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PayPayとLINEPayの大連結に対抗 吸収合併でメルカリが仕掛ける大勝負 個人はどうする

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
メルカリの提供するメルペイはQRコード決済で生き残れる?(写真:つのだよしお/アフロ)

利用率が高まるQRコード決済、PayPayが頭一つ抜け出したか

PayPayが20%還元と大プロモーションをぶちあげたのが、2018年12月のことですからもう1年以上が経過しました。2019年にQRコード決済を設定した人は多いと思います。

2019年10月の消費増税時には、消費者還元事業ということでキャッシュレス決済に対する5%(ないし2%)の還元が行われました。このせいもあって、QRコード決済の利用率は大きく上昇しています。

インフォキュリオングループの調べによれば、消費増税後に用いたキャッシュレス決済手段として、QRコード決済の伸びが大きいことが分かっています。増税前調査が11.6%のところ増税後は35.7%と3倍にもなっています。Suica等の既存の電子マネーの利用率はこれを上回り、かつ伸びてはいるものの、QRコード決済の伸びしろが大きいことが読み取れます。

QRコード決済といえば「○○Pay」が乱立している状態にありますが、同調査では使用した決済手段についても紹介しており、PayPayの63.8%が頭一つ抜け出しています。これに第2グループとしてLINE Payの29.6%、楽天ペイの28.8%が続いています。第3グループになるのはd払いの19.7%、メルペイ18.5%です。

プレスリリースはこちらhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000031359.html

PayPayとLINEPayについてはYahoo!とLINEというそれぞれの実施主体が経営統合を発表したため、大統一の可能性があります。重複利用のユーザーもあるため単純合計はできませんが、第1グループと第2グループの統合が実現すればQRコード決済の主役になることは間違いありません。

メルカリのメルペイ、Origami Payの合併話が明らかに

ところが、こうした流れに一石を投じる発表がありました。メルペイを実施するメルカリが、Origami Payを提供するOrigamiの全株式を取得することを発表したのです。さらに同日、信金中央金庫との業務提携を発表しています。

メルペイホームページ https://www.merpay.com/

メルペイはメルカリが提供していることから想像できると思いますが、メルカリの売上金を電子マネーとして利用できる仕組みです。電子マネーのひとつiDとして利用する仕組みとQRコード決済のメルペイとして振る舞う仕組みの2つがあり(ちょっとわかりにくいものの)、多くのキャッシュレス決済現場に対応している仕組みです。

Origami Payはあまり知名度がないものの、PayPayがブームを仕掛ける以前からQRコード決済を行ってきた古参のひとつです。還元部分を請求額から直接ディスカウントする(つまりポイントシステムをもたない)仕組みが特徴的でした。またプロモーションを積極的に仕掛けてきた先駆者でもあります。私も10%クーポンが発行されるたびに、秋葉原のとらのあなでマンガを買い込んでいた記憶があります(書店でOrigami Payに対応しているのは珍しかった)。

そんな2社がメルペイとOrigami Payの統合に踏み切る決断をしたというわけです。メルペイには資金力と知名度が、OrigamiPayには地域系金融機関との連携に実績と強みがあり、統合によるシェア拡大を模索するものと思われます。

ビジネス的なねらいについては下記の解説記事がありますので、私のほうでは個人にとって「QRコード決済はどうなるか」という観点で記事をまとめてみたいと思います。

1/24 日経ビジネス メルカリがOrigami買収、スマホ決済再編加速へ

1/28 インプレスWatch メルペイによるOrigami買収。キーワードは「時間切れ」と「加速する市場」

1/28 日経クロステック (有料記事) メルカリがOrigamiを買収へ、スマホ決済「淘汰」の始まりか

個人がたくさんの電子マネーからプロモーションをつまみ食いするのも限界がある

私は電子マネーの現実的なインストール数については「3つか4つが上限」と考えています。それぞれの電子マネーに数千円をチャージし使うとしても、日常生活の中で使い分けをするのはなかなか大変です。

