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岸田内閣の「財政の単年度主義の弊害是正」の意味は? でも憲法で予算の単年度主義が規定されているが

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

※12月3日に開催された経済財政諮問会議を受けて加筆修正

第2次岸田文雄内閣が、「財政の単年度主義の弊害是正」を打ち出した。

「令和4年度予算編成の基本方針」(後に、12月3日に開催された経済財政諮問会議で諮られた閣議決定)には、次のように記されている。

財政の単年度主義の弊害を是正し、科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家課題に計画的に取り組む。

出典:「令和4年度予算編成の基本方針」

ここでいう「財政の単年度主義の弊害」とは何だろうか。

そもそも、「予算の単年度主義」という言葉がある。予算の単年度主義は、日本国憲法第86条に根拠づけられている。第86条は、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とされている。

予算の単年度主義を教科書的に説明すると、

予算の単年度主義とは、予算は原則として会計年度ごとに編成され、次の会計年度以降の予算を拘束すべきではない、とする原則です。

出典:土居丈朗『入門財政学(第2版)』日本評論社

となる。

ただ、予算の単年度主義には弊害があるとされている。支出を翌年度に繰り越すことが難しく、年度末近くになって無理に予算執行される例は、この弊害としてよく挙げられる例である。年度末に道路の維持補修が多い、とかという事例である。

だから、国会での事前の議決を経れば、この予算の単年度主義の例外扱いとすることが認められている。その代表例は、予算の繰越しと、継続費や国庫債務負担行為である。

継続費とは、完成までに数年度を要する国の事業について、その経費の総額と年割額(毎年度の支出見込額)を定め、あらかじめ国会の議決を経て5カ年度以内の数年度にわたり支出される経費である。国庫債務負担行為とは、法律や歳入予算もしくは継続費に基づくもの以外で、支出を伴う契約を結んで国が債務を負担する必要がある場合、総額のみを明示する形であらかじめ国会の議決を経た経費である。

それがあるにもかかわらず、「財政の単年度主義の弊害是正」と打ち出した。

これは、「予算の単年度主義の弊害是正」を意味するのだろうか。「予算の単年度主義の弊害是正」というなら、憲法改正にまで話が及ぶのだろうか。

どうやらそんな大げさな話ではないようだ。では、敢えて「財政の単年度主義の弊害是正」を打ち出す意図はどこにあるのか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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