異例のショイグ電撃訪朝! 大統領並みの扱いを受ける!!
プーチン大統領の側近であるロシア連邦安全理事会のセルゲイ・ショイグ書記長が9月13日、北朝鮮を電撃訪問していた。あっと驚く、電撃訪朝である。
ショイグ書記長はウクライナ戦争最中の昨年7月に国防相の時に一度訪問している。この時は北朝鮮が「戦勝記念日」と称している7月27日の朝鮮戦争停戦協定70周年の祝賀行事への出席という大義名分があった。しかし、今回はそうした大義名分もない。
また前回は、ショイグ訪朝直前に北朝鮮から「我が国を訪問する」との予告があったが、今回はそれもなかった。さらに、前回は2泊して帰国していたが、今回は日帰りで、金正恩(キム・ジョンウン)総書記と会うと、慌ただしく帰国した。
ショイグ氏は平壌に到着すると、直ちに金総書記が待っている場所に直行し、ロシア側の通訳を含め随行員を誰も同席させず会見していた。また、平壌を出発する前にも再度、金総書記を訪れ、話し合っていた。
最も驚いたのは、金総書記が自分の車にショイグ氏を乗せ、平壌空港まで送迎していたことだ。
先代も含め北朝鮮の指導者が大統領でもない外国の要人と1日に2度も会うことも、空港まで見送ったこともかつて一度もなかった。金総書記の極めて異例な厚遇は北朝鮮にとっても「ショイグ訪朝」がいかに重要な出来事であるかを物語っている。
今朝の北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」によると、席上、ショイグ氏はプーチン大統領のメッセージを伝え、これに金総書記は謝意を表したとのことだが、メッセージの中身については触れられていなかった。
同通信は両者の間で「両国間の戦略対話を引き続き深化させ、相互安全利益を守るための協同を強化していく問題と、地域および国際情勢に対する幅広い意見交換が行われ、上程された問題に関して満足した見解の一致を見た」と伝えていただけで、具体的に何が話し合われ、何について「満足した見解の一致を見た」のか、詳細については明らかにされていなかった。
しかし、奇しくもショイグ氏が到着した日に北朝鮮外務省対外政策室長の名で出された談話を読むと、ショイグ氏の緊急訪朝の理由をある程度窺い知ることができる。
「NATOと代理勢力を反ロシア対決へ煽り立てる米国こそ欧州が直面した重大脅威である」と題する談話には以下のようなことが書かれてあった。
▲米国はロシアに戦略的敗北を与えようとする一念の下でウクライナに「エーブラムス」戦車、F16戦闘機、「ATACMS」長距離ミサイルをはじめとする殺人装備を系統的に渡しながら罪のない民間人被害と事態の長期化を招いている。
▲米国は欧州地域にロシアを狙った長距離ミサイルを配備することを公約し、NATO主導の反ロシア戦争演習を次々と行ったのに続けてロシアの縦深地域に対するウクライナの長距離兵器使用禁止措置を解除する企図をさらけ出しながら欧州全域に残酷な戦乱をもたらしている。
▲国際社会は自分らの覇権利益実現のために欧州の安保をそっくり質に置いて軍事的対決策動に狂奔している米国の無分別な振る舞いを許してはならず、団結した力で地域の平和と安定を守っていくべきであろう。
▲我々は今後も帝国主義の覇権政策と強権を粉砕し、主権守護と公正な多極世界建設のために邁進しているロシア人民の正義の偉業を変わることなく支持、声援する。
一言で言えば、欧米がロシアの領土を攻撃できる巡航ミサイル「ストームシャドー」や長距離ミサイルを供与することによるウクライナ戦の新たな事態に備えた北朝鮮の対露武器支援及び「共通の敵」である米国への共同対応が今回のショイグ訪朝の目的であったようだ。
北朝鮮からの武器供給はこれまでに射程17kmの152mm自走砲や射程20kmの120mm放射砲、それに北朝鮮版「イスカンデル」と称されている射程600kmの戦術誘導ミサイル「KN-23」がすでに供給されていると伝えられている。
北朝鮮は今回、これに加え、今年3度も試射を重ねた射程60~65kmの240mm砲やショイグ氏の平壌到着前日に金総書記の立ち会いの下、試射した射程約400kmの600mm砲多連装ロケットを供与する可能性が大だ。この600mm砲は世界で最も大きな砲で、短距離弾道ミサイル並みの破壊力を持っている。
北朝鮮には移動式発射台から発射される長距離巡航ミサイル(射程1500~2000km)や無人機などもあるが、まだ輸出できる状況にはなく、今直ぐに供与される可能性はなさそうだ。しかし、今後、完成すれば、ロシアに輸送されることは間違いない。
両者の間では武器供与の他に日本海での露朝合同海上演習やロシアの対北経済援助など北朝鮮への見返りについても当然話し合われたものとみられるが、欧米にとって最も気になるのは労働者を装った北朝鮮の「派兵」が議題の俎上に乗ったかどうかである。
ロシアから求められれば、6月のプーチン大統領の訪朝の時に交わした「露朝包括的戦略パートナーシップ」に則り、北朝鮮が「援軍」を送るのはベトナム戦争や第4次中東戦争、シリア内戦などに介入した過去の前例からしてあり得る話である。