生地で、プラリネとコーヒーのムース、赤いビーツのスライス、上にはクラッシュしたコーヒー豆をあしらっています。
料理にぴったりなワインペアリング
ソムリエの杉本康隆氏によるワインペアリング(18,645円)もオススメです。赤坂氏のクリエイティビティ溢れる料理にマリアージュするワインを選び出しました。
最初のシャンパーニュは「ジャン・ラルマン ブリュット レゼルヴ」。入手困難なレコルタンマニピュラン(小規模自家栽培醸造メーカー)のシャンパーニュで、モンターニュ・ド・ランス地区ヴェルズネイ村のグランクリュのブドウが使われています。熟成30か月以上、ドサージュ4g/Lと辛口なので、ウェルカムフードをつまみながら、喉を潤すのにちょうどよいでしょう。
ホタテに合わせられたのがブルゴーニュ地方の「ドメーヌ シルヴァン・ロワシェ ラドワ ブラン・ボワ・ド・グレション 2019」。シャルドネ100%で、複雑なアロマを有するので、様々な要素があしらわれたホタテのラメルとマッチします。カツオには赤ワインの「ティボー・リジェ・ベレール ムーラン・ア・ヴァン・レ・ルショー 2017」。ボージョレ・ヌーボーでも有名な品種ガメイ100%で、酸味があって軽やかです。カツオの鉄分とよく合っていながらも、さっぱりとした味わいで口中をさっぱりとさせてくれます。
ラングスティーヌにマリアージュされたのは「マルセル・ダイス グリュエンスピール 2010」。ゲヴェルツトラミネールを加えたソースが用いられていることから、ゲヴェルツトラミネールが使われたワインを合わせています。メインディッシュの鹿肉には「ドメーヌ ジョルジュ・ヴェルネ コート・ロティ メゾン・ルージュ 2015」をペアリング。シラー100%で、しっかりとしながらもほんのりスパイシーなので、鹿がもつ野性味にピッタリです。
デザートには甘口貴腐ワインの「シャトー レイモン・ラフォン ソーテルヌ 2004」や高級ポルト酒の「テイラーズ トゥニー・ポート 20年」などが提供され、最後まで贅沢なペアリングでした。
※ワインヴィンテージは変更になる場合がある
赤坂氏のこだわり
こだわりのメニューだけあって、メニューが確定したのは秋コースの開始直前となる9月上旬でした。8月半ばにメニューを考え始めましたが、秋の食材が手に入るようになってから、試作や味見をするのでギリギリまでかかったということです。
赤坂氏は、季節のコースを考える上で、次のことを意識しているといいます。
「最後までスムーズにお食事を楽しんでいただけるように、全体を通した流れを最も重視しています。全体のバランスを考えて食材を選び、味わいについては、さわやかで軽いもの、クリーミーで濃厚なもの、冷たいもの、温かいもの、そして食感の違いなど、次に進む料理の味わいをよりおいしく感じていただけるような味覚の流れを意識しています」
提供が開始されてから間もないですが、ゲストからの反応もよいということです。
「秋が感じられる料理でした」「ポーションがちょうどよかったです」「他には似たような料理はありません。ここでしか味わえない料理ですね」といった感想があり、皿数は多いながらも、ほとんどの人がおいしく完食しているといいます。
秋以降にはどのようなことを考えているのでしょうか。
「年末年始にはガニェールシェフが約3年ぶりに来日します。それに合わせてクリスマスやニューイヤー限定メニューを12月中旬から1月8日頃までご提供する予定です。特別なコースなのでお楽しみにしてください」