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トランプ氏弾劾調査・初公聴会 拡散された“お笑いシーン”と爆弾証言 トランプ氏「1分も見なかった」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
初公聴会で証言したウィリアム・テイラー氏(右)とジョージ・ケント氏(左)。(写真:ロイター/アフロ)

 「ウクライナ疑惑」に端を発する「トランプ氏の弾劾調査」が大きな進展を見せた。米下院が13日(米国時間)、 初めての公開公聴会を開いたのだ。5時間以上の長い公聴会で、その様子はテレビでも中継された。証言したのは、ウクライナ米国臨時代理大使ウィリアム・テイラー氏と国務次官補代理(ユーラシア担当)のジョージ・ケント氏。

 特に、テイラー氏は「ウクライナ疑惑」の「スター証人」と呼ばれている。先日明らかにされた高官たちの交信内容の中で、数々の重要発言をしているからだ。

 米国の駐欧州連合(EU)大使のソンドランド氏と交わしたやりとりで、テイラー氏は、バイデン氏の調査がアメリカの軍事支援及びホワイトハウスでの首脳会談と交換条件になっていることを示す以下の“驚愕発言”をしていた。

「我々は軍事支援とホワイトハウスでの首脳会談を調査の交換条件にしているのか?」

「選挙活動のために(トランプ氏にとって、ウクライナ政府による政敵バイデン氏の汚職調査は来年の大統領選の助けになる)、軍事支援を保留にするのはクレイジーだ」

新・爆弾証言とは?

 初の公聴会で注目されたのは、このテイラー氏の新たな“爆弾証言”。

 ワシントン・ポスト(電子版)は「新たな証言で、トランプ氏がウクライナにより直接的に圧力をかけていたことがわかった」と新証言の重要性について言及している。

 その新証言とは、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談をした7月25日の翌日、つまり、7月26日の出来事に関するものだ。

 テイラー氏によると、その日、彼のスタッフの1人はソンドランド氏とキエフにあるレストランにいた。その時、ソンドランド氏は電話でトランプ氏と話したが、その際、トランプ氏がソンドランド氏に調査状況についてきいていたというのだ。テイラー氏はこう証言した。

「私のスタッフが、トランプ氏がソンドランド氏に調査状況についてたずねているのを聞いたのです。ソンドランド氏はトランプ氏に対し『ウクライナは(調査を)前に進める準備ができています』と答えました」

 さらに、この電話の後、テイラー氏のスタッフがソンドランド氏に「大統領はウクライナについてどう思っているんですか?」ときくと、ソンドランド氏はこう答えたという。

「トランプ氏はウクライナのことよりも、バイデン氏の調査を気にかけている」

トランプ氏「1分も見なかったよ」

 CNNは、この新証言について、

「トランプ氏はウクライナの人々が多数亡くなっていることやロシアからの攻撃を懸念しておらず、自分のことだけを考えている」

と国益よりも自己利益を優先させているトランプ氏の姿勢を批判した。

 そして、当のトランプ氏だが、ソンドランド氏としたこのやりとりについて知らないという。

 13日、トランプ氏はトルコのエルドアン大統領と首脳会談を行ったが、その後の記者会見で、公聴会と新証言について質問された際、

「公聴会は1分も見なかったよ。ソンドランド氏との会話については何も知らない。初めて聞いたよ。とにかく、それは2次情報だよ」

と言って、やりとりについて否定した。

 また、公聴会では、公式の外交ルート以外に、トランプ氏の個人弁護士であるジュリアーニ氏を中心とした裏の外交ルートがあり、それは国益のためではなく、トランプ氏の個人的ゴールを果たすためにあるルートではないかと指摘された。

挫かれた共和党の“刺客”

 共和党側からはたくさんの“刺客”が登場し、テイラー氏とケント氏に詰問した。共和党側は証人の信用を失墜させることに躍起になった。

 中でも、注目されたのは、オハイオ州の議員ジム・ジョーダン氏によるマシンガンのような質問責め。ツイッターでは同氏の名前がトレンディングになり、米メディアは「ジョーダン氏はトランプ防衛の顔になる」とまで書いている。

 一躍注目株となったジョーダン氏は鼻息荒く数々の反論を展開。

「証人の2人はトランプ氏と直接話したこともない。証人の話は人から聞いた2次情報だ。アメリカからの軍事支援が下りるまでの55日間の間、テイラー氏はゼレンスキー大統領と3回面会しているのに、調査と軍事支援がリンクしているという話は上がらなかったのか。ゼレンスキー大統領はトランプ氏からの圧力はなかったと言っているじゃないか」

 

 そして、強気なジョーダン氏、最後には、この発言には文句は言わせんとばかりに、自信満々気にこう言ってのけた。

「私たちの前に、アメリカの人々の前に召喚されていない証人がいる。それは、全てを始めた人物だ。内部告発者だ」

 しかし、ジョーダン氏の自信は敢えなく挫かれてしまった。民主党のピーター・ウェルチ議員が、証言台を指しながら、こう“反撃”したのだ。

「喜んで全てを始めた人物をお招きし、証言させますよ。トランプ氏がそこに座ることを歓迎します」

 ウェルチ氏の勝ち。会場からは笑いが沸き起こり、このシーン(上記の動画)はツイッターで拡散された。

 米国民の本音を代弁するかのようなウェルチ議員の皮肉は、座布団何枚分にも相当しそうだ。

 これからも、数々の証人たちが登場して続く、公聴会というショー。来週は、今回の新証言で明らかになったやりとりをトランプ氏としたソンドランド氏が証言する予定だ。民主党と共和党の間で、どんな攻防戦が繰り広げられるか注視したい。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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