海外の優秀な人がアジアで一番働きたくない日本 「世界人材ランキング」を見ると
11月21日、Bloombergに「日本はアジアで最下位、高度外国人材への魅力欠く-IMD」と題する記事が掲載された。
スイスのビジネススクールであるIMDの発表した World Talent Ranking 2017 によれば、海外の高度技能者にとって、働く環境としての日本の魅力は、アジア11カ国のうち最下位。アジアで魅力1位はシンガポール、2位は香港である。調査対象の世界63カ国のうちでは、日本は51位となっている。
元記事(英語)では、言葉の障壁と厳格なビジネス慣行があることが問題として挙げられている。経済産業省は、ビッグデータや人工知能、IoTといったテクノロジーが台頭するなか、わが国ではそれらのテクノロジーを扱う人材が、2020年には4万8千人不足するとみている。海外の高度技能者を招き入れることができなければ、人手不足は解消されない見込みだ。そうであれば、日本の国際競争力は落ちていくことになるだろう。
とまぁ、ここまで「日本ヤバイ」の論調で要約してきたが、もう少し冷静になって考えてみたい。海外の人材が入ってこないことは、それほどまでに致命的なことだろうか。たとえ海外の人材が日本に来なかったとしても、日本人が成長すれば大丈夫ではないのか。当記事では、World Talent Ranking の結果をまとめることで、皆さんが日本の今後を考えるきっかけとしていただくことにしたい。
World Talent Ranking 2017 日本の評価
World Talent Ranking 2017は、企業の人材を育成したり、招き入れたり、維持するために必要とされる能力に関して、国ごとに測定したレポートである。63ページが、日本に対する評価である。
評価は、投資と育成、魅力、準備性の3つの領域においてなされ、それぞれ評価項目が設けられている。日本に対する評価を、以下の通り表にまとめてみた。
ランキング全体をみれば、日本は31位。投資と育成は18位と比較的高く、魅力は22位。準備性は低く、48位である。
Bloombergの記事における51位というのは、「魅力」の領域における「海外の高度技術者」の項目における評価である。すでに述べたように、言葉の障壁と厳格なビジネス慣行によって、低評価がつけられている。英語に関しては機械翻訳のレベルが高まっているから、障壁は少なくなっていくものと思われるが、ビジネス慣行というものは一朝一夕で変わることはないから、評価は今後も低いままで続くと思われる。
一覧にすると、わが国の強みと弱みがおおよそわかってくる。マスコミがデータの一部を切り取って、ああだこうだ言ったからといって、それがつねに正しい見解であるとは限らない。データをもとに自分の考えを述べる姿勢を身に着けていきたいものである。
今後の対策として
表をみると、我が国の強みもたくさんあることがわかる。どうやら日本は基礎学力が高く、それを仕事に活かす体制は整っているようである。教師の数は足りないものの、児童一人当たりの支出は多い。社員教育もよく行われていて、基礎的な働く力は強いようだ。そういうこともあって、国内に限定してみれば、人材の維持力は高い。年功序列と終身雇用という日本的経営方式のよい面が、ここに表れているように思う。
たしかに国内・海外問わず、優秀な人材が働きやすい環境は整えたほうがいい。しかしながら、日本の伝統からしてみれば、国民の能力を伸ばしたほうがよくないか、というのが、現時点での筆者の考えである。とりわけ日本は、来るべき時代における「準備性」がきわめて低い。人を大切にする日本であるから、投資や育成における意欲はあるようなのだが、どうもそれがビジネスの方面に向かっていないように思われる。おかげで、頭脳流出がけっこう多い。
筆者の専門からいえば、例えばマネジメントの報酬は高いのに、能力は低いというのは、ちょっと異常である。もっとビジネス教育にも力を入たほうがよいように思う。必要なのは、働く女性に関するマインド育成、マネジメント能力の向上、そしてイノベーション・リーダーシップであろう。ただ教育に金を使えばよいということではなく、しっかりとした国家戦略、ならびに教育戦略のもとに、スピーディな教育改革を行っていく必要がある。国家も、企業も。