【寒さにも慣れってあるの?】寒さに慣れる~寒冷適応について分かっていること
12月になり、より一層寒くなりました。冬はマラソンの季節といいますが、あまりに寒いとスタート前にガタガタ震えたり、走っていても手指や足先の感覚がなくなったりします。そんな状態でちゃんと走れるのかな?夏の暑いときと同じように、寒さもキチンと馴化しないといけないのでは?と質問を受けることがあります。実際はどうなのでしょうか。
寒さに適応するとどうなるのか
一般に冬の方が代謝が高まると言われています。寒い環境の中、体温を維持するために熱の産生が高まり、結果エネルギー消費が多くなるとされています。そんな寒くてエネルギー消費の多い毎日を過ごすなかで、実は体の反応も変わってくると言われています。
あるアメリカの研究では男女20名について夏と冬に代謝に違いを調べています。気温22度の環境で1時間過ごしたのちに、やや寒い気温15度の環境に3時間過ごしてその代謝を調べたところ、夏に比べて冬の方が代謝率が高かったようです。
他の研究では、寒冷刺激により熱を産生する褐色脂肪細胞が活動的になるとも言われています。少数の研究ですが、このように寒さに適応して代謝を高めやすくする変化が生じるのです。
運動をすることでも、寒さに耐性がつく
また、寒さに暴露しなくても、運動をすることでも寒さに耐性が生まれます。
カナダからのマウスの研究ですが、室温で自由に回し車で運動していたマウスと運動しなかったマウスを、その後気温4度の寒冷環境下にうつして、直腸温や体重、血糖などを測定しています(対照として室温環境でも観察)。
その結果運動していたマウスは運動しなかったマウスに比べて、寒冷環境下での直腸温の低下が緩やかでした。運動により体温の低下が防げるのは、白色脂肪細胞が褐色化脂肪細胞に変化するからとも言われています。ですがこの文献では、マウスの体組織まで分析した結果、骨格筋の変化が生じるからではないかと結論づけています。
そして寒冷適応とは?
運動をしたり寒冷環境下にいることで、代謝がよくなったり体温が下がりにくくなることは分かってもらえたと思います。そしてその結果、寒さの感覚も緩和したとの報告もあります。
オランダからの文献で、17人の健常者に対して連続 10 日間、軽い冷環境の15~16度の環境温度に1日6時間さらされて寒冷順応した結果を報告しています。
上に示す通り順応後には、震えなくても熱産生できるようになりました。体感的も寒さが和らいで、不快さも少なく、結果震えは体感的にも少なく感じています。
文字通り寒さに馴れた!という感じがしますよね。
結果、寒冷適応は有効なの?
他にもいくつかの文献があります。2022年にまとめられた寒冷順応のレビュー論文によると、それ以外にも身体の変化が生じることが報告されています。
「暑さは馴化、寒さは我慢」と言われるランニング界隈ですが、そんな事はありません。身体は寒さに順応していくのです。まだまだ研究は少数で、寒さに馴化するとパフォーマンスがアップするかなどは分かっていません。ですが上記の変化を考えると、パフォーマンスにはつながらなくても、心肺停止や低体温などの不測の事態の可能性を下げることはできそうです。
マラソンは一定数で命につながる不測の事態が生じる競技として知られています。そのような事態に至らないためにも、寒冷環境下に慣れておく必要がありそうです。