「分断と対立」が底流に沈潜する日本が選挙の年を迎えた
フーテン老人世直し録(194)
丙申元旦
今年は選挙の年である。夏には参議院選挙が行われるが、その選挙から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、有権者は240万人増えてその動向が注目される。加えて永田町では衆参ダブル選挙の可能性も取りざたされており、選挙を巡る注目度は一層高まる。
海の向こうの米国でも年明けから大統領予備選の火ぶたが切られ、11月にはオバマに代わる新大統領が誕生する。冷戦後の世界を大混乱に陥れた米国が世界をさらなる混乱に陥れる方向に進むのか、あるいは収拾への道筋を見出すことが出来るのか、こちらの選挙にも関心を持たざるを得ない。
それにしても昨年の世界と日本を振り返ると「分断と対立」、「憎悪と不寛容」ばかりが目につく1年だった。米国のイラク戦争が生み出した過激派組織「イスラム国」のテロが欧州、中東、北米を襲い、その報復として続けられたシリア空爆にロシアも参加すると、またその報復としてロシア機が撃墜されるなど報復の連鎖は止まらない。
悪化するシリア内戦から逃れた難民がかつてない規模で欧州に流入し、これに対してハンガリー政府は国境を封鎖し、また各国でも難民・移民の排斥を主張する右派政党が選挙で議席を増やすなど欧州にはこれまでになく分断と不寛容の嵐が吹き荒れている。
米国大統領選挙でも共和党候補に名乗りを上げたドナルド・トランプ氏がイスラム教徒の入国禁止など過激な反移民政策を主張すると、世論の支持率は予想を上回って上昇し、対立と不寛容を煽ることが選挙戦を有利にするという現象が現れた。
そうした中で日本の安倍政権は米国追随に終始した1年であった。年の初めに「イスラム国」を挑発して二人の日本人人質を見殺しにし、日本国民にテロの脅威を実感させる事で米国の「テロとの戦い」に日本が協力する事への反発をやわらげようとした。米国が作り出した「分断と対立」、「憎悪と不寛容」の世界に日本も参画する意思を示したのである。
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