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NHKアナが朝ドラに触れなかった理由 令和6年夏ならではの特殊事情

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:Motoo Naka/アフロ)

夏休み中の朝ドラに触れたのは2回きり

夏休みのあいだ、NHK「おはよう日本」ではあまり朝ドラに触れなかった。

夏休みというのは、7月の20日過ぎから8月31日まで、というふうに捉えている。

そうではない地域も増えているようだが、ある程度の同意はあるだろう。

朝ドラ『虎に翼』でいえば第17週から第22週であった。

81話から110話である。

夏の6週間で朝ドラにあまり触れなかった

朝ドラ直前、『おはよう日本(関東甲信越)』で首藤奈知子アナと三條雅幸アナを中心とした4人がこの期間に朝ドラに触れたのは2回だけである。

「夏らしい出来事」がつぎつぎと起こっていたからだ。

令和6年の夏は、いろいろと特殊であった。

アナウンサーのコメントから、日記風にこの6週間を振り返ってみる。

(土日はお休み/朝ドラに触れた日が●)

鉄道の乱れから五輪開幕の7月第4週

7月22日(月)晴れ「東海道新幹線、保守車両脱線で運転見合わせ」

7月23日(火)晴れ「東京メトロ千代田線が全線で運転を見合わせ」

7月24日(水)晴れ●「イネさんが寅子のところに来てくださいました」

7月25日(木)晴れ「オリンピック、開会前ですけど」「サッカー、快勝!」

7月26日(金)晴れ「羽田空港、これから開会式へ行く人いらっしゃるでしょうか」

パリ五輪の7月最終週から8月第1週

7月29日(月)晴れ「今日は体操男子団体、スケートボード男子、フェンシング……」

7月30日(火)晴れ「体操の橋本選手、お客さんにしーっとしたの、感動」

7月31日(水)晴れ夕立「今日の見所は」「体操の男子個人総合ですかねえ」

8月1日(木)晴れ「連日、金メダルのニュースを伝えてますね」

8月2日(金)晴れ「サッカー男子の準々決勝がありますね」

パリ五輪と戦争の8月第2週

8月5日(月)晴れ「体操男子、種目別ありますね」

8月6日(火)曇り「今日8月6日は広島原爆の日です」

8月7日(水)晴れ夕立「大会13日目、陸上女子槍投げの北口榛花選手が登場」

8月8日(木)晴れ曇り「大会14日目、卓球の団体女子がありますね」

8月9日(金)晴れ「長崎に原爆が投下されて今日で79年…」

台風7号と終戦の8月第3週

8月12日(月祝)晴れ(祝日は天気予報からドラマへ直結)

8月13日(火)晴れ「台風7号の進路、気になりますね」

8月14日(水)晴れ「小笠原諸島の父島、すでに雨が降って風も強そう」

8月15日(木)曇り「終戦から今日で79年です」

8月16日(金)雨「(台風7号)こちら現在の伊豆大島の様子」

雷雨と甲子園の8月第4週

8月19日(月)晴れ雷雨「お盆明け、蒸し暑さは続きます」

8月20日(火)晴れ「昨日の夜、雷の音、すごくなかったですか」

8月21日(水)晴曇夕立●「さて『虎に翼』、今日は家族会議、ですね」

8月22日(木)雨曇り「昨日の夕方の雨、いきなりすごかったですね」

8月23日(金)晴れ「さあ、このあと甲子園の決勝、10時から」

台風10号の8月第5週

8月26日(月)晴れ「台風(10号)の動き、心配ですね」

8月27日(火)曇り雨「新潟佐渡の様子です、台風も心配ですが」

8月28日(水)晴れ「気象庁の会見もありましたけれど、とくに九州、心配」

8月29日(木)雨「はい、関東もいま雨降ってるところもありますけど…」

8月30日(金)雨「神奈川県二宮町、葛川氾濫で午前7時緊急安全確保」

五輪に触れたのは10日

月曜から金曜の5日間が6週なのでぜんぶで30日。

このうちパリ五輪の話題が10日。期間中は広島長崎の日をのぞいて、連日、話題になっていた。

ついで多かったのが台風についての話題。8日ぶん。

台風7号が3日、台風10号が5日ぶんだ。

二つとも、関東甲信越にとってかなり関心の高い台風だったことがわかる。

戦争3日、鉄道2日、朝ドラ2日、甲子園1日

残りは、広島の日、長崎の日、終戦の日の戦争関係が3日ぶん。

鉄道の運転見合わせ情報が2日。

朝ドラに触れたのが2日。

甲子園の決勝、というのが1日。

甲子園と戦争の話は、これも夏らしいところである。

この夏の穏やかな朝は3日

天気の話として、昨日の雨(雷)がすごかったという話が2回、蒸し暑い日が続くというのが1回。

このうち、雷雨、豪雨がすごかったというのは、この時期ならではの「大変な天気」の話で、世間話のように穏やかに天気の話ができたのは8月19日(月)一回きりだったということになる。なかなか大変な夏である。

朝ドラに触れられた2日と、ふつうの天気の話ができた1日、この3日だけがこの夏の穏やかな朝だったと言えるのではないか。

パリ五輪と二つの台風でせわしなかった

おもわず、なるほど、と言いたくなる。

『虎に翼』ヒロインの再婚相手・航一さん(岡田将生)の口癖だ。

4人のアナは(金曜はメンバーが少し変わるのですが)ふだん(つまり夏ではない時期は)、なんでもない天気の話、中継先の公園に触れることが多い。

夏は、なかなかそうはいかないようだ。

今年は、五輪があって、日本選手が活躍した。

そのうえ、関東に影響ある大きな台風がゆっくり2つ来た。

これでかなり落ち着かない夏になった。

まあ、テレビの向こうが落ち着いていないだけで、見てる人はふだんどおりでいいんだけどね。

まだまだ夏は続く

朝ドラに触れるのが少なかったのは、三條雅幸アナが夏期休暇に入ったので、強引に引っ張っていく人もいなかったというのもあるかもしれない。

なかなかせわしない夏だった。

でもたぶん、暑かったという記憶しか残らない気がする。

ちなみに9月になったからって、まだまだ「夏」は続くわけで、さすがにもうそれにも慣れてきたけれど、今年もそのようだ。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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