“神のタン”や“長期肥育の和牛”を食べられる「日本焼肉」が誕生した納得の理由
日本焼肉とは
焼肉は牛や豚の肉や内臓にタレを漬けて、焼いて食べるという料理です。色々な部位が楽しめるということで、人気の高いジャンル。ただ、肉をメインに食べるということもあって、手が込んだり繊細であったりする料理を味わうのは難しいところです。
このような焼肉の常識を打ち破ったのが、2016年12月20日銀座にオープンした「日本焼肉 はせ川」。日本料理のコースに焼肉が見事融合した新たな業態で、大きな話題となりました。この好評を受けて、2019年4月3日には表参道でも開業。
そして、2022年6月1日に再び銀座でオープンしたのが、「日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店」です。
別亭がオープン
別亭と名付けられたように、これまでの「日本焼肉 はせ川」とは異なります。ライブキッチンスタイルで全てのメニューをカウンター越しにゲストの目の前で調理し、焼き上げまでをフルサービスで行う新業態です。
料理長を務めるのは日本料理と肉に熟練した山田幸隆氏、マネージャーは幅広いお酒の知識を有したソムリエでもある柴田宏史氏です。
新たな「はせ川」スタイルを堪能するには「水無月」コース(35,000円、サ込)がオススメです。どのような体験ができるのか、全てのメニューを紹介しましょう。
小吸物
山形 茶豆のすり流し 新順才
茶豆の風味がしっかりと感じられる冷たいすり流しで、ジュンサイの涼しげな食感も楽しめます。食物繊維で血糖値を上げないようにという配慮から最初に提供されました。
先附
余市産蝦夷バフン雲丹 ラトビア産フレッシュキャビア 純但馬牛の贅沢肉寿司 金箔を乗せて
濃厚なバフンウニに、赤身の旨味が詰まった但馬牛のモモ肉、さらにはキャビアと金箔をのせた寿司です。自分で海苔を巻いて食べるスタイルで、ウニと和牛の旨味が重なり合い、妙味が生まれます。
八寸
愛知 無花果ゼリー寄/白だつ胡麻浸し/千葉 活天然稚鮎天麩羅
オーバル型の織部焼で提供される八寸。水槽で泳いでいた千葉県検見川の稚鮎をカラっと揚げました。イチジクのゼリー寄せは涼しげで、白ダツ=白ズイキはシャキシャキとして胡麻の味わいもよく吸っています。
お造り
北海道 牡丹海老 三崎赤羽太 気仙沼鰹藁焼き
気仙沼のカツオは藁焼きにされ、香り高くなっています。北海道のボタンエビはとろけるように甘く、三崎のアカハタは品のよい旨味と弾力のある食感です。
和牛
兵庫 太田屋 三十五ヵ月肥育 神戸牛シャトーブリアン 厚切 淡雪塩 山葵
希少部位であるシャトーブリアンを厚切りで食べるという贅沢な一品。岩塩と米粉でつくった淡雪塩をたっぷりとかけました。長期肥育されているので脂のしつこさは感じられず、非常にやわらかくジューシー。
和牛
究極 神のタン 厚・薄切食べ比べ
神のタンとも呼ばれる、神谷商店の牛タンを厚切りと薄切りで食べ比べできます。最初に藻塩を軽くつけて厚切りのタン、次に味噌がのせられた薄切りのタンを食べるとよいでしょう。
冷野菜
山形 生マッシュルームと早採り野菜のサラダ オリーブオイルと塩昆布
若いうちに収穫したフレッシュな野菜に、生のマッシュルームをたっぷりスライスします。味付けはオリーブオイルと塩昆布で。
和牛
究極 神のハラミ 日向夏の香り
神谷商店のハラミは、ほどよい脂と凝縮された佳味。日向夏のピューレでよりさっぱりとしています。
和牛
兵庫 太田屋 三十五ヵ月肥育 神戸牛フィレ 薄切 粉唐墨と大根と共に
長期肥育された神戸ビーフのフィレは薄切りにして巻き、やわらかさと妙妙たる味わいを堪能できます。カラスミの香りと和牛香の相性も抜群です。
箸休
群馬 皮付玉蜀黍
皮やヒゲが付いたままのヤングコーンを蒸してから香ばしく焼きました。サクサクとした歯触り、やさしい甘味が秀抜です。
和牛
三重 長太屋牧場 四十三ヵ月肥育 特産松阪サーロイン 焼霜仕上げ 生胡椒
長期肥育の松阪牛のサーロインを炭火でしっかりと焼きました。BMS=ビーフ・マーブリング・スタンダード(脂肪交雑)は最高の12ですが、長期肥育と炭火焼きによって軽やかになり、妙妙たる深みのある味わい。和辛子と粒胡椒を添え、ピリッとしたアクセントです。
お凌ぎ
高知 うなぎ蕎麦寿司
ウナギの適度な脂と蕎麦の香り。上にはとろろがのせられ、喉越しがいいです。織部焼も非常に趣があります。
