クルスクで北朝鮮軍はウクライナ軍と交戦中!?
ウクライナがロシアに越境し、占領したクルスク州の一部地域で11月11日にロシア軍の奪還攻撃が始まったと伝えられてから5日が経過した。
(参考資料:「ノルマンディー上陸作戦」開始時の兵力の3分の1が投入されたロシアの「クルスク奪還作戦」)
ウクライナのゼレンスキー大統領も米国務省もこの戦闘に「ロシアは北朝鮮兵士1万人を含む5万の兵力を投入している」と発表していたが、その後、北朝鮮兵士がクルスクのどこでウクライナ軍と交戦しているのか、戦死者、捕虜を含む北朝鮮軍の状況については何一つ正確な情報が伝わっていない。
そうした中、ウクライナのドミトロ・ポノマレンコ駐韓大使が11月14日、米国の「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)とのインタビューで、クルスクに投入された北朝鮮軍の現状について以下のように明らかにしていた。
▲北朝鮮軍との衝突はすでに発生している。クルスク地域にはすでに1万1000人の北朝鮮兵士がいる。北朝鮮兵士の数は1万5000人に増えるものと予想される。
▲北朝鮮はロシアのクルスク地域に軍事統制管理センターを設立し、そこに軍隊を配備している。
▲軍事統制管理センターには現在、3人の参謀将校と4人の旅団司令官を含む7人の将軍がいる。
▲北朝鮮軍の第93特殊部隊旅団はクルスク地方のレティッサ村の東1.5kmに配備されている。第1大隊と第3大隊には指揮所の72人の将校を含む合計876人の兵士がいる。
▲北朝鮮軍の参戦は戦争に根本的な影響を与えることはないが、ウクライナ軍の負担になることは確実である。
北朝鮮が派兵した兵士の中に特殊部隊がいることは韓国国家情報院「国情院」も確認しているが、「第93特殊部隊旅団」という部隊の名称が明らかにされたのはこれが初めてである。
その一方で、ウクライナ国家安全保障・防衛会議傘下の偽情報対策センター(CDC)のアンドリー・コバレンコ所長は11月15日、同じ「RFA」とのインタビューで北朝鮮軍がロシアの戦闘位置に配備されているものの「突撃作戦(assault operations)には参加していない」とも発言している。
コバレンコ所長によると、北朝鮮の兵士は突撃歩兵(assault infantry)としては使用されておらず、現在「無人機の操作と迫撃砲の取り扱いの訓練を受けている」とのことである。
コバレンコ所長の発言どおりならば、北朝鮮の兵士はまだウクライナ軍とは交戦状態に至っていないことになる。
ゼレンスキー大統領は11月11日に「我が軍が5万人近い敵軍を防止している」と述べ、また国務省のヴェダント・パテル副報道官も3月12日の定例記者会見で北朝鮮軍がクルスク地域での戦闘作戦に「参加し始めたことを確認した」と発言していた。韓国の「国情院」も翌13日、ロシアに派兵された北朝鮮軍が「戦闘に参加している」と発表していた。
コバレンコ所長は北朝鮮軍がクルスク地方でのロシア軍との戦闘作戦に参加したとの米韓当局の声明について「北朝鮮軍が戦闘に従事していることは確認しているが、彼らは攻撃、突撃歩兵としては参加していないということだ」と説明している。
「暴風軍団」傘下には4個の歩兵旅団、3個の海上狙撃旅団、3個の航空陸戦兵旅団などの旅団がある。今回は派遣された4個旅団(約1万2千人)は歩兵と狙撃旅団で混成されていると推測されていた。
ポノマレンコ大使は「RFA」とのインタビューで「ウクライナ政府代表団が近々、訪韓し、韓国当局と会う予定だ」と、述べていたが、ウクライナ政府が韓国にミサイル防衛システム、レーダー、対ミサイル及び無人機攻撃機の供与を求めていることを隠さなかった。
大使は2022年4月に京畿道城南市板橋(ソンナムシ・パンギョ)にあるミサイルを製造する韓国の防衛産業会社「LIGネクスワン」を訪問する予定だったが、取りやめた経緯がある。
「LIGネクスワン」はウクライナが要望している韓国が誇る中距離地対空ミサイル「天弓」と携帯用地対空ミサイル「新弓」、携帯用対戦車ミサイル「ヒョン弓」などを生産している防衛産業会社である。
(参考資料:ウクライナ戦争への北朝鮮派兵の「虚実」 何が本当で何がフェイクか? 10件の情報を検証する!)