「餅による窒息」コロナ禍の今年は特に注意を
年末年始になると、毎年餅をのどに詰まらせて救急搬送される事例が急増します。
過去の報告によれば、年間搬送例の半数以上が12月と1月です(1)。
また、その約9割が高齢者(65歳以上)で、最も多いのが80歳代です。
餅のように粘着性の高いものがのどに詰まると、空気の通り道が塞がり、呼吸ができなくなります。
こうなるとタイムリミットはほんの数分です。
早急に気道が開通されないと、あっという間に命の危機に陥ります。
平成30年の報告では、救急車が現場に到着するまでの平均所要時間は8.7分(2)。
病院に到着するまでの時間(119番通報から医師に引き継ぐまで)は平均39.5分です。
これらの数字は、我が国の恵まれた救急医療を反映するものに他なりません。
しかし、今冬は新型コロナ患者の急増により、救急搬送の受け入れが難しい病院がますます増える恐れがあります。
救急車内では救急隊員が応急処置をしながら搬送先を必死に探しますが、見つからない限りその場を動けません。
窒息等の事故や交通外傷など、外的要因による生命の危険は、理論的には全て防ぐことができます。
今年は特に「防げる事故は防ぐ」という意識を徹底すべきだと言わざるを得ないでしょう。
事故を防ぐ方法と事故時の対策
そもそも「餅を食べない」以上に有効な予防策はありませんが、もし食べるとしても、
・1センチ未満に小さく切る
・ゆっくりよく噛んでから飲み込む
・一人では食べない
・餅を食べる前に汁物やお茶でのどを潤す
といった注意が必要です。
ものをのどに詰めて窒息すると、「窒息していること」を周囲に声で伝えることができません。
そこで、覚えておくべき世界共通のポーズが「チョークサイン」です。
両手で首を押さえ、窒息したことを他人に知らせるポーズです。
では、もし周囲の人が窒息した時、どのように対処すればいいでしょうか?
まずは大きな声で助けを呼んで人を集め、119番通報を行います。
救急車が到着するまでは、詰まったものを除去するため「背部叩打法」を試します。
左右の肩甲骨の間を何度も強く叩く方法です。
これで除去できなければ、次に試せる方法に「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」があります。
患者さんの後ろから腰に両腕を回し、片方の手で握りこぶしを作ってみぞおちとへその間に当て、その上をもう片方の手で握って手前上方向に突き上げる方法です。
万が一の時は、このような流れで慌てず対処することが大切です。
むろん、こうした方法を使っても命を救えないことは多々あります。
何より大切なのは「予防」です。
この年末年始は特に、餅による窒息が起こらないよう重々注意していただければと思います。