若者のEU選挙離れ フィンランドの政治家に聞く
2014年のEU議会選で、18~24歳の若者の投票率が10%という異常に低い数字を記録した北欧フィンランド。
今年のEU議会選の投票日の直前、首都ヘルシンキで各政党に、次のことを聞いてみた。
*「EU議会選で党が重要視している政策は?」
*「低い投票率対策のために、あなたの党は若者とどのように話しているのですか?」
左翼同盟 党員ティーナ・アルぺさん
EU議会で重視する政策:気候変動、社会公平
「EU議会の影響力は大きい。フィンランド総選挙よりも重要な意味をもつかもしれない」と若者に伝える。
中央党 出馬するペッカ・プスケさん
EU議会で重視する政策:EUに残り、欧州各国の協力体制の維持
「気候変動や難民という大きな課題に向けて、EUがこれまで以上に重要な役割を果たす」ということを若者に伝える
緑の党 党員レーナ・ランダサルさん
EU議会で重視する政策:気候変動、平等、すべての人に公平なチャンス
若者にはこう伝える
- 将来を担う若者・子を持つ若い親に「これは未来のための一票だ」
- 「ひとりでできることは限られているかもしれないけれど、1票は大きな数字になる」
- 「嫌だから、嫌いだからといって投票しない。それは今の状況を何も変えない」
「毎日の生活を過ごすだけで、もう精一杯。政治のことを考える余裕がないのでしょう。でも、こういう人々こそ投票するべきです」とランダサルさんは付け加える。
スウェーデン人民党 党員アンナ・ストロムバルグさん
EU議会で重視する政策:環境、プラスチック廃止、人の自由な移動
若い人に興味を持ってもらえるように、議会選の立候補者の平均年齢を下げた。最年少は23歳
議員が若ければ、若い人は投票する?
フィンランド社会民主党 党員エイラ・ネバライネンさん
EU議会で重視する政策:気候変動、人権、テクノロジーの発達
「私たちの党では、28歳という若い人が出馬しているから、大丈夫!EU議会選の重要性を人々は理解していると思っています」
「EU議会に座っている政治家は別の国で政務をします。国会議員と違って、EU議会議員のことを、国民は身近に感じられないのでしょう」とも語る。
フィン人党 出馬するオッリ・コトゥロさん
EU議会で重視する政策:寛容な移民政策には反対
若者に選挙に興味を持ってもらうためには、「簡単なフレーズ」で話しかける。「投票しないということは、あなたの一票があなたの敵にまわったということです」など。
他にコトゥロさんはこのようなことも言った。
「長期的に見れば、EUはフィンランドの居場所ではないと思っています」
「欧州各国の右翼ポピュリスト政党とのネットワークは、今回我々の党の支持率を上げるのを後押ししてくれました」
※EU議会選前の極右ネットワーク連携を強化させたのはスティーブ・バノン氏ともいわれている「記者の葛藤 バノン氏を招待した北欧メディア祭に批判が殺到」
「議員はブリュッセルで仕事をしています。場所が遠いせいか、フィンランド人はEU議会の重要性をわかっていないとも感じますね」
国民連合党 党員コウスタ・ナッポレンさん
EU議会で重視する政策:EU経済。安全と防衛、オープンな国ではありたいが、フィンランドとロシアとの課題もある
「気候変動を何とかしたいと思っているなら、闘うのにベストな場所はEUだ」と若者に伝える
キーワードは気候変動と若い立候補者
「気候変動を本当にどうにかしたいと、自分の無力さを感じるなら、EU議会選で投票して。フィンランド国会よりも、EU議会にこそ変える力がある」
「若い候補者を党から出していれば、若者は投票するだろう」
このふたつが各党では要となっていた。
気候変動に関しては、EU議会のほうが影響力がある、というのは、分かる。
特に北欧では、スウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさんの抗議活動が早くに知られていたので、説得力もあるだろう。
ただ、「候補者を若くすれば、若者は投票するだろう」というのは楽観的すぎるような気もした(その勘違いで、こんなに若者の投票率が前回低かったのでは……)。
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他にもいろいろな党員と話したのだが、私の質問に対し、
- 「フィンランド国内で私たちが実行したい政策」
- 「EU議会選で私たちが実行したい政策」
このふたつが、ごちゃごちゃになっている党員が多いのが気になった。
フィンランドでは4月に総選挙が行われたばかり。すぐにEU議会選となったので、2つの選挙の政策を切り離せていない人が多かった。
それでは質問する側は当惑してしまう。私も何度か、「あの、それは国政のことですよね?」と突っ込まなければいけなかった。
総選挙が行われたばかりで、ボランティアで選挙活動をする党員たちも疲れていると、多くの人が認めていた。
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- EU議会選にはどのような影響力があるのか
- 投票して、なんの意味があるのか
- 私の生活が変わるのか?
EU加盟国の人々さえもよくわからない、EU議会の影響力。
フィンランドの人々のEU議会選への「?」は、選挙に関心をもたない日本の人にも通じるものがあるのだろうか。
Photo&Text: Asaki Abumi