『気候ストライキ』という教材 北欧ノルウェーで4万人が登校拒否
22日、ノルウェー全国各地で大規模な「学校ストライキ」が開催された。
現地では毎週金曜日になると、すでに若者たちが抗議運動をしていた。今回の一斉ストライキでは、普段は通学している若者たちも参加した。
主催したノルウェー自然青年団体によると、首都オスロでは1万5000人、全国70か所をあわせると、約4万人が学校に行かずに抗議運動に参加したとされる(人口530万人という小さな国で、この数はすごい)。
私はこれまでオスロ国会前でのさまざまな抗議活動を取材してきたが、今回ほど多くの子どもや若者が参加した、記憶に残るものはかつてなかったと思う。
政治や環境問題に、こんなにも熱心な子どもたちがたくさんいる。未来がどうなるかという不安よりも、若者たちからは希望と元気を私はもらった。
国会広場の様子を撮影中、周囲にいた国会議員らは、「すごいね、嬉しいね」と、若者の熱気に感動していた。
政治への関心が高い市民。オスロでの国会前デモは日常的な光景だ。
スウェーデンで16歳のグレタ・トゥーンベリさんがひとりで始めた抗議活動は、隣の国ノルウェーで、ものすごいスピードで広まった。
スウェーデン語とノルウェー語は似ている言語なので、英語メディアで話題になる前に、ノルウェーではすでに全国ニュースとなっていた。
リンダ(12)さんは、「気候変動は大事なこと。『いずれ』じゃなくて、『今』動かないといけないの」と取材で話す。
「学校の教室ではなく国会前にいるけれど、今日学んだことは何?」と聞くと、「気候変動のために何かするのが大事っていうこと。たくさんの人がここにいて、私はひとりじゃないんだって思った」
ソフィアさん(12)「将来、この地球で生きているのは私たちだから。環境のために、今何かしないといけないと思った」
ギンミさん(9歳、冒頭写真の少女)は、「地球を助けたいから、ここにいるの」と話す。「将来は、政治家になりたいかなぁ」
エーリックさん(9)は初めてストライキに参加した。
「未来の僕たちの孫のために、自然を守らないといけない」と話す。
傍にいたお父さんは、子どもがストライキすることを、「最高に誇りに思っている」と笑顔で答える。
「私自身も学ぶことが多い。学校にいるよりも、息子は今日たくさんのことを、ここで勉強したのではないでしょうか」。
今回の学校ストライキはノルウェーの社会の教科書に残りそうな規模だったと感じている。
登校拒否という抗議の形に賛成・反対の人も、誰もがなにかを考えるきっかけになったのではないだろうか。
若者からの抗議に、アーナ・ソールバルグ首相は「もっと行動すると、約束する」と国営放送局NRKに長文を寄稿した。
若者はこの日、教室に座っていただけでは学ぶことのなかったことを、感じただろう。
私も子どもの頃に参加してみたかった、特別な課外授業を見ることができた。
Photo&Text: Asaki Abumi