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[社会人野球日本選手権]竹田祐、松本健吾……来年のドラフト候補が躍動!

楊順行スポーツライター
履正社高時代、2017年春の竹田祐(写真:アフロ)

 第47回社会人野球日本選手権は、これからがクライマックス。熱戦続きで目立つのが、大卒ルーキーの躍動だ。ルーキーにとっては、来年がプロ解禁。ちょっと気は早いが、2023年ドラフトでの指名が有力な選手たちをちょっとピックアップしてみよう。

 夏春連覇を狙うENEOSでは、丸山壮史が大仕事をした。三菱重工Westとの準々決勝。タイブレークにもつれた延長10回に、値千金の3ランだ。

 広陵高3年夏の甲子園では、背番号二ケタながらスタメン出場も多く、13打数6安打。ホームランも1本記録し、準優勝に貢献している。早稲田大4年時には主将も務め、名門・ENEOSに入社すると、3月の東京スポニチ大会からスタメンで出場した。都市対抗西関東2次予選でも2本塁打、5打点とどちらもチームトップタイ。「1年目から、チームの軸としてよくやってくれている」(大久保秀昭監督)と、チームに欠かせない存在だ。

 都市対抗本番では、準決勝までの4試合で1安打と不調だったが、東京ガスとの決勝の6回、これも値千金の同点ホームラン。今大会でも、優勝した10月のU-23ワールドカップ同じ三番に起用され、それがたまたまタイブレークで打順が回る巡り合わせも、なにか持っているのだろう。

 敗れた三菱重工Westだが、先発のルーキー・竹田祐も光った。9安打されながら、都市対抗王者を相手に9回1失点という粘りの投球。大きくアピールしたのは、JFE西日本との初戦からだ。150キロに達するストレート、さらに多彩な変化球を武器に、6回2死までパーフェクト。終わってみれば2安打で、大会完封一番乗りを果たしている。

 もともと、「大学時代から悪い」という立ち上がりが課題。明治大で11勝した実力派だが、都市対抗でも日本製鉄鹿島との初戦を任されながら、ストレートが甘く初回に3安打2失点を喫している。

「あのときは硬くなって力が入った。今日は、深く考えないようにしました」

 というのが功を奏したか、JFE西日本戦では自己最速の150キロをマークするなど初回から2三振。「立ち上がりがばらつく投手のはずでしたが……」と、JFE西日本・山下敬之監督もお手上げの滑り出しだった。6回までの完全ペースも「全然意識していませんでした。それより、序盤の失点が多いので気合いを入れていった。勝利に貢献できました」

1年目からチームの大黒柱

 竹田は、日立製作所との2回戦でも3番手で登板して試合を締め、そして準々決勝での好投と、すっかり大黒柱だ。履正社高時代は2年時の神宮大会で優勝し、17年のセンバツでも準優勝してしているから、高校野球ファンにもおなじみだろう。

 そのときの履正社のキャプテン・若林将平はいま、日本新薬でプレー。慶応大で日本一を経験した勝負強さは健在で、春先から定位置を獲得すると、東京スポニチ大会では大学時代は1本も打てなかった神宮で2本塁打、都市対抗のNTT東日本戦でもホームランを記録している。そしてこの大会、ENEOSとの2回戦でも、4点を追う7回に追撃の2ラン。すでに神宮と両ドームでホームランを記録した。やはり履正社で同期のロッテ・安田尚憲が左なら、貴重な右の長距離砲として存在をアピールしている。

 豊富な投手陣を誇るトヨタ自動車では、松本健吾が2回戦でパナソニックを完封。許したのは内野安打1本のみという圧巻の内容だった。2回にストレートが自己最速の152キロをマークし、「まっすぐで押せる。よけいなことを考えない」と、5回以降は1人の走者も許さなかった。

 東海大菅生高時代の17年夏、1学年下の戸田懐生(現巨人)との二本柱で甲子園ベスト4。亜細亜大でも7勝と実績を残したが、プロからの指名はなかった。アマチュアでは最高峰レベルのトヨタ投手陣では、なかなか出番に恵まれなかったが、都市対抗・TDKとの準々決勝でリリーフ登板。4回を無失点に抑え、「隠し球……といっては悪いけど、予選でも投げていない松本がいいピッチングをしてくれた」と藤原航平監督を喜ばせた。この日の完封には「最後まで球が強く、すばらしすぎた」と藤原監督も絶賛だ。松本はいう。

「トヨタに入って成長を実感できているし、一番いい投球ができた。自信になります」。

 このコラムでは、高卒2年目で来年がプロ解禁となるENEOSの外野手・度会隆輝(https://news.yahoo.co.jp/byline/yonobuyuki/20221105-00322699)、NTT東日本の投手・片山楽生(https://news.yahoo.co.jp/byline/yonobuyuki/20221106-00322819)についについてもすでに触れた。さてさて、このうち何人がドラフトで指名されるか、検証は1年後に……。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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