もと小虎たちが挑んだ社会人野球日本選手権〈その2〉野原将志選手の巻
10月30日から、京セラドーム大阪で開催中の『第41回 社会人野球日本選手権大会』に、もと阪神タイガースの野原将志選手(三菱重工長崎)、藤井宏政選手(カナフレックス)、阪口哲也選手(パナソニック)、穴田真規選手(和歌山箕島球友会)が出場しました。同時期に阪神でプレーをしていて、2013年と2014年に戦力外となり社会人野球のチームに入った4人が、全国大会で揃うのは簡単じゃありません。そして、ここで1つ勝つことも。
まず、創部2年目で初めて出場したカナフレックスは、大会初日の開幕試合で西濃運輸と戦って敗れました。その詳細はこちらです。<もと小虎たちが挑んだ社会人野球日本選手権〈その1〉藤井宏政選手の巻>
同じく初日の第3試合には三菱重工長崎が登場しています。7月の都市対抗で延長の末、日本生命に敗れた大阪ガスと対戦して結果は3対0。大阪ガス・酒居投手の前に4安打完封負けです。また大会2日目の31日には和歌山箕島球友会が、2日はパナソニックが敗れ、4選手とも予選敗退となってしまいました。
きょうは野原将志選手(27)が所属する三菱重工長崎の試合結果と、コメントをご紹介します。
《第41回 社会人野球日本選手権大会》
10月30日 第3試合 1回戦 (京セラ)
三菱重工長崎-大阪ガス
重工長崎 000 000 000 = 0
大阪ガス 200 010 00X = 3
◆バッテリー
【重工長崎】●奥村(6回2/3)-三木田(1回1/3) / 平野
【大阪ガス】○酒居(9回) / 岸田
◆三塁打 鶴田(重工長崎)、峰下(大阪ガス)
◆スターティングメンバ―
【三菱重工長崎】【大阪ガス】
1]左:河野 1]遊:青柳
2]遊:鶴田 2]二:峰下
3]右:堀 3]中:藤原
4]指:加治前 4]右:土井
5]三:富岡 5]一:伊藤
6]一:野原 6]捕:岸田
7]捕:平野 7]左:大谷
8]中:江越 8]指:加嶋
9]二:佐々木 9]三:近藤
〈試合経過〉
三菱重工長崎の奥村は1回、先頭の青柳をショートのエラーで出し、犠打で二塁へ。ついで四球と一ゴロで2死二、三塁として、5番・伊藤の右前タイムリーで2点を失いました。しかし2回はサードベースに当たって跳ねた内野安打のみ、3回は死球があったもののキャッチャー・平野が盗塁を阻止するなど3人で片づけ、4回は三者凡退としっかり抑えます。
ところが5回、中前打と犠打で1死二塁として、2死を取ったあとに2番・峰下の中越え三塁打を浴び、2点目を献上してしまいました。6回は三者凡退で、7回も2死を取ってから青柳に中前打され、ここで奥村は降板。代わった三木田が青柳の盗塁と自身の暴投、さらに四球で2死一、三塁となりますが無失点。8回は三者凡退でした。
一方、打線は大阪ガス・酒居に対し2回までは完璧に抑え込まれ、3回2死から9番・佐々木が右前打するもチャンスは広がらず。4回は2死からの加治前の死球のみ。5回は野原が中飛、平野と江越は連続三振で三者凡退。まだ2塁を踏めません。ようやう6回に2死から2番・鶴田が左中間越えの三塁打を放って得点圏に走者を置きましたが、ここも得点なし。
そして7回、加治前が中前打で1死となったあと富岡の遊ゴロが内野安打となって、さらにショートの送球エラーで二塁へ進みます。続く野原はサードへの内野安打で、二塁走者はそのままでしたが1死一、二塁。平野の右飛で一、三塁としたものの江越は中飛。その後も球威の落ちない酒居の前に、8回と9回も三者凡退に抑えられ試合終了。4安打完封負けを喫しました。
ここへ戻ってきて次は勝ちたい!
