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「プーチン誕生日」と「習近平誕生日」への「金正恩祝電」から読み取る北朝鮮の中露との距離

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北京での中朝首脳会談とウラジオストクでの露朝首脳会談(労働新聞から)

 北朝鮮の伝統的友好国は長い間、1位が中国で、2位がロシアだった。しかし、今では順位が入れ替わり、1位がロシアとなっている。それを端的に裏付けるのが金正恩(キム・ジョンウン)総書記の両首脳宛ての新年の挨拶と誕生日の祝電である。

 「朝鮮中央通信」は例年1月初旬に金正恩総書記が外国の党首・国家元首及び個人に年賀状を出したことを伝えているが、今年は真っ先に名前が挙げられたのはロシアのプーチン大統領だった。それも「金総書記がロシア連邦のウラジーミル・V・プーチン大統領に新年祝賀の挨拶送った」と別格扱いで、電文の中身も紹介されていた。その他の首脳は2番目の習近平国家主席を含め全部名前だけが紹介されていた。ちなみに昨年は習主席、プーチン大統領の順だった。

 もう一つの証左は、両首脳の誕生日への金総書記の祝電である。

 今年は習近平主席の誕生日(6月15日)に祝電を送っていないが、昨年は習主席が古稀(70歳)を迎えたこともあって金総書記は祝電を送っていた。その内容は以下の通りである。

 △習近平総書記は党と国家、人民に対する高い責任感を持って長期間、中国特色の社会主義偉業に献身してきたし、全ての中国共産党員と人民の尊敬と信頼を受けている。

 △習近平総書記の精力的な指導によって中国共産党の権威が一層高まり、初歩的に富裕な社会建設の目標が立派に達成されたし、中国の総合的国力と国際的地位は非常に強化された。

 △習近平総書記が中国の党と人民を導いて社会主義現代化国家を全面的に建設する新しい道程で大きな成果を収めていることについて心から喜ばしく思う。

 △習近平総書記の指導があり、習近平総書記を中核とする党中央の周りに団結した中国の党と人民が居て、中華の繁栄実現を目指す闘いが必ず勝利するとの確信している。

 △中国共産党と中華人民共和国、中華民族を導く習近平総書記の重要かつ責任ある活動でさらなる成果があることを祈願する。最後に習近平総書記の健康と家庭の幸福を心から祈る。

 朝鮮中央通信は「最も熱烈な祝賀を送った」と伝えていたが、中朝の「親善」や「友好」あるいは北朝鮮からの「連帯」の表明もなく、実にあり触れた内容の祝電だった。

 一方、金総書記は古稀や喜寿でもないのに異例にも昨日、プーチン大統領の72歳の誕生日(10月7日)に祝電を送っていた。その内容は以下の通りである。

 ▲プーチン大統領が長期間、ロシアの繁栄とロシア人民の福祉増進のための重くて聖なる責務を担い、精力的かつ賢明な指導で国の自主権と安全、発展利益をしっかり守り、強いロシアを建設する道程で注目に値する成果を収めることで、ロシア人民の限りない信頼と支持を受けている。

 ▲今も去る6月19日、平壌でプーチン大統領と共に両国間の包括的戦略パートナーシップの樹立を全世界に宣布し、伝統的な朝ロ関係を自主と正義の実現を共通の理念とする不敗の同盟関係、百年の計の戦略的関係に昇格させ、親交を一層厚くしたその日を感慨深く振り返っている。

 ▲今後も続くプーチン大統領との対面と同志的絆は、新たな全面的発展軌道に乗った朝ロ友好と戦略的協力関係の万年の礎を一層強固にし、地域と世界の平和、国際的正義を守ることに積極的に寄与するであろう。

 ▲プーチン大統領がいつものように活力に満ちて偉大なロシアを勝利と栄光の道へ導くものとの確信している。

 ▲ロシア軍隊と人民の正義の偉業に対する我々の全幅的で私心のない支持と連帯を改めて確言する。

 ▲友人たちと共に平壌でプーチン大統領の誕生日を祝い、プーチン大統領の健康と活動でのさらなる成果を願って乾杯するとし、平壌は常にモスクワと共にある。

 祝電の長さ、中身、どれをとってもプーチン大統領宛ての祝電のほうが、心がこもっており、戦闘的である。何よりも最後の「平壌は常にモスクワと共にあるの一言こそが今の露朝関係の蜜月さを示していると言わざるを得ない。

(参考資料:異例のショイグ電撃訪朝! 大統領並みの扱いを受ける!!)

 金総書記はプーチン大統領に祝電を送る前日(6日)に中朝外交関係樹立75周年に際し習主席に祝電を送っていたが▲長い歴史と立派な伝統を有している朝中友好を変わることなく継承し発展させていくのは両国の根本利益に合致することである▲朝鮮の党と政府は、朝中友好・協力関係を新時代の要求に即して強化し発展させるために引き続き努力するであろう」と述べていたが、お決まりの「真の同志的友諠」とか「支持協調の高貴な伝統」などの言葉もなく、熱さは感じられなかった。

 欧米の目を意識し、ウクライナ戦争でロシアに軍事支援を行っている北朝鮮と距離を置こうとしている中国の対応への北朝鮮の不快感の表れとも言えなくもないが、取り沙汰されていた金総書記の訪中が実現しなかったのは今の中朝の不協和音が影響したようだ。

 金総書記 2018年に以来、訪中していない。2018年の年は3月、5月、そして6月と立て続けに中国を訪れ、習主席もまた、翌年の2019年6月に平壌を訪れていた。

 順番からすれば、本来ならば、中朝国交正常化75周年を機に金総書記が訪中する番であった。

(参考資料:中朝は不仲? 韓国のメディアに溢れる「不仲説」)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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