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ホワイトハウス記者会見、直後の視聴190万回!BTSがもたらすアジア系差別問題への効果は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ジャン-ピエール報道官と定例記者会見の壇上に現れたBTS。(写真:ロイター/アフロ)

31日、BTS(防弾少年団)がホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領との会談に先立ち、記者団の前でスピーチをした。

アメリカでは特にコロナ禍以降、憎悪犯罪(ヘイトクライム)や、アジア系をターゲットにした暴力や嫌がらせが急増している。そんな中、5月はAsian American and Pacific Islander Heritage Month(AAPIH、アジア・太平洋諸島系アメリカ人の文化遺産継承月間)であり、各地でさまざまな啓蒙活動や差別撲滅イベントが行われてきた。その最終日の特別ゲストとして白羽の矢が立ったのが、アメリカのみならず世界的な大スターのBTSというわけだ。

BTSはこの記者会見後、頻発するヘイトクライムや外国人排斥問題について、バイデン大統領と意見交換の場を持ったようだ。

BTSのメンバーは午後2時半過ぎ、全員が黒いスーツとネクタイ姿で、カリーン・ジャン-ピエール(Karine Jean-Pierre)新報道官と共に定例記者会見の壇上に現れた。そして冒頭で1人ずつスピーチをした。

リーダーのRMさんは流暢なアメリカ英語で、「今日はホワイトハウスに招待され、反アジアンヘイトクライム、アジア系の一体化そして多様性といった重要な問題について話し合うことができて光栄です」と挨拶した。また「アーティストとして(これらの問題について)いったい何ができるかを考えさせられ、それを話す重要な機会をもらった」とし、バイデン大統領に感謝の意を述べた。

ほか6人のメンバーもそれぞれが「違いは間違いではない。心を開き、違いを受け入れた時に平等というものは訪れる」「私たちが今日ここにいるのは、世界中にいるそれぞれ違った国籍でさまざまな文化や言語を持つARMY、ファンのおかげだ」「今日という日が、一人一人が互いに価値ある者として尊敬し合い、理解し合う第一歩になることを望んでいる」などと述べた。7人中6人は韓国語だったため、最後にまとめて英語の通訳が入った。

BTSはとにかくアメリカですごい人気だ。筆者は2019年の大晦日に、ニューヨークのタイムズスクエアで行われたカウントダウンイベントで、特別ゲストとして現れた彼らを間近で観る機会があり、現地での凄まじい人気ぶりを肌で感じた。そんな彼らがこのような場に現れて差別問題を投げかける意義や効果について、人々への影響力は相当ありそうだ。

音楽業界団体「International Federation of Phonographic Industry」によって、BTSがテイラー・スウィフト、ドレイク、アデルなどの売り上げを抜き、2年連続で「世界でもっとも売れているアーティストと評された」とし、英BBCなどが報じている。

また数々のヒット曲に加えて、マクドナルドのコマーシャルに出演したり、昨年9月には国連総会でも演説しSDGsをテーマにしたスピーチとパフォーマンスを披露したりなど、アメリカのエンタメ界はBTSが中心アーティストとして独占中だ。筆者の周りを見渡しても、子どもから大人まで、彼らの存在を知らない人はいないというほど知名度は高い。

BTSが記者団の前に現れたのはたったの6分程度だったが、CNBCはBTSが登場したこの短い時間だけで「ホワイトハウスのYouTubeチャンネルのライブ配信中の視聴者数が、31万を超えた」と報じた。また「BTSが会見会場を離れるや否や、20万の視聴者がライブ配信の視聴から離れた」という。

現時点で確認できる視聴回数は190万回近くにもなる。

この定例会議では最近、インフレやロシアによるウクライナ侵攻のトピックが多く、ここまで視聴者を集めるほど注目されたことはほとんどなかった。例えば3日前の視聴回数は1万4000回程度だ。

セレブやアイドルを巻き込んだキャンペーンは若い有権者の支持を得るためか、バイデン政権がよく取り組んでいるものだ。以前もサッカーのミーガン・ラピノー選手と男女賃金格差是正について話し合いをしたり、5月初めにはセレーナ・ゴメスがホワイトハウスを訪れ、バイデン夫人とメンタルヘルスについて話し合いの場を持つなど、さまざまな問題解決に取り組んでいる。

BTSがこのような場に現れたからといって、アメリカで渦巻く根深い差別意識や問題が明日からすぐに解決するとは思えない。しかしアメリカでも大人気のビッグスターがこのような場に現れ、問題提起をしてくれたことで、特に若いファンや普段はアジア系の差別問題について考える機会のない人々も、これを機に何かを考えるきっかけになったかもしれない。

記者からの質問を一切受け付けない形式で行われた。最後は記者らにより「カムサハムニダ 」という声に送られて退場した。
記者からの質問を一切受け付けない形式で行われた。最後は記者らにより「カムサハムニダ 」という声に送られて退場した。写真:ロイター/アフロ

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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