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被災地でボランティアや支援等の活動に参加するなら必ず行うべき感染対策

山本健人消化器外科専門医
(写真:イメージマート)

能登半島を中心とした震災で、被災地での支援、復旧活動に今多くの方が尽力されています。

一方、被災地では今後、感染症に対する一層の注意が呼びかけられています

地震後の石川県庁で、厚労省の感染症対策課から参与として支援を行っていた神代和明医師(米国感染症内科専門医・米国予防医学専門医)にお話を伺いました。

神代和明医師(筆者撮影)
神代和明医師(筆者撮影)

感染症対策の観点から、現在どのようなことが懸念されていますか?

現時点で感染症の発生はまだそれほど多くありませんが、県外からボランティアの方々の参入が増え始めており、今後その数が非常に多くなると見込まれます。

またボランティア以外にも、自治体の方や業者の方など、多くの人たちが被災地入りしています。

こうした状況を受けて、国立感染症研究所や厚生労働省などの専門家が、被災地入りに際して感染症予防対策を呼びかけました

こちらからダウンロードできます)

現地でも県内外の専門家の方々が避難所を巡回し、感染症の治療や隔離の指導を行っています。

被災地に入る方が注意すべきことは何でしょうか?

何より、現地に行く前の準備が大切です。

まず、出発前にご自身の体調管理を行ってください。

咳が出る、熱があるなど体調が悪い場合は、現地での活動を延期する必要があります。

また、被災地で使うマスクや消毒用アルコールなどは、自身で持参してください。現地の資源を大切に守りましょう。

加えて、コロナやインフルエンザに加え、麻疹や風疹、破傷風などのワクチン接種歴を確認することも大切です。

ワクチンで予防可能な疾患(VPD)については、こちらのページをご参照ください。

被災地での感染対策として、どのようなことに注意すべきでしょうか?

咳エチケットや手指衛生を適切に行ってください。

また、現地ではまだ安全な水の確保や適切な排水ができない場合があります

平時なら簡単にできる「手洗い」が難しかったり、食品が汚染したりするリスクがあります。

当然ながら、被災地入りする人たちが増えた分だけ、排泄物の量も増えます。

排泄物を介して広がる感染性胃腸炎のリスクも上昇します。

被災地入りする場合は、飲食前やトイレ後の手指衛生のため、アルコール消毒薬や、アルコール綿のパッケージを持参することが推奨されます

もし現地で体調が悪くなったら、どうすればいいでしょうか?

体調が悪くなった時は、ボランティアセンター等の活動拠点の管理者に報告し、「被災者との接触を避ける」「食品を取り扱わない」など、感染症を広げてしまうリスクを回避してください。

感染症は、何より予防が大切です。

・感染症を被災地に持ち込まないこと

・自身が罹患しないよう気をつけること

を重視し、最大限の協力をお願いできればと思います。

ボランティア等で被災地入りを検討されている方は、「被災地・避難所でボランティアを計画されている皆様の感染症予防について」をぜひご参照ください。

(聞き手・執筆:山本健人、協力:石黒義孝;本情報は1月28日時点での情報に基づきます。また本インタビューは神代和明医師の個人的見解に基づきます。)

消化器外科専門医

2010年京都大学医学部卒業。医師・医学博士。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、内視鏡外科技術認定医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、1200万PV超を記録。時事メディカルなどのウェブメディアで連載。一般向け講演なども精力的に行っている。著書にシリーズ累計21万部超の「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)、「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)など多数。

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