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「のぞみ」はGW全席指定、主要特急も指定席のみ それでも「自由席」が残る特急の特徴は?

小林拓矢フリーライター
編成の半分が自由席の「スーパーおき」(写真:イメージマート)

 このゴールデンウィークも、各路線で混雑が目立ち、大きな駅は人でごった返したことだろう。

 ゴールデンウィークなど利用者が多い時期は、東海道・山陽新幹線「のぞみ」は全席指定席で運行されている。

 しかしそうであっても、「ひかり」「こだま」には、自由席が連結されている。

 また近年、特急列車を全席指定にする動きが目立っている。JR東日本が「ひたち」「ときわ」を全席指定にしてから、「あずさ」「かいじ」なども全席指定になり、「はちおうじ」「おうめ」「湘南」は全席指定特急として登場、房総方面の特急も指定席のみとなった。これらの特急は、いつも比較的混雑しており、列車によっては通勤などにも使われるため、着席サービスが求められるという事情があることはわかる。

 この動きが他社にも広がってきた。

春のダイヤ改正でJR北海道やJR西日本にも全席指定特急が

 この春のダイヤ改正で、JR北海道の多くの特急列車が全席指定になった。また、JR西日本でも、北陸新幹線に連絡する「サンダーバード」「しらさぎ」に自由席はなくなり、陰陽連絡特急「やくも」も指定席のみとなった。

全席指定となった特急「しらさぎ」
全席指定となった特急「しらさぎ」写真:イメージマート

 また、そのほかにも全席指定の特急がJR西日本にはある。

 特急は、「特別急行」の略である。何をいまさら、という人もいるかもしれないが、ほんとうは「特別」な列車であって、そうでもない「急行」があるはずだ。

 しかし国鉄の終わりころから、「急行」はどんどん「特急」に置き換えられて、単なる「急行」は定期列車では「はまなす」を最後になくなってしまった。

「特急」がほんとうに特別なものだった時代の特急列車は、全席指定が原則だった。しかし「エル特急」などが増えていき特急列車が大衆化されると、いつでも乗れることを売りに自由席を設ける特急列車が増えていった。

 しかしそうなると、混雑時に自由席特急券を買って乗ろうとしても席に座ることができない人で車内はあふれかえる状況になってしまった。

 混雑していると、乗降に時間がかかり、列車は遅延、駅は混乱という事態になる。

 また近年は、着席こそサービスという考えが主流になっており、どんな短距離利用者でも座れることを最優先にする、どこから乗っても必ず座れるようにすることをアピール材料にするようになってきた。

 そんなわけで、全席指定の特急が増えてきた。利用者としても、座れないのは嫌なものである。

 ただ特急列車でも、自由席が残っている列車はいまなおある。

地方特急に残り続ける自由席

 都市から地方へ向かう、長編成の特急列車は、全席指定となっているケースが多い。しかしそうでない地域でも、特急列車が走っている。そもそもいまは定期の急行列車がないのだ。

 どんな特急に、自由席は残っているのか?

 全車指定にしたがる傾向が強いJR東日本で見てみよう。新幹線は「やまびこ」「なすの」「とき」「あさま」などの停車駅の多い列車で自由席が残っている。これらの列車には新幹線定期券の利用者も多そうだ。在来線特急では「つがる」「いなほ」「しらゆき」といった列車だ。

 この春に全席指定化が進み、その反発が強いJR北海道はどうか。「ライラック」「カムイ」といった短距離特急や、「宗谷」「サロベツ」「オホーツク」「大雪」といった閑散線区を走る特急で自由席が残る。

短編成にグリーン・指定・自由がセットになっている特急「宗谷」
短編成にグリーン・指定・自由がセットになっている特急「宗谷」写真:イメージマート

 閑散線区を走る特急は、短編成で3両や4両といったものが多い。

 もっとも、札幌~室蘭間の「すずらん」を全席指定にしたのは失敗だったのでは、という声も多い。

 JR西日本はどうか。関空特急の「はるか」には自由席がある。長大編成で自由席が残る列車はこれくらいで、2両編成の「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」といった列車で自由席が存在する。この場合、1両が指定席、のこり1両が自由席となる。

 どうも、新幹線以外は地方で短編成の場合に自由席が残りやすい傾向があるといえる。

自由席を残し続けるJR東海・JR四国・JR九州

 JR東海・JR四国・JR九州は、いまなお在来線特急に自由席を残し続ける。JR東海は、それなりの編成がある特急が「しなの」「ひだ」くらいで、「南紀」は2両編成、「ふじかわ」「伊那路」は3両編成である。

 JR四国は自由席の天国だ。半分以上が自由席の特急も多い。

JR四国は自由席主体の特急を高頻度運転している
JR四国は自由席主体の特急を高頻度運転している写真:イメージマート

 JR九州でも、自由席中心の特急が大都市圏以外のところで多く見られる。

 いつも混雑しているわけではない、大都会発着ではないような列車で、短編成の自由席主体の特急列車が見られるという状況である。

 ゴールデンウィーク、新幹線や特急にお乗りの方も多かったと思われる。帰省ラッシュやUターンラッシュの話は方々で耳にするけれども、その影響を受けようがない特急というのもまたあり、そういう列車だからこそ自由席が残り続けるという現状もある。

 いつでも着席できる状態だから、あえて自由席が残り続けているという状況がある。その自由席があることで、本数の少ない普通列車を補完し、鉄道の利便性向上に貢献しているという地域もある。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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