「日本のパレード」NYの人の目にどう映ったか?岩倉使節団と野球伝来、日米友好150周年
ニューヨークで14日、日本の伝統や文化を祝う「ジャパンパレード(Japan Parade)」が開催された。
毎年この時期に、日本をテーマにしたイベント「ジャパンデー(Japan Day)」がセントラルパークで行われており、コロナ禍で3年ぶりの開催となった今年は、パレードとストリートフェアの形式で行われた。
今年は、日本の近代化に貢献した岩倉具視率いる使節団が1872年にアメリカを訪問して150周年の節目にあたる。日米交流のさらなる促進と日系コミュニティの強化を図り、当地に感謝の意を表すためにパレードは企画された。
初の開催となった「ジャパンパレード」には、当地を拠点とした文化系サークル、芸術家、スポーツ愛好家、日系企業、アジア系差別撲滅のための活動家など約90団体、2400人が参加し、日本舞踊、空手、剣道、和太鼓、雅楽、神輿などを沿道に集まった人々に披露した。
公民権運動の活動家でもある日系の人気俳優、ジョージ・タケイさんもスペシャルゲストとして参加し、パレードを先導した。また『美少女戦士セーラームーン』のミュージカル版の出演者によるライブパフォーマンスも行われ、沿道からは一際歓声が上がった。
花魁のグループ「Ayame」でパレードに参加した中澤利彦さんは、「着物を日本から取り寄せるなどし、本格的なものをニューヨーカーに見せることができて良かった。沿道から写真もたくさん撮られました」と語った。中澤さんはプロダンサーとしてアポロシアターやブロードウェイに出演した経験を持ち、この日もダンスを披露した。
「侍の所作、そして殺陣という日本の伝統芸術を学ぶ私にとって、フロート車に乗り通りを真っ直ぐ突き抜ける景色を見た瞬間、あたかも自分が150年前に船でここにやって来たかのような気になり、心底感慨深かった」と振り返ったのは、「TATE Hatoryu NY」で参加した三宅由利子さん。
ジェノさんとジャクさんは「New York Lolitas」というロリータファッションを楽しむ仲間31人と一緒にパレードを行進した。「これまで参加した桜祭りなどの日系イベントとはまた違った経験で、とても楽しかった」と語った。
日系の退役軍人の古本武司さんは、ベトナム戦争の出兵で着用した同じジャングルファティーグを着てパレードを歩き、沿道の人々からは拍手がわき起こった。
沿道に集まった2万人超えの人々の目にはどう映っただろうか?パレードを見に来た人にも話を聞いた。
近所に住むジャックさんは友人と息子と一緒にパレードを見に来た。一番印象に残ったものを聞くと「これ」と言って腕を上に伸ばし、手の先をひらひらさせて踊って見せた。
ラジ・ムラリさんは「どのパフォーマンスもすごく良かった。中でも女性5人の太鼓演奏がエネルギーに満ち溢れていて、非常によくコーディネートされていた」と感想を述べた。
日本を訪れたことがあるエンジェルさんも、和太鼓演奏が特に印象深かったようだ。「あとは日本舞踊もね」。
大学生の男性は「小さい時から観ていたから懐かしい」と言い『セーラームーン』のパフォーマンスを印象的なものとして挙げた。
趣味で歌をうたう日系人のサンディ・ダンさんは「ハーレムのゴスペル隊が、黒人歌手のソウルフルなリードボーカルと日本人の美しい歌声で構成されていて、聞くだけでインスピレーションと喜びに満ち溢れた」と語った。
中には、「出発地点で見ていたら、どのグループもなかなか出発せず、動きが停滞していた。ニューヨークはパレード開催に慣れているはずなんだけどね」という意見や、「日本の軽食を食べようとストリートフェアにも寄ってみたら、長蛇の列ですぐに売り切れとなり、何も食べられず残念」という声も一部からは聞こえてきた。
また今年はアメリカから日本に野球が伝来して150年の記念の年でもあり、前日の13日にはメジャーリーグのニューヨークメッツとシアトルマリナーズとの対戦試合が行われたシティフィールドで、日本のヘリテージナイトが行われた。
在ニューヨーク日本国総領事館の森美樹夫大使が始球式を行う予定でマウンドに向かったが、メッツのピッチャー、マックス・シャーザー選手は大使に気づくことなくウォーミングアップの投球をはじめて始球式は行われず、こちらもSNS上で話題となった。地元紙は、同選手が始球式について知っていたか否かは不明としている。
さまざまな声や反響があったが、初の「ジャパンパレード」はニューヨークの人々に日本の文化の素晴らしさを印象付けた。パレードを見た筆者も、強く結ばれた日米関係が揺るぎないもので今後も築かれていくことを感じた。
(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止