野原将志(27)が三菱重工長崎に入って1年目の昨シーズンは全国大会出場はならず、その悔しさをバネに今季は7月の都市対抗野球の本大会に6年ぶり出場を果たしました。 (都市対抗の戦いはこちらでご覧ください。<都市対抗の舞台で感じた「野球人」の誇り―もと阪神・野原将志選手―>)
しかし、チーム打率.344で臨んだ都市対抗はヤマハの前に3安打完封負け…。今回、4大会ぶりに出場した日本選手権も4安打完封負けということで「2大会でヒット7本しか出ていない。そういうとこは寂しいですね」と野原選手。「やることはやってきたと思うし、その中で結果が出なかった。今後どうすれば全国で勝てるか、いいピッチャーが来たらどう対処していけばいいかを考えていきたい」と言います。
試合結果を見ると、三菱重工長崎が4安打で、大阪ガスも5安打なんですよね。1回にエラーと四球の走者を2人とも還してしまったのが悔やまれます。先発の奥村投手は7回途中まで投げて5安打3失点で自責1とゲームを作り、三木田投手も好リリーフでした。エラーをしたショート鶴田選手が6回2死から三塁打を放ったところで、もしくは野原選手も内野安打した7回のチャンスで点が取れていればなあと…出てくるのは「たられば」ばかりですみません。
何が足りなんでしょう?「やっぱり打たないと勝てない。ただそう言うのでなく、どうしたらいいかをチーム全体で考えて練習していかないと。1人1人じゃなくてチーム全体で。調子が悪い時にどうすればいいかっていうことですね。全国レベルのピッチャーは、簡単には打たせてくれない。勝たせてくれないので。きょうの試合は力負けです」。個人としても主将としても、悔しい結果だったのでしょう。
この1年を振り返って「チームとしては非常にいい状態になっていると思います。でも勝っていませんから」と言い、再度「どうしたら次勝てるか、テーマを考えて取り組んでいきたい。2大会出ましたけど、勝つチームにしないと。出るだけで満足せず、あくまで “全国で勝てるチーム” を目指していかなくちゃいけない。もちろん日本一を目標にしています!」と力を込めました。
関西の皆さんの前で久々にプレーして「鳴尾浜で応援してもらっていた方も、何人かわかりましたよ」と野原選手。その方々に向けて何かひとこと、と言われてのコメントはこちらです。
「まだまだ成長しているし、うまくなりたいと思っています。次、ここへ戻ってきて勝てるように頑張ります!」
「社会人は甘くない」と貝塚コーチ
貝塚正秀コーチ(40)は「7回1死二塁、野原の内野安打で(二塁ランナーが)三塁へ進んでいないところとか、細かい点はいろいろありますね」と試合を振り返りました。昨年7月に長崎市の三菱球場へ伺った際にもお話させていただいた貝塚コーチは、同じプロ経験者として野原選手のことを “厳しく温かく” 見ておられます。「野原も、社会人は甘くないということが分かったでしょう」と。
ことし5月のJABA九州大会の時はお会いできなかったので久々でしたが、覚えていてくださってよかったです。そういえばユニホームが変わりましたね。いつからですか?「ことし、都市対抗の本大会出場が決まって新しくなったんですよ」。なるほど、「去年と少し違うかな~気のせいかな~」と思ったのですが、近くで見ると変わっていると気づきます。そんなわけで、違いのわかるポーズを取っていただきました。貝塚コーチ、ありがとうございます!
捉えたと思ってもファウルに…
江越海地選手(21)は、もう皆さんご存じだと思いますが、阪神の江越選手の弟。でも右投げで左打ちなんですよね。この日は3回の1打席目が1死ランナーなしで一ゴロ、5回は2死ランナーなしで空振り三振(一塁へ走り、2-3でアウト)、7回は2死一、三塁で「抜けたフォーク。打ち損じてしまった」という中飛です。
「その前に低めのボール球に手を出してしまって三振したので、あの打席はゾーンを上げて打ていこうと思っていました。低めのボール球だけ手を出さないようにと」。あれが抜けていたら…と思っても仕方がないことですけど、残念ですね。アウトのうち、8個が三振で14個がフライ。チャンスを作ることもままならない相手でした。
そんな大坂ガス・酒居投手については「捉えたと思っても、ファウルになることが多かった」と振り返り、今まで対戦したピッチャーと比べてどうだったかの問いに「よかったです。いいピッチャーだとわかっていたので、最初からコンパクトに振っていこうという意識でした」と答えています。いつか必ずリベンジの機会があるはず。その時までしっかり牙を研いでおきましょう。
お兄さんと後輩、息子も応援
ちなみに、この試合は阪神タイガースの江越大賀選手(22)と松田遼馬投手(21)が観戦に訪れ、最後まで見ていたようです。2人とも長崎県人だし、江越選手はもちろん弟の、松田投手は自主トレも一緒にやっていた野原選手の応援にということでしょう。翌日は秋季キャンプの安芸に移動してしまうし、この日は昼間に練習もあったので、ちょうどいいタイミングだったと思われます。
残念ながら負けてしまい、海地選手もノーヒットだったんですが、いい守備もあったのでは?と言ったら江越選手は…(ややこしいですね) 大賀選手は「イージーです」とアッサリした答え。それを海地選手に伝えたところ「フフ」と笑って、これまたアッサリ流しました。見に来ていることは、ちゃんとわかっていたみたいですよ。松田投手も、試合後のグラウンドでクールダウンをする野原選手に挨拶できたと言っていました。
そして野原選手の奥さんと息子さんも揃って観戦。悠成くんは5月に会った時と比べて顔がとても男の子らしくなり、動きもメチャクチャ素早くてビックリです!一緒に遊んであげようとした江越選手や松田投手も翻弄されていました(笑)。来年も東京ドームや京セラドームに来てくれたらいいですね。あ、その前に悠成くん、来年春にはお兄ちゃんになるみたいですよ。お父さんはますます頑張らないと!
※和歌山箕島球友会・穴田真規選手と、パナソニック・阪口哲也選手の試合結果はこちらです。