物流2024年問題を解決するたった二つの冴えたやり方
物流の2024年問題
みなさんも、物流の2024年問題は知っているだろう。
だいぶ前から決まっている通り、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が規制される。改正改善基準告示により、960時間が上限規制となる。
もっと簡単にいえば、労働時間が短くなる。喜ばしいともいえるが、輸送能力が不足する。荷物が運べなくなるため、「物流の2024年問題」と言われる。
実際に、トラック業界ではドライバーが不足している。想像よりも事態は深刻だ。トラックの輸送能力は、2024年になんと14.2%も不足する可能性がある。さらに、2030年に34.1%も不足する可能性がある。
そこで、業界や行政は、「トラックドライバーが運行する際の速度上限を上げる」とか自動運転の導入だとかを議論している。大変に言いにくいが、それらの対策はあまり意味がない。
というのも、速度の上限をあげても、けっきょく配送先で待たされては意味がない。さらに、完全な自動運転はまだ先だ。
*なお説明は野暮だが、当原稿はSF小説の傑作「たったひとつの冴えたやりかた」(ジェイムズ・ティプトリー・Jr.著)のタイトルによった。
二つの解決策
ところで、当然だが、問題を解決する際には、原因を解消するしかない。ならば、「物流の2024年問題」の原因を考えてみよう。なぜトラックドライバーは忙しいのか。
それは二つに集約できる。
①早く運んでも待たされる
②配送の単価が安い
つまるところ、この二つだ。
①早く運んでも待たされる:持っていっても、指定時間までずっと道脇で待たされる。この時間は何もすることがなくて暇。
②配送の単価が安い:安価な金額で運ぶしかなく、さらに、単価を上げようともしない。
私は、現場の調達物流のコンサルタントに従業している。私は現場でのたうち回る一人の実践者にすぎない。ただ、その立場から申し上げたい。対策は上記の二つをどうにかするしかない。
もういまさら岸田文雄首相には届かないと思うが、現場目線から次を提案したい。
①「早く運んでも待たされる」の対策:企業ごとの待ち時間公開。ここで重要なのは「持っていきましたが、○○時間ほど待たされました」と断罪することではない。その企業に持っていって、何時間ほど待ったかを、あくまで純粋に集計して公開する。
物流会社は、ただただ事実として、何時間ほど待ったかを報告する。そして行政は公開する。繰り返すが、「何時間ほど待たせたらダメだ」と尺度を持つのではなく、ただただ、事実を公開する。
しかし、これは劇的(もしくは激的)に効果があるだろう。なぜならば自社の待ち時間を公開されるのだ。好ましくなく、さらに、以降の物流費のコストアップにつながるかもしれない。
自発的に、いかにトラックドライバーの待ち時間を短縮するかを考えるはずだ。たとえば、あなたの会社が「年間○○○○○時間ほどトラックドライバーを待たせた会社」と行政から公表されたとして、平気でいられるだろうか。
「そんなの、集計する時間がもったいないよ」といった意見はあるだろう。でも、その集計の時間はたいしたことがない。それよりも、公開したときのメリットのほうが大きい。
②「配送の単価が安い」の対策:決算書提示のルール化。
実は、私が現場にいてまどろっこしいのが、物流の注文側は「値上げしてもいい」と考えているにもかかわらず、実現しない。というのも、「人件費が〇〇円上昇した」と口頭では聞くのだが、その証拠をなかなか示して貰えないのだ。
逆にいえば、その証拠をしっかりと示せば、現在では物流の注文側は”優越的地位の濫用”だと指摘されるのを恐れているので無視はしない。だから、現場感覚では、あとは受注側の証拠提示なのだ。
そこで、私は決算書の提示を提案している。労務費が上昇したのであれば、決算書の損益計算書の明細書に記載する労務費相当が上昇しているはずだ(あるいは外注費相当額)。
そこを提示して議論すればいい。これをルール化する。なぜならば、労務費が明確に5%上昇しているのに、それを無視する交渉は難しい。無視すれば、ただちに独占禁止法で訴えればいい。
私はなんでも上げろと主張しているのではない。むしろ、事実をとらえろといっているにすぎない。
ただ現場観点からは上記の二つが、もっとも問題であり、そのもっとも問題である対象を解決するために必要な施策を書いた。