9月下旬で見納め!築83年、左沢線最後の木造駅舎 左沢線 羽前山辺駅(山形県東村山郡山辺町)
11日、JR東日本左沢(あてらざわ)線の羽前山辺駅が建替えられることが発表された。9月下旬に解体工事が始まり、11月上旬より新駅舎の建設に着手、来年春ごろに新駅舎が完成予定とされている。新駅舎は地元の山辺町で盛んな繊維産業にちなみ、「ニット」の網目をイメージした格子状のデザインとなる予定だ。無人駅となって事務室が不要となっているため、床面積は現在の約111平方メートルから約40平方メートルへと縮小される。
左沢線「羽前山辺駅」の建替えを行います(JR東日本ニュース)
建替えに伴い、9月下旬で役目を終える現駅舎は昭和15(1940)年11月に建てられたもので、今年で築83年を迎える。左沢線では最後まで残った木造駅舎で、当駅の建替えにより左沢線からは昔ながらの木造駅舎が消滅する。線内の他の駅にもかつては木造駅舎があったが、いずれも平成の間に改築されて姿を消している。
羽前山辺駅は大正10(1921)年7月20日、左沢軽便線の駅として開業。東村山郡山辺町の玄関口で、町名は「やまのべ」だが駅名は「やまべ」と読む。国名の「羽前」が冠されたのは北海道富良野市の根室本線「山部駅」との混同を避けるためだろう。
駅舎内には平成31(2019)年4月1日の無人化まで、山辺商業協同組合に委託された簡易委託の窓口があった。町では昭和61(1986)年11月1日より国鉄(→JR東日本)から乗車券販売業務を受託し、町直営で窓口を運営してきた。平成9(1997)年4月1日からは山辺商業協同組合に再委託していたが、駅舎の老朽化による安全確保が問題になり、耐震性の低い駅舎内に一日中常駐する従業員の安全を第一に考えた結果、窓口を廃止するという選択を取った。
窓口では普通乗車券・定期乗車券・新幹線特急券を販売していたが、乗車券の購入者も年々減少傾向にあり、こちらもまた窓口廃止の理由の一つではないかと思われる。ただ、筆者が平成31(2019)年3月5日に訪問した際には窓口で切符を購入する利用者を見かけており、少ないながらも需要はあったようだ。左沢線は東北のローカル線としては利用者の多い路線で、古い数字にはなるが羽前山辺駅も平成29(2017)年度の平均乗車人員は797人だった。このうち8割以上が定期利用者だったという。左沢線は来年春より寒河江以南がSuica利用可能エリアに組み込まれる予定で、新駅舎の使用開始と時を同じくしてSuicaを利用できるようになる。
ホームは島式一面二線で、駅舎とは跨線橋で結ばれている。東北地方でもバリアフリーの観点から跨線橋を廃止して構内踏切に切り替える駅が出てきているが、羽前山辺駅はどうなるだろうか。ホーム上には山辺町で生産が盛んなリンゴを模した駅名標も設置されている。
建替え工事に伴い、羽前山辺駅が姿を変えるまであと一か月足らず。左沢線最後の木造駅舎を見たいなら早めに行っておいた方がいいだろう。
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