落札額169億2千万円 線状降水帯予測の”入札”
統一地方選挙で思ったこと
この数週間、街中で選挙カーや候補者の方、はたまた有名政治家の熱心な街頭演説に遭遇しました。たまたま散歩しているだけの筆者にとっては、ボーッとして歩いているだけなのが申し訳ないような気分にもなりました。
この気分が何なのかと突き詰めていくと、どうも厄介な政治ごとを全部、政治家の方に丸投げしている自分の後ろめたさもあるのかなぁ、と思いました。
政治とは究極、税金と税金の分配を決める事だと言えば身も蓋もありませんが、今回の地方選挙の選挙公報を読むと、与野党を問わず少なからぬ候補者が温暖化や環境、さらには気象災害や地震などの防災について、もっと予算配分をするように求めています。
さらに我々自身も、その予算がどのように決まっているのか、調べようと思えば調べられることも分かりました。
気象庁も行っている「入札(にゅうさつ)」という仕組み
その政治と我々の生活が分かりやすくつながっているのは、おそらく「入札」という仕組みでしょう。「入札」とは簡単に言えば公的機関が、国民の生活をより良くしていくために必要な、コト・モノ・サービスを、民間企業に発注する業務依頼のことです。
例えば、とある市役所が「老朽化した建物の改良工事をしたい」と考え、民間企業に委託する場合、入札手続きを経て業務が発注されます。このような業務は、私たち国民が支払っている税金によって賄われますから、当然その発注の透明性がきわめて重要です。そこでその工事情報が民間企業に公平に届けられるよう、詳細は、その市役所のWebサイトに公開されます。そして、民間企業は公開された情報を参考にして、業務を受注したい旨を市役所に提示します。仮に複数の企業から応募があった場合、市役所は一番優れた企業に業務を発注することになります。
ところでこうした入札情報はどれくらいあるのでしょう。世の中には色んなサービスがあるもので、入札情報速報サービスNJSS(エヌジェス)を提供している「株式会社うるる」に訊いてみました。
うるる社の調べによると、全国約8,300の公共機関から、年間180万件以上の業務が公表されており、その業務の総額はなんと20兆円を超えているといいます。20兆円というと国家予算の20%以上ですから入札市場の規模は非常に大きいといえるでしょう。
“線状降水帯予測スパコン”落札額169億2千万円
気象庁関連の入札でいうと、「線状降水帯予測スーパーコンピュータの購入・取付調整及び保守並びにハウジングサービスの提供」の落札価格が16,921,410,000 円で、2022年の最高額でした。(落札会社は富士通株式会社)
気象庁はこのスーパーコンピュータを活用し、今後の線状降水帯の予測精度の向上と情報の改善につなげるとしていますが、このスパコン投資が防災につながっていくことを願っています。
ちなみに気象予測による効果と言うのは定量的に計ることが難しい分野です。なぜなら予測の精度が上がると、そのことによって災害被害が軽減されますが、その軽減された額は実際に被害が起きたわけでは無いので、見積もることができないのです。
国連の組織であるWMO(世界気象機関)では、気象予測に投じた金額の10倍以上は効果があるとの試算を出したことがありますが正確なところはわかりません。
いずれにしろ、政治(選挙)と入札というしくみを通して税金が配分され、私たちの生活インフラや、巡り巡って防災という目的も達成されることになるわけです。
参考
令和5年2月24日気象庁報道発表「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」を稼動開始します