ICカード系ではモバイルSuicaを軸に据え、日常生活の親和性でnanaco(近くにイトーヨーカドーがある)かWAON(近くにイオンやまいばすけっとがある)を2つ設定するのが現実的にも限界です。使い勝手でいえばモバイルSuicaが他の利用シーンのほとんどをカバーし重複するのでひとつだけ設定しても困ることはまずありません(一例として、デニーズがかつてnanaco一択であったが現在はSuicaをOKにしている)。

QRコード決済も同様です。3つ以上の設定をすることはこちらも管理が面倒で現実的ではありません。単純に初期設定を3回すること自体が面倒ですし、それぞれに残高管理をするのも面倒です。

さらに面倒なのがそれぞれのプロモーションを比較しながら使用する決済方法を選ぶことです。PayPayとLINEPay、メルペイやd払いを併用し始めると、お得さは高まるものの面倒さも増大します。

こちらも利用シーンが幅広いものに淘汰されていくことは明らかで、PayPay、LINEPay、d払いが一歩抜け出していることが利用実績にもつながっているように思います。

メルペイを今から設定するかどうかはメルカリユーザーかどうかが鍵か

私自身はメルペイとOrigami Payは両方設定しています。しかしOrigami Payは利用頻度が下がっています。PayPayとLINEPayの利用にシフトしているからです。メルペイも同様で、プロモーションを確認はしているもののあまり利用ができていません。

ときどきいろんな人に質問をしてみても「QRコード決済をひとつ設定している人」は増えましたが「PayPayとLINEPayを両方設定している人」となると一気に減ります。普通の人にとって、2つでもハードルは相当高くなります。

利用管理を考えるとスマホに設定する電子マネーやQRコード決済については「3つめの壁(あるいは4つめの壁)」とでもいうべきハードルがあるように思います。そしてその壁を突破できるかはなかなか厳しいように思います。

あなたのスマホにメルペイをインストールし利用するかどうかは、メルカリを利用するかがやはり鍵となりそうです。メルカリを利用して売上金がプールされている場合、それを買い物に利用するのが一番便利なメルペイの利用になるからです。

もちろんお得さの追求にあくなきこだわりを見せる人については、d払いもメルペイもインストールし、それぞれ数千円程度のチャージをしながらお得な決済方法をそのつど選んでいけばいいでしょう。

QRコード決済の覇者はまだ読めない ~JPQRによる大統一もあるか

さて、今回はQRコード決済の統合が個人の利用にどう影響するかを考えてみましたが、まだまだ覇者がPayPayと決まったわけではありません。

実は「QRコード決済でお願いします」といえば、○○Payを細かく指定しなくても勝手に端末側が読み取ってくれる「大統一QRコード」の可能性が残されているからです。

JPQRというのがそれで、総務省が音頭をとって岩手、長野、和歌山、福岡の4県で実証実験が行われています。小店舗の決済端末によっては「うちはPayPayしか対応していない」という問題がありますが、大手コンビニやドラッグストアなどでは多くのQRコード決済に対応する力があるため、JQPRに対応してくることがおおいに考えられます。もしかするとコンビニなどが、ゆうちょPay等の未対応だったQRコード決済をまとめて対応してくるかもしれません。

JQPR https://jpqr-start.jp/

ただ、それでもいくつものアプリに数千円ずつチャージする問題が残りますから、「自分のメイン決済手段としての電子マネー」は2ないし3くらいに絞ることになるでしょう。

「あなたのスマホのQRコード決済の一番手」を目指す戦いはまだ続きますし、私たちは今年いっぱいくらいは悩まされる日々が続くのかもしれません。

(ちなみに「面倒くさいので考えるのはもういやだ!」という人にはシンプルな解決策があります。それは「QRコード決済はまったく手をつけず、モバイルSuicaだけ設定しておく」です。高還元率は期待できませんが、利便性では一番です)

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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