逸品
三陸 黒鮑と金沢 白海老真丈
食感のいいクロアワビにふっくらとしたシロエビの真丈を合わせ、添えられているのは、ナスとクロアワビの肝のソース。
和牛
気仙沼フカひれと黒毛和牛の共演 冬瓜
贅沢な食材の炊き合わせ。気仙沼モウカザメの尾ビレは、250グラムとたっぷりです。脂がのってやわらかい黒毛和牛のイチボを合わせ、旬の甘い冬瓜も。
食事
銚子 つりきんめ土鍋ご飯
料理長の山田氏は千葉県の外房で生まれ育ちました。キンメダイの身を加え、その出汁と鰹出汁、あら出汁で炊いたご飯です。信楽の名窯として知られる雲井窯の中川一辺陶氏による土鍋で炊いただけに、火の入り方にムラがなく、ふっくらと炊き上がっています。
氷菓子
静岡 天使音メロン プレミアムアイス 宮ザキ園の極上抹茶
糖度が18以上の甘い天使音メロンに、オリーブオイルがかけられたミルクアイスクリームを合わせました。抹茶は無農薬有機栽培を行う愛知県の宮ザキ園。
「日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店」の特長
素晴しい料理ばかりでしたが、改めて「日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店」の特長を挙げていきましょう。
最も重要な肉については、熟練のミートアーティストによる目利きで、鮮度、旨味、香りに優れた黒毛和牛を全国から仕入れています。野菜については、野菜ソムリエ上級プロが全国の農園を回り、独自のスタイルで体にやさしい野菜を厳選。
これら最高の食材を用いて、料理長の山田氏をはじめとして、都内の名店で研鑽を積んだ料理人がクリエーションを紡ぎ出しています。さらには、柴田氏など経験が豊富なソムリエによって、ワインはもちろんのこと、日本酒なども含めて、料理に相応しいお酒をペアリングしているのです。
空間にも言及しなければなりません。世界で最も注目されている陶芸アーティストのひとりである内田鋼一氏と、伝統的な技術と独創性を持ち合わせた左官職人の久住有生氏が初めて共演を果たしました。2人の著名なアーティストによって紡ぎ出されたダイニング空間は他にありません。
備前焼や織部焼などの味のある陶器、柾目杉膳のお盆、あしらいに添えられた紫陽花など、日本が薫る洗練された雰囲気をまとっています。
オープンに至った背景
日本料理と黒毛和牛の焼肉が見事に融合したファインダイニングでしたが、どのような経緯でオープンするに至ったのでしょうか。
同店を運営する、株式会社はせ川の代表取締役社長を務める古塚建一氏はこう述べます。
「和牛は日本が誇る食材です。訪日外国人は和牛を食べたいので、日本では鉄板焼や焼肉を食べに行きます。しかし、鉄板焼は洋風であることが多かったり、焼肉は韓国風であったりします。せっかく日本の食材を食べていただける機会なのに、それが日本料理ではないことを残念に思っていました」
そこから、日本料理と黒毛和牛の焼肉を融合させた日本焼肉という業態を開発し、冒頭で紹介したように、銀座と表参道に「日本焼肉 はせ川」をオープンしました。
古塚氏の狙い通り、日本焼肉という業態が訪日外国人や日本の消費者に受け入れられ、2店舗共に順調に伸びていきます。
そして、日本焼肉の次なるステップとして、アラカルトはなく、月替りのおまかせコースだけを提供する「日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店」が開業されることになったのです。
日本の文化を伝えたい
「日本の文化を伝えたいので、和牛はもちろんのこと、空間や器にも日本の様式をふんだんに取り入れました。ダイニングの壁やカウンター、トイレの壁までも左官で造っています。古物商の許可もとっているので、魅力的な日本の調度品も集めることができました。器は江戸切子、漆器、陶器などを取り揃え、灯りや花器にもこだわっています」
和の調度品を引き立てるために、あえてポイントでヨーロッパのアーム付きのライトを置くなどしてメリハリを付けているのも注目するべき工夫です。
和牛から調度品まで日本文化が体験できる「日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店」は、日本の様式美を伝えられる極めて貴重なファインダイニングであり、これからの「別亭」の展開に期待せざるを得ません。