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節分で5歳以下の子どもに豆を食べさせてはいけない理由

山本健人消化器外科専門医
(写真:イメージマート)

消費者庁は24日、ホームページで、

「節分は窒息・誤嚥に注意!硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで!」

との注意喚起を行いました。

硬い豆やナッツ類は、子どもにとって窒息や誤嚥(食べ物や異物が誤って気道に入ること)のリスクがあるからです。

2020年2月、松江市の認定こども園で4歳の男児が節分の豆をのどに詰まらせ、窒息して亡くなった事故がありました。

幼い子どもは歯が生えそろっていないため、かみ砕く力や飲み込む力が大人に比べて不十分です。

また、食べ物を口に入れたまま会話をしたり、笑ったり走ったりするなど、リスクの高い行動を取りやすい傾向があります。

口の中のものを不意に吸い込み、窒息したり誤嚥したりすることがあるのです

厚生労働省の調査によると、平成26年から令和元年までの6年間に、食品による窒息で14歳以下の子どもが80人死亡しています。そのうち、9割は5歳以下です(1)。

また別の調査でも、異物を吸い込んで気道に詰まらせる事故のうち、3歳未満が7割を占めていました(2,3)。そして、食べ物が原因となった事故のうち、7割以上が豆やナッツ類です(3)。

他の食べ物と比べて豆やナッツ類が特に危険なのは、

・水を含むと徐々に膨張し、気道を閉塞させてしまうこと

・油分が溶け出して炎症を起こし、これが気管支炎や肺炎の原因になること

などの特徴があるためです。

我が国には、2月3日に「豆をまく」という独特の慣習があります。

伝統を守り、行事を楽しむことはもちろん大切ですが、健康リスクに配慮することも大切です。

特に「子どもがいる環境で豆をまく」という行為が及ぼすリスクに、大人は敏感であるべきでしょう。

消費者庁は例年、

「豆まきは個包装されたものを使う」

「子どもが拾って口に入れないよう後片付けを徹底する」

といった注意を呼びかけてきました。

せっかくの楽しい伝統行事。子どもの楽しみと健康を守るため、大人が心を配り、工夫をこらすことが大切だと思います。

(1) 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!―気管支炎や肺炎を起こすおそれも、硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで―」

(2) 日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ「小児の気道異物事故予防ならびに対応」

(3) 小児耳 2018; 39: 219-222

消化器外科専門医

2010年京都大学医学部卒業。医師・医学博士。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、内視鏡外科技術認定医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、1200万PV超を記録。時事メディカルなどのウェブメディアで連載。一般向け講演なども精力的に行っている。著書にシリーズ累計21万部超の「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)、「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)など多数。

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