オスロが画期的な予算案を世界に提案 CO2を数値にした「気候予算」
「これまでで最もグリーンな予算案」。9月28日、オスロは2017年度の首都予算案を発表した。急進的なオスロの環境政策は、今後、国政だけではなく、世界中の政治家たちにも新しいインスピレーションを与えるだろうと、市議会行政府のトップたちは期待している。
ノルウェーの自治体として初の「気候予算」
ノルウェーの大都市では、大気汚染問題が悪化している。オスロは、国内の自治体ととして初の試みとなる、「気候予算」を予算概要に組み込んだ。
これまでは、教育、福祉、文化・スポーツ事業、環境・通信、都市開発などに予算が振り分けられていた。そこに、環境問題に取り組んだ「気候予算」という新しい予算枠が仲間入りすることとなる。
「これからは、新しい目線で、“予算”を考えていきます。“お金”だけではなく、“削減していかなければいけない二酸化炭素”も、数字として数えていきます。気候予算があることで、政治家として環境政策をやりとげていかなければいけないという、義務にもつながります」と、経済局局長のロッバット・ステーン氏(労働党Ap・冒頭写真)は記者会見で語る。
約300ページ以上に及ぶ予算案の中で、気候予算案は第2章として、「章」が設けられており、約11ページに及ぶ。加えて、これまでもあった環境予算案などもあり、排気ガス削減に向けた目標は多岐にわたって表記されている。
「2020年・2030年までの目標」、「特に対策が必要とされる交通などの分野」を明確にし、「どのような対策が期待され」、「いつまでに結果をだすべきか」がグラフなどで示されている。
通貨だけではなく、温室効果ガスが数字として予算案に重要項目として表記されている点では、確かに画期的だ。
オスロは、2020年になる前までに、下記のような目標を設定している。
- 1990年比で、排ガス50%を削減
- 車の交通量を20%減少
- 60キロメートルの自転車道を完成
- 新規購入される一般車や運搬車両は環境に優しいエネルギーのみに
また、あと3年ほどで、中心地から一般車をなくすカーフリー計画も気候予算案に組み込まれている。しかし、自治体だけでは進められない案件もあり、多くの対策案で決定権を握るのは、反対勢力となる保守派与党だ。実現は難しく、理想だけで終わるのではないかという悲観的な声もある。
オスロの急進的な環境政策の中心人物となっているのは、最大政党の労働党と連立している、新しい小政党「緑の環境党」(MDG)だ。
環境政策は、必ずしも経済活性化とは比例せず、車の運転手などの一部が肩身の狭い思いをすることになる。
オスロ政策の影響を受けて、全国レベルの世論調査では、同党の支持率は急降下中で4,8%。石油資源発掘の停止を求めていることから、国政選挙となると「危険視」されている。しかし、首都のみの地方選挙を想定した世論調査では、驚いたことに、未だに一定の支持率を保つ。昨年の地方選挙での勝利から1年後、支持率は7,5%で、0,6%のみ支持率が落ちただけであった(9月の世論調査結果はアフテンポステン紙より)。
大気汚染で子どもや高齢者が、真冬に外出できなくなる状況、車ばかりが優先され、自転車乗りのための道路が足りないことなどを背景に、特定の層から安定した支持率を得ているようだ。
「環境政策は、ほかの場所で、ほかの時代に、ほかの誰かがやってくれるだろうというものではありません。オスロは責任をもって、できる限りのことをしていきます」と、環境・交通通信局長のラン・マリエ・ヌイェン・ベルグ氏(緑の環境党)は語る。
Photo&Text: Asaki Abumi