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韓国は「発展途上国」優遇を自主放棄するのか? 「ホワイト国」除外に次ぐダメージにただ沈黙か?

山田順作家、ジャーナリスト
どうする文在寅?トランプに泣きつくのか?(写真:ロイター/アフロ)

 いまだに、サムソンがファーウェイとの取引を続けているという“時代錯誤国家”の韓国が、「発展途上国」と知って、あらためて驚いた人も多いと思う。

 まず、これを明らかにしたトランプ大統領のツイート(7月26日)は、次のとおりである。

“The WTO is BROKEN when the world’s RICHEST countries claim to be developing countries to avoid WTO rules and get special treatment. NO more!!! Today I directed the U.S. Trade Representative to take action so that countries stop CHEATING the system at the expense of the USA!”

(WTOは壊れている。それは、世界でもリッチな国々が、WTOルールを逃れ、発展途上国(developing countries)として優遇措置を受けているからだ。こんなことは終わりだ! 今日、私はUSTR(通商代表部)にアメリカの犠牲下でこれらの国がこの制度を不正利用するのをやめさせるよう指示した)(筆者訳)

 このツイートとほぼ同時に、トランプは「大統領令」(Presidential Memorandum)に署名し、それを受けてホワイトハウスは、その内容を発表した。

 その主旨は、ざっと、次のとおり。

《WTOには、時代遅れの「先進国」「発展途上国」という区分が残っている。WTO加盟国の3分の2近くが自国を発展途上国と申告し、WTOのルールによって特別な待遇を受ける一方で、コミットメントを果たしていない。

 その国々というのは、購買力平価ベースによる1人あたりGDP上位10カ国のうちの7カ国にあたるブルネイ、香港、クウェート、マカオ、カタール、シンガポール、UAEと、G20参加国であるとともにOECD加盟国であるメキシコ、韓国、トルコ。そして、世界第2の経済大国の中国である。

 アメリカは、今後もこの問題を未解決のままにしておくことはできない。そこで、90日以内に進展がなければ、アメリカは独自に優遇処置を取りやめる》

 この大統領令のメインターゲットは、もちろん中国だが、韓国も主要なターゲットと言っていい。なぜなら、これまで中国とともにWTOルールに“ただ乗り”して、貿易黒字を稼いできたからだ。

 アメリカは常々、このことに怒っていて、今回、トランプはついに堪忍袋の尾が切れたというわけだ。

 WTOルールがもはや時代錯誤なのは、中国のような自由貿易を阻害している国を加盟させてしまったこと。また、今回の問題を招いた発展途上国の優遇措置、いわゆる「S&D」(Special and Differential treatment:特別のかつ異なる待遇)があることだ。これは、世界貿易の発展のためには必要な措置だが、発展途上国か先進国かを決めるのが「自己申告」という点がトンデモナイのである。

 そのため、中国や韓国のように、いつまでも自国を発展途上国と言い張る国が出てくる。とくに、中国は、加盟時に約束した市場の自由化や透明性を高める努力を明らかに怠ってきた。

 韓国は、昨年、台湾がもはやこれ以上発展途上国と言い続けるのは恥ずかしいと自ら優遇措置を放棄したのにもかかわらず、知らん顔を通した。

 すでに、トランプが言うようにWTOは壊れている。アメリカは何度もWTO改革を訴えたのに聞き入れられなかったため、2016年から、WTOの紛争処理機関で最高裁の判事に当たる上級委員会の委員の任命(任期は4年、再選は1回限り)を拒否してきている。

 WTOの上級委員会は、7人の定員から3人が選ばれて審理を行うことになっている。ところが、現在、アメリカの拒否が続いているため、上級委員が3人しかいない。このうち2人の任期は、今年の12月に切れる。

 となると、上級委員会は実質的に機能停止に陥る。つまり、WTOは紛争裁定ができなくなる。トランプが発展途上国優遇への不満をぶちまけなくとも、壊れるのは必至である。

 韓国はWTO加盟国だから、このような状況をわかっているはずだ。それなのに、7月24日にジュネーブで開かれたWTO一般理事会で、日本の輸出管理強化を不当だと訴えた。もはや、審理さえされないはずなのに、時間の無駄である。

 しかも、日本の措置は「徴用工問題」に対する報復だとしたのだから、その外交センス、時代錯誤ぶり、いや国家そのもののあり方を疑うしかない。

 いまや世界は、ファーウェイに象徴されるように、中国排除に向かっている。とくに、世界貿易からは、今後、中国は排除されていくだろう。脱中国のサプライチェーンが形成されようとしている。

 そんななか、韓国は、どうしようというのだろうか?

「ホワイト国」外しでは、反日を旗幟鮮明にしたが、今回の「発展途上国」外しでは、相手がアメリカだけに沈黙している。

 本来なら、台湾同様、優遇措置を自主返上すべきだろう。

 それにしても不思議なのが、日本の一部メディアだ。韓国関係記事は、決まり事でもあるかのように、記事の締めくくりに「史上最悪の日韓関係。解決の糸口は見えない」とか、「このままでは、日韓関係のさらなる悪化が懸念される」と書く。

 なぜ、解決されなければいけないのか? また、なぜ、もっと関係が悪化してはいけないのか? 

 むしろ、こんな時代錯誤で厚顔無恥な国と、これ以上付き合うとこちらも腐る。よって問題が解決されず、さらに関係が悪化したほうが、日本にとっては好都合で、国益にもかなうのではないだろうか。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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