電力ひっ迫だからこそ電気自動車を普及させるべき理由
今年6月の電力ひっ迫は、あくまで火力発電や原発に頼ろうとする日本のエネルギー政策のいびつさを改めて浮き彫りにした。経産省は、6月末で東京電力管内の電力需給ひっ迫注意報を解除したものの、根本的な構造自体は変わっていない。また、電力ひっ迫に関連した報道もその多くが、結局は大手電力の火力や原発による電力供給という古い構造に戻ろうとするような、時代遅れで後ろ向きなものばかりが目立つ。だが、今回の電力ひっ迫の教訓は、地震などの天災や、海外での戦争といった国際情勢上のリスクに対応していく上で、再生可能エネルギーと電気自動車の活用こそ重要だということであろう。
〇電力ひっ迫に便乗した再エネ叩きは愚か
そもそも、今年6月の電力ひっ迫の原因は何だったのだろうか。直接的な原因は、今年3月の東北地方での地震で、大型火力発電施設がいくつも損壊したことである。さらに、6月としては異常な暑さで、空調などの電力需要が増したのに対し、あくまで7月8月の需要増を想定した大手電力会社が多くの火力発電所が点検・補修していたからということもあった。一部報道では、太陽光発電などの再生可能エネルギー普及や脱炭素の動きで、老朽化した火力発電の休止や廃止が進んだからだと、あたかも再生可能エネルギーが電力ひっ迫の原因であるかの様に伝えているが、あまりに一面的であり、既得利権を抱えた大手電力会社に媚びた報じ方である。
むしろ、太陽光発電があるからこそ、昼間の電力供給が確保できたのであって、もしこれらがなかったら、電力ひっ迫はより深刻なものになったであろう。また、日本の再エネ活用は非常に中途半端であり、再エネの短所である変動性を補うような対策が遅れている。つまり、今回のケースに関して言えば、夕方の太陽光発電の発電量が落ちる時間帯に特に電力ひっ迫が起きていたのであるが、他方で、昼間に「過剰に発電された太陽光発電による電力が捨てられている」という問題への対応が必要だ。そして、その上で重要となってくるのが、電気自動車の普及なのである。
〇余って大量に「捨てられている」太陽光発電の電力
実は、今回の電力ひっ迫に先立つ今年4月、九州や四国、東北では太陽光発電による膨大な電力が「捨てられている」ということが起きていた。電力会社が太陽光発電の事業者に対して、発電を一時的に止めるよう求める「出力制御」が相次いで実施されたのだ。電力系統(発電所・変電所・送電線・配電線などの電力の発送配電システム全体のこと)では、受給バランス、つまり発電側による供給と、消費する側による需要のバランスが重要だとされている。これが大きく乱れると、発電所の機械が故障を防ぐため自動停止し、「最悪の場合、大規模停電が起きる」とも言われる。一方、太陽光発電は天気が良い日には、需要を上回る量の電力を発電することも多々ある。つまり、電力が余る状態なのだ。こうした場合に、大手電力は「系統の受給バランスを保つため」として、太陽光発電を行う事業者に対し、発電を一時的に止めるように求める。これが「出力制御」だ。この出力制御が頻繁に行われると、太陽光による発電に無駄が多くなり、事業者は投資に見合った収益が得にくくなるため、事業拡大が難しくなる。出力制御は日本における再生可能エネルギー普及の大きな阻害要因となっているのだ。
〇「動く蓄電施設」電気自動車を活用すべき
要は、昼間に余ってしまう太陽光発電による電力を、夕方に使えれば今回のような電力ひっ迫は解消する。余剰電力を使って大量の水を高所にくみ上げ、電力系統での供給が不足した際に、その水を放流することで発電する揚水発電の活用や、大規模蓄電施設の増設などが、対策としてあるのだが、今、注目されつつあるのが、「動く蓄電施設」としての電気自動車の活用だ。電力系統で供給が過多な際に、その受け皿として電気自動車が充電を行い、逆に系統の供給が不足した際には、電気自動車のバッテリーから電力系統へと電力を供給することで、受給バランスを保つという訳である。
温暖化防止のためや、ロシアによるウクライナ侵攻で世界的にエネルギー価格が高騰するなど日本が輸入に頼る化石燃料が国際情勢に大きく左右されるリスクがある中、国産エネルギーを確保するためにも、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及は欠かせない。また、交通の脱炭素化も必要だ。これらの課題を解決する上で、電気自動車の普及と活用が非常に重要なのである。
〇電気自動車活用の具体事例
実際、日本においても政府や各自治体や企業による電気自動車活用の取り組みが始まっている